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An Endowment  作者: アタマオカシイ
第1章 家族
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7蹴 観戦、邂逅

話の長さがまちまち・・・ちょっと考えないととはおもうのですが、きりよくやろうとするとこうなっちゃいます。ご容赦を…

母が、失踪した。

父は、その訳を知っていた。いや、感づいていた。行く当ても大体わかっていたようだった。あとになって話してくれたのだが、この時点では俺は知らなかった。その内容はまた今度話すとして…

父は何も言わずに、いつも通りだった。変わったことと言えば、家にいる時間が多くなったことだ。これもあとで聞いたのだが、どうやら父は仕事を辞めて、これまでの貯金でやりくりしていたらしい。まあ、それだけだと無理そうだったからと困っていたら、父の知り合いが起こした会社に入れたそうだが…(状況を話したら快く採用してくれたそうで、休みを結構取らせてくれたらしい)

いつものように話しかけてきた言葉は、

「父さんはいなくならないからな。」

だった。

俺は男手一つで育てられ、2年が過ぎた…


「父さん、早く早く!」

「待て待て、はぐれちゃうぞ」

この日は地元のサッカーチームの試合であった。どっぷりとサッカーにはまり込んだ(という風に父には見えているのだろうが)俺は、試合を見に行きたいとせがみまくっていた。プロ選手の技術を、しっかり目に焼き付けておきたかったのだ。別にこの選手が…ということはなかったのだが、先に調べて、ある程度の名前を知っておいた。

「あ!内田選手だ!」

ファンとして見に行くほうが、父にも変には思われないだろうと思い、どうせならばチームでもトップレベルの実力を持つ選手にしておいたほうが、じっと見る口実にもなる。やっぱり上手い人見ないとね!

「お前は内田選手が大好きだな。ほら、これ」

父が渡してきたのは、「SHIMIZU EXPERTS」と書かれたタオルだった。今日は清水にあるクラブチーム、清水エキスパーツと東京のグラン足立の試合だった。全体が見える位置しか残っていないような時間になってから予約をせがんだので、かなり遠い席だった。わざとらしくぶーたれながら、試合観戦の準備をした。父には観戦用にと双眼鏡を頼んでいた。誕生日にプレゼントとしてもらった。

「ゲームソフトじゃなくてよかったのか?」

何度聞かれたことか。

「今更ゲームソフトを買う人いないよ。ゲームはデータで買うのが当たり前だし」

今は、俺の生きていた昔と違って、店舗でゲームソフトを販売できる店は少なくなった。データを買う店ばかりだ。さらに、ゲーム機も種類が減った。レトロゲームが好きな人は、コンパクトサイズで販売されたクラシックミニとつくようなゲーム機で懐ゲーを楽しんでいる。今どきは、ウォッチデバイスやリストデバイスと呼ばれる、腕に巻くタイプの端末が、スマホの代わりとなっている。ゲームに関しては、これで充分である。やりすぎには注意しなければだが…かといって、双眼鏡をせがむとは、そうとうのハマり度合いである。俺はただのサッカーバカだからこんなものである。

「そうか、それならいいんだが…」

父はうなだれるように言った。父の少年期(俺のオッサン期だが)は、まだゲーム機全盛期と言われる頃で、据え置き型は一家に一台というレベルで普及していた。今では10世帯に聞いて、1世帯持っているかいないか…というレベルであり、ものすごい縮小っぷりである。



「あ、始るよ!」

ファストフードを持って、席に着く。お目当ては、いいプレーだ。しっかり勉強しないとな!リストデバイスのメモ帳、そして録画アプリを起動する。動画の投稿はもちろんダメで、投稿ボタンを押すその瞬間にAIによってアカウントを凍結されるのだ。だが、それだけ規制を厳しくした分か、個人で見る用の録画はOKになった。ということで、堂々と録画させてもらう。あとで家でしっかり見直すが、リアルタイムで見るのとモニター越しに見るのでは大きな違いがある。生のほうが立体感もあるし、臨場感が心地よい。

キックオフの合図とともに、ボールが蹴りだされ試合が始まる。ボールタッチの技術の高さがうかがえるパスの精度。当たり前のようにしているが、このパス一つとってもものすごく勉強になる。どの位置、どの距離、どのような回転で、どう蹴りだすといいのか。パターンによって変わる最適解。持ち前のセンスでそれをかぎ分け、得点していく。素晴らしい。うーん、やっぱりプロってすげぇ。それで金をもらえるというだけある。中でも光るのはやはり内田である。シュートの威力も成功率も高い。FWとしての攻撃力だけではなく、ボール奪取のテクニックも素晴らしい。ディフェンスもなかなかうまい。勘が働くタイプらしく、感覚でボールコントロールしているらしい。完全に理論でやろうとしている俺とは正反対であるが、考えずに最適解を求められ、それに応じた行動を起こせるというのはかなりの強みだ。

「いけー!内田選手ー!がんばれがんばれうっちっだー!」

ファンとして応援も忘れない。ゴールの瞬間もものすごくはしゃいでみせる。

内田は前半で1ゴール1アシストの活躍だった。パスカットも2回している。すごい。


前半が終わってのハーフタイム、俺はここで、今後のサッカー人生に関わる人物に出会うことになる…

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