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An Endowment  作者: アタマオカシイ
第2章 発芽
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17蹴 帝国の支配者

尊だよ!立ち直ったよ!これからまた頑張るよ!応援よろしく!


今日は、谷口さんに連れられて、ドイツリーグ、ブンデスリーガの試合観戦である。うーん、肌で感じるこの熱気、すごく…イイ!

俺はまだ7歳、だけどもうファンがいるので、お忍びで…と思っていたら、クラブオーナーが見ているような席に案内された。いやいや、浮きすぎ。絶対バレるじゃん。

「ごめんね、もっと近い席でもよかったんだけど、君は人気者だからね」

すまなさそうに谷口さんが言った。それはいいとしても、かなり見られてるな…サッカーを見ろサッカーを!と言いたいところだが、まだキックオフではない。うーん、そりゃ見るとこないわなぁ…俺以外見るとこないってのも、考えどころだと思うが

「レディース!アンヅ!ジェントルメェン!本日はようこそお越しくださいました!今宵の試合は、いつもと違います!日本からはるばる、ドイツリーグに入るためにやってきた、その少年の名は…タケルゥーーーフージィィ!」

ちょっ!おいおい聞いてないよ谷口さん!!!と慌てる俺の姿がスクリーンにどアップで映し出される。いやいやいやいや、こんなこと過去一度もしてないだろうよ!なんで今日に限ってやるんだよ!見どころある選手、もっといるだろ!

谷口選手を見やると、テヘペロと言うような顔をしていた。くっ、やられた!

「タケル、会場のみんなに一言どうぞ!」

待て待て待て待て、アドリブでそこまでしろって?無茶苦茶じゃないか!誰だよこんなに安っぽい脚本書いたの!!!よく知ってる人に怒られるよ!こんなことできるわけない、設定からして無茶苦茶だって!今ならまだ直せるよ!早く書き直せ!と念じたところで無駄である。無情にも、時が過ぎる。何か言わなければならない空気…

「えー、皆さん」

一言言うだけで歓声が上がる。そんな大したこと言ってないぞ。

「応援してくれたファンの皆様、ありがとうございました。おかげさまで、こうして出てこれるようになりました。これからも応援、よろしくお願いします!」

ワァッ!!!ピュウゥッピュウゥッ

拍手喝采、歓声、悲鳴。うーん、いくらプロになれ!と言われても、ここまでさせるか。谷口選手、おそるべし。

と、いうことで試合が始まった。FCミュンヘンの試合ではないが、だからと言って選手レベルが格下と言うわけでもない。素晴らしい試合を、招待選手…じゃなくて招待育成選手(?)としてただで観戦できるのは、うれしいことである。


今思うと、これがあったから、客席から俺のほうを見ていたのかもな…気づけなかった俺がバカだったのかも・・・


見どころは、00シャルケの守護神、ラインハルト・シュナイダーのゴールキープである。まさに鉄壁と言える守りに、精密なパス。チームの司令塔としての手腕も素晴らしい。シャルケの支配者、と言われる彼の指令は、まるでクモの糸のように相手チームを縛る。選手の誘導が上手いのだ。個人技術だけでなく、全体としてもすばらしい。とても勉強になる。

「彼は今シーズン始まってから絶好調でね。いまのところPKを除くと無失点なんだよ」

谷口選手が教えてくれた。確かに、動きがとてもいい。トップ選手はさすがだね。

「それはともかく、谷口さん!あんなことさせるなら先に言ってくださいよ!」

「ははは、ごめんごめん、でも君のことだ。言ったとて上手くかわして、結局誰かに押し付けそうだからね」

俺はこの人が恐ろしい。君のことだとかいうが、そこまで話した記憶はないぞ。

「僕は洞察力がいいと知られるから、何も考えないほうがいいよ?話したことないのにって顔してるけど、そのくらいは朝飯前だ。」

ナ、ナンダッテー!棒読み?違うな。驚きのあまり声が上手く出ないのだ。道理で彼のパスカット率はとてつもなく高いわけだ。

「さすが谷口さん!すごいです!マジリスペクトです!」

「あくまで道化を演じるか…まあいいや。どうやら、図星だったみたいだし」

谷口さんにはかなわないな、そう素直に思った。


いやぁ、試合見終わって結論だけども。ラインハルトさん、鉄壁にもほどがありません!?角度的にあれに反応する!?というようなシュートコースも、見事にセービングして見せた。何がすごいって、相手のシュートコースの誘導も行っていることだ。すべてではないにせよ、大半のシュートが彼の正面に、最悪彼の手の届く範囲に打たれている。DFの守備は、ボール奪取ではなくシュートコースの限定を目的とした守備だった。こういうサッカーもあるのか。まだ見ぬサッカーの可能性に、俺は心を躍らせるのであった。

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