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An Endowment  作者: アタマオカシイ
第2章 発芽
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16蹴 夜明け

友達は、俺を外に連れ出そうとしてくれた。教師達は、俺を慰めてくれた。記者たちは、俺を記事にして、ファンたちは募金活動までしだした(これは後で知った)。


俺は引きこもっている。アーデルハイトの死から、いまだに立ち直れていない。こんなことをしていたら、彼女に

「タケル!なにやってんのよ!学校に来なさいよ!」

と怒られそうだ。だが、彼女はもういない…なにかして、彼女のことを忘れられたら、気は楽なのだろうが、彼女のことを忘れることはできない。忘れたくない。


「タケル、入るぞ」

父が部屋に入ってきた。

「…」

俯く俺。

「いつまで甘えているんだ?お前はプロになりたいんだろ!」

意外な叱責に、目を見開く。

「ガールフレンドが死んだ?確かに忘れられない最悪の記憶かもしれない。だが、お前の中の彼女は言っているだろ!タケルらしくない!めげるな!立ち上がれ!と」


「お前のことだ、夢中になったら一直線だ。どうせ、パソコンも開いていないのだろう。ほら、見てみろ」

顔を上げると、父が持つポータブルデバイスの画面があった。そこには…

「尊くん、頑張れ!」

「未来の日本代表として、ドイツに名を残しますように」

「君の恋人は誰も忘れない。君の心にもいるだろう。彼女は君の活躍を待っている」

多くの励ましの言葉が書かれていた。先生方も、校長も、クラスメイトも、それだけではない。ドイツ中、日本中の人から、応援メッセージが届いていたのだ。

日本では、内田選手と安達選手が俺を励ますメッセージ募集を提案したそうだ。

ドイツでは、新聞社が発起人となって、メールが送られていた。

一つ一つに目を通す。

「俺は…こんなにたくさんの人に支えられているのか…」

最後に目についたのが、谷口選手のメッセージ。

「君のガールフレンドのことは、お父さんから聞いたよ。君は将来、世界サッカー界をリードする大選手になるだろう。いや、そうなることが、そのガールフレンドへの、手向けになると思う。だから、これからも努力家な君の姿を、君の1ファンとして観察させてほしい。復帰、待ってるよ」

と書かれていた。気持ちがあふれ出した。


齢6歳なのに、俺のサッカー選手としての大成を疑わない人がいる。俺の技術を信じている人がいる。まだプロでもないのに、支えてくれるサポーターがいる。彼らのために、俺はプロにならなければならない。

決意した。もう、二度と泣かない。サッカー選手として成功するまで。もう、二度とファンを悲しませない。もう、二度と練習をサボらない。俺は固く決意した。


彼女(アーデルハイト)の微笑んだ顔が、空のかなたに見えた気がした。

今回は短いよ!

エピローグじゃないけど、章末だからね!

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