表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
An Endowment  作者: アタマオカシイ
第1章 家族
7/107

5蹴 才能開花?

ちょっと目を離したらいなくなっていた…子どもが誘拐にあったとき、事故にあったとき親たちの証言率第一位のセリフだ(尊調べ)。俺もそれができるのだ。やるなって?そういうわけにはいかない。だって、視界から消えるということは、サッカーに応用できるということだ!

相手の視界を誘導し、その逆方向に動く。エラシコとかはそういうものなのだろうか?エラシコというのは、サッカーのテクニックの一つだ。スーパースターと呼ばれる選手達のそれは、もはや芸術である。

それはともかく、俺が昔テレビで見たことがあって、今も現役の選手は彼くらいである。他の選手たちはまたいるにはいるが、知らない選手ばかりだ。前はあまり気にしなかったが、選手たちの名前やプレイを見るのも勉強になるだろうからと、親にねだって選手名鑑を買ってもらった。今一番輝いているサッカープレイヤーは、アンドリュー・イーガウスという名前だ。クライフターンを得意とし、相手にシュートコースを読ませない巧みなテクニックで、世界中のファンを虜にしている。このターンもものにしてやる、なんて思っていたりする。


体力づくりのために、結構外に連れ出してもらっている。初めて買ってもらったサッカーボールも、今はもうボロボロになって、今にも割れそうである。そんなボロを持って、いつも家の近くの公園に行き、ボール遊びをする。まだリフティングはできない。いや、出来たとしてもやれないだろうが、できないのだ。嘘じゃない。それはともかく、走るのは同年代の子どもと比べたらかなり早い。遊びでもなんでも、勝負事は1番だ。これはすごい才能????



薫は訝しんだ。前々から不思議なことはあったが、こんなことはなかった。

確かに、男の子はあちこち走り回ったりするし、小さい子どもから目を離したら、いつの間にかどこかに行ってしまうことはよくあるので、そんなへまはしなかった。でも、尊は瞬きをするその瞬間に、どこかに行ってしまうのだ。明らかにおかしい。薫は病院で聞いたことを思い出した…


「脳波がおかしい?」

それだけでも不思議なことである。でも、医師は確かにそういった。

「ええ、普通乳児の脳波の波形は、もっと平坦なんです。それが、彼の場合は幼児と同じような波形なんですよ。脳が以上発達しているとでも言いましょうか。」

医師は尊の脳を”おかしい”と言ったのだ。まさかそんなはずはないでしょう、と聞き流していた。


実際に尊と暮らしてみるとどうだ。寝返りもうてないはずなのにベッドでの位置が変わっている。歩けないのに気が付くとかなり遠くに行っている。ハイハイの速度でないのは明らかだ。裕斗に相談しても

「考えすぎだ」

と一言で切り捨てられた。医師に言われた時の私と同じである。まさかそんなはずはない、だが、そうでなくてはおかしいことばかり起こっている。私の精神状態は普通じゃないことはわかる。だが、そうなるのはこの子の影響だ。このままでは、この子に手も出しかねない。もやもやしたまま生きていくのも難しい。薫は頭を抱えた。



母のほうを見ると、難しい顔をしている。悩んでいるのだろうか。葛藤しているのだろう。何があるのかは知らないが、これこそあれだ。目を見て笑うのだ。タクジジョ?ナンノコッチャ?

ということで、母の元へ駆けて行って、ニコリと笑いかけた。すると彼女は俺を抱きしめて…泣いた。

「ごめんね…ごめんね…」

翌日、母は失踪した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ