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An Endowment  作者: アタマオカシイ
第6章 清水エキスパーツユース
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49/107

45蹴 納得

えーっと…これはなんぞ?

「藤くん、一言お願いします!」

「怪我の状態はどうですか?」

「復帰はできるのでしょうか?」

「プロには入られるのでしょうか」

退院の日だった。


病院の前に、記者団。中学の時は監督が抑えたようだけど…今はそんなのないからか。

「今は戻すことを最優先します。できるだけ早く。プロ入りは、スカウトしてくださるチームもありますので、その期待に応えたいと思います。では、これで」

まだワイワイやっているが、そのうちいなくなるだろう…と思っていたら、家の方にも取材陣。そして、同じような質問が山ほど…

「怪我をした原因となった、あのファウルをどうとらえていますか?チームとしての妨害ですか?」

ぴくり。その質問はいかんだろう。

「失礼ですが、その質問はいかがでしょうか。尊はその怪我が原因で、大会でのプレイが続けられなくなったんですから。もう少し配慮してやってください」

父がそう答えた。ありがたかった。質問した記者は、押し黙った。


「お前がいると、いつも賑やかだな」

家に入ってすぐに、父が言った。

「あれだけ注目される選手になって、父さん嬉しいよ」

父は照れもせずにそう言う。聞いているこっちが恥ずかしくなってくる。

「うん。さっきはありがとう」

「ああ、あの記者な。失礼な奴だ。デリカシーってもんがない。あんなだからテレビが廃れるんだ。相手はサッカー仲間だったんだし、故意かどうかはわからんが、お前はそれで落ち込んでた。それなのにあれはなぁ」

父のことを見直した。いや、見直すほど低い評価というわけではなかったが、改めて、この人はすごいな、と思った。


入院中は、いろいろな人が見舞いに来てくれた。プロ選手達、お世話になった監督、コーチたち。幼馴染にクラスメイト、ドイツからの友人たち。そして、俺の知らない人(本人は親衛隊長を自称していたが…)は部屋に入ってくるなり、警備員に連れられて行った。

「藤尊万歳!」

って叫んでた。怖い。


スカウトの人も来た。全国のJリーグのスカウトが来たのだとしたらうれしいのだが、そういうわけではなかった。まあ、それ以外に国外からもわざわざ来たから、もっとすごいのだが…。


そして俺は、スカウトに応じた…のではなく、ユースから繰上りで、清水エキスパーツに入団することになった。昇段の試験に合格したからね。


「えー、今回清水エキスパーツに入団する、藤尊です。僕は一度ドイツに行った以外は、ずっと静岡で暮らしてきました。そして、ユースに入りました。実際にプロになれるわずかな人間の中に入れて、本当にうれしいです。なにより、仲間として小学生の頃から競ってきた、土本君と一緒の入団ということで、喜びもひとしおです。頑張りますので、応援よろしくお願いします」

入団会見はすぐに終わった。というか、あっという間に、というほうが正しいだろう。あれよあれよと会見は進み、実際1時間ほどの会見は、5分しか過ぎていないように感じた。


これによって、俺は正式にプロサッカー選手になったのである。


ただ、当初の「才能がなくても」という部分について、本当に才能はなかったのかという疑問は残る。例えば、五体満足に生まれてきていなければ、あるいは目が見えなければ、小児麻痺になっていたら、激しいアレルギーがあったら…俺はここに来ていなかっただろう。それどころか、その前に死んでしまっていたかもしれない。最初の時点で、恵まれていたのだ。これが、才能の正体か。ということは、才能=環境じゃないか。いや…違う。環境だけじゃない。支えてくれた人もいたし、確かに周りの状況はあった。だが、うぬぼれではないが、支援者ができたのは俺が努力したからだ。何もせずに、才能があったと持ち上げられるのは、さすがに腹が立って堪えられない。何もしないで諦めて、「才能が俺にはなかったんだ、だから俺にはできないんだ」と、あるいは「あいつには才能があったから」それ以上の努力を放棄する。もしかしたら、できたかもしれないのに、速いうちから諦める。我慢ならない。才能は、天から与えられた環境と、一つの物事への集中力によって出来上がった、偶発性によって成立するものでありながら、本人の意識次第で消えてしまうものだ。



尊は後にある雑誌のインタビューでこう語っている。

「才能ってね、与えられるものだけではできないんです。成り立たない。僕がここまでこれたのは、確かに支えてくれる親がいて、チームメイトがいて、ファンがいる。他にもスポンサーとか、もっと大きく言えば、スタジアムの設計をした人や、それを建てた人、他にもサッカーボールを作って出荷した人、サッカーボールを考えた人、ゴールを設計した人、ゴールを作る会社の人…それらがいるからサッカーができています。ただ、才能じゃない。その一言で片づけてはいけない。夢に向かって努力すれば必ず叶う、なんてことは言いません。でも、だからと言って努力をしなければ、絶対に、天変地異が起こったとしても…その人は強くならない、上達しない。僕が成功者だから言えるんだ、なんていう方もいるでしょう。でも、成功したのは、ここまで走り続けたからです。だから…僕は言いたい。夢を諦めるのは、いつになっても速いんだと。やりたいことがあるなら、最後まで喰らいつけ。もちろん、お金がないと出来ない、なんて人もいるでしょう。それではやっていけないと、断念する人もいるでしょう。スターになる人、トッププレイヤーになる人は、そこで諦める選択をしなかった人だけです。」

藤尊は夢を追う子供たちを支援する団体を設立し、彼らの支援をするとともに、自らの技術を追求する「研究者」として、生涯をサッカーにささげた。

ひとまず。結論は出しました。

ただ、ここで終わるのは中途半端なので、まだ続けまーす

え、死んだって?ちゃんと書いていない過去の部分を掘り下げますから、ご心配なく。

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