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An Endowment  作者: アタマオカシイ
第1章 家族
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最後のまとめです。

書き始めるまではかけると思って書くんだけど、書いていくとなんか思った通りになりませんね。


全力で書きました。良ければ...

恐ろしかった。





そう、恐ろしかったのだ。

母親としてあってはならない。

しかし、不気味だったのだ。


産声を聞いたあの日。暫くして、違和感があった。

なにかこの子は違う、そんな気がした。

誰にも言えなかった。

「ウチの子は違うのよ」

そう語るママ友の気持ちは分からなかった。

でも、家の子は本当に違った。


友達の家に遊びに行った日、その子の妹がベビーベッドで寝ていた。生まれたばかりで大変な時期だ。


可愛い寝顔をニコニコしながら眺めていると、突然つんざくような声が響く。

友達のお母さんがが慌てて入ってきて、

「おーよしよし、お腹すいたのかな?ちょっと待ってねー」

と語りかける。私たちは

「ごめんね、しばらく外で遊んできて貰えるかしら。」

と言われ、それじゃあゴム跳びでもしましょうかとゴムを持って外に出た。


赤ちゃんはそんな存在だった。

でも。


泣かない。

すごくよく寝る。

見ていない時に動くように感じる。


家の子は何かが違う。

おもちゃを持って笑いかけても、

笑い返してくるものの。

ハリボテに見えてくる。


言えない。

お腹を痛めて産んだ我が子が恐ろしい。

人として、母として私は。

ありえないことを思ってしまった。

このままではいけないと、愛そうとした。

一緒にいるようにした。

手遊びもした。ハイハイさせた。

でも。



限界は直ぐに来た。

夫は私を見かねて、実家に帰るように言った。

私の様子を分かったのか、分かっていないけれど尋常ではない負の気配を感じ取ったのか、なぜかは分からない。

私は家を出た。実家に帰り、仕事を探した。

忘れようとした。全てを消し去りたかった。



そして、現在。私は自分一人で暮らしている。罪から逃げてはいけないと思った。でも、今更どうしようもなかった。


恐ろしがった息子は、プロのサッカー選手になっていた。

テレビで見かけた時、私は目を背けそうになった。

「ケガもなくここまで来れました。丈夫に産んでくれた両親に感謝を伝えたいです!」

ヒーローインタビューで息子はこう答えた。

私は泣き崩れた。


その日から、試合を見に行くようになった。女ひとりで暮らすには十分なお金があった。夫の仕送りもあったし、働いて貯めた分もまだまだあった。私は仕事を辞めてサポーターのひとりになった。でも、見つかってはいけない。今更合わせる顔がなかった。


ある時、チームの選手と直接電話できる権利が当たった。相手選手は日替わりで、誰が出るかは知らされていなかった。息子のチームメイトと話してみたい、そう思った。今思えば、なぜそんな気持ちになったのか分からない。母を辞め、子を捨て、そんな女が何を聞こうと言うのだろう。でも、その時は話してみたかった。聞いてみたかった。


電話は時間通りに来た。

「もしもし?」

今日はどの選手が電話番なのかと思いながら、受話器を取る。

「こんにちは、コウさんのお電話はこちらで宜しいでしょうか?」

「はい、そうです。」

この電話は、ファンクラブ会員限定の特典で、選手はファンクラブに登録している名前で呼んでくれる。本名を登録すれば、その名前で呼んでもらえるので、本当の名前を入れている人も多い...らしい。

「そうですか、よかった。初めまして、藤尊です。」

絶句した。よりによってこの日にと後悔した。

「は、はい、こんにちは...」

はからずともぎこちない返事になってしまう。まさか当人が...

「いつも応援ありがとうございます。それで...」

「あ、は、はい」

「こういう電話、あんまりしたことなくって...何を言ったらいいか分からないんですけど...なにかチームについて聞きたいことありますか?」

「あ、え、えーっと...今年の意気込みを...」

トンチンカンな受け答えになる。落ち着け。

「今年の意気込みですか?そうですね...とにかく一戦一戦大事にして、優勝を目指したいなと。」

「あ、ありがとうございます」

「いやー、実際話してみると緊張しますね。何言っていいのか全然わかんなくなっちゃいます。」

「そうですね、緊張しちゃいますね」

「他になにか聞きたいこととか、こんなことして欲しいみたいなのありますか?何でも答えますよ!」


そう言われて、つい聞いてしまった。

「えっと....ご両親は...?」

「両親ですか?そうですね、物心着いた頃にはシングルファーザーで母親は居なかったんですけど」

後ろから刺されるような、そんな衝撃が体を走った。倒れ込みそうになるがこらえる。お前のしたことはそういうことだ、逃げるなと言い聞かせ、何とか体を鼓舞する。

「父親は母親の話を断固としてしませんでしたね。僕が聞かなかったのもありますが...」

生唾を飲み込む。改めて突きつけられると、思った以上に辛い。

「大人になって、聞いてみたんです。お母さんは元気にしてるの?って」

息子から出た一言は意外なものだった。

「父は一瞬驚いた顔をしましたが、笑顔で『元気だよ』って。それ以上は聞きませんでした」

なんで、その一言を飲み込む。私に聞く権利はない。

でも、息子は続けた。

「元気ならいいやって。もちろん、母がいなかったことが寂しく思うこともありましたけど、苦にはならなかった。父親が無理して母親をしていたけれど、その姿には多分母の姿があって、その投影としての父の振る舞いだと思って...。だから、母親がいた、そして今も元気にしてる。それだけで十分です」


いなくても平気だった、そう言われると思った。

むしろ、恨まれていると思っていた。

なぜ僕を捨てたの、と。なんでと。


私はこんな子を恐ろしがったのかと後悔した。

違っていたかもしれない。でも、それが我が子だったのだ。

親バカとは違う、恐ろしい。

そんなことを思って逃げた自分が恥ずかしく思った。

「父には感謝しかありません。母にも感謝してます。ここまで来れたのは育ててくれた父と、健康に過ごせるこの体をくれた両親のおかげだなって。だから、感謝しか無いですね。」



受話器を置いて少し経つと、涙が溢れた。

ごめんね。ありがとう。このふたつで心の中はいっぱいになった。

もう彼の前には出られない。でも、繋がっている。そう感じた。

これにて本編は完全に終了となります。

誤字、脱字報告またまたよろしくお願いします。

フォントサイズやらなんやらまで弄れませんが(書いてる側としては見えないもんで...すみません。余裕があればやろうと思います)そのへんも報告ください。

感想、レビューお待ちしてます。

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