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An Endowment  作者: アタマオカシイ
第2章 発芽
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13蹴 アーデルハイト

一応、クラブのほとんどのやつらに認めてもらった。

未だに認めないと言い張るは、アーデルハイトのみである。毎日のように(クラブに行く日のみなので毎日ではないのだが)勝負を挑んできては、泣きながら逃げる。もう、疲れたよパ〇ラッシュ…

そんなある日、ヨナタンが俺のところにやってきた。

「あの、その、なんだ。ええと、悪かったよ」

それだけ言って、逃げるように走り去っていった。彼は口下手なようだ。うーむ、ほんとかぁ?あんなに流暢にやられ役の言葉を放っていたぞ?まあ、だがそれを言うためだけに俺のところに来たようだし、言いにくそうにしていたから彼も反省したのだろう。許そう。


今日はクラブが休みなので、街をぶらぶらしていた。語学力向上のために、いろいろな人と話しながら。

「おお、タケ!元気かい?」

「オバサンのほうが元気そうだよ」

「おばさんとは失礼だね!でも、ありがとね!今日は何しに来たんだい?」

「うーん、観光、かな?」

町の人たちの世間話を聞いているのも悪くないが、やっぱり自分で話すほうが勉強になるので、あちこち歩き回っていた。

「それなら、カールス広場には行ってみたかい?周りに観光地も多いし、それが目的なら行ってみたらいいんじゃないかい」

「ありがとう!行ってみることにするよ」


なるほど、博物館があったり、教会があったり…ミュンヘンの歴史にも触れられるかもな。

近道を見つけて、そこを行ってみると…

「キャァッ!離して!」

おっと、嫌な予感…見ちゃダメだ…関わっちゃダメだ…

「アッ…」

「おっと、お前、こいつの知り合いか?」

ハァ…巻き込まれるのは確定か…

目をそらしたのには理由がある。アーデルハイトがゴロツキに絡まれていた。いやいや、古典的過ぎないか…こんなのに捕まるのもそうだし。

諦めて、彼女に小声で言った。合図したら逃げるぞ、と。

「ハァ?バカなの?逃げられるわけないじゃない!」

ぶち壊された。仕方ない。落ちていた空き缶があってよかった。幸いにも、彼女をひっつかんでいるのは一人だ。そいつの頭に空き缶を蹴りこんだ。

「逃げるぞ!」

俺は彼女と逃げた。


「「ハァ、ハァ」」

息も切れ切れ、アーデルハイトに尋ねた。

「なんでハァあんなのにハァ捕まってたんだ?ハァ」

「知らないわよハァナンパされたと思ったらハァ裏路地に連れ込まれて…ハァ 可愛すぎるのも困りものね」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろうよ。なんであんなとこにいるんだよ。平和ボケした観光客さえ寄り付かないとこにくんなよ」

と言うと、彼女は答えた。

「別に、好き好んで来てるわけじゃないわよ…」

どうやら彼女の家はこの近くらしい。聞けば、彼女の父はDVを振るうらしく、家に正面から入ろうもんなら殴られるそうだ。母も父の言いなりで、母に見つかったら父に密告されるとか…そんな状況なのに、なぜ家に帰るのか、とは聞きがたかった。妹が一人いるらしい。おそらく、帰らなければ妹が…と脅されているのだろう。


どうやら、ヨナタンはそんな彼女の希望だったようだ。ヨナタンは彼女の両親を説得し、妹も救ってくれたという。俺に負けたことで彼は家に来なくなり、彼女の生活は地獄へと戻ってしまったのだ。

「八つ当たりだとわかってる。むちゃくちゃだって知ってる。でも、あなたがこなけりゃヨナタンは!」

俺に責任があるように言われるのは癪だが、確かに俺がヨナタンに圧勝しなければ彼女が地獄に突き落とされることは無かっただろう。責任は取らねばならない。

「こういう話は大人に頼むのが一番!」

その責任を押し付けることにした。いや、子どもがやってもね!無茶だよね!アーデルハイトを連れていき、話をしたうえで親に聞いてみた。

「任せなさい。アーデルハイト、今はうちにいなさい。」

裕斗は彼女の親のところに行った。


話をつけることは、難しいと思えた。だが、裕斗の人脈を侮っていたようだ。さすがである。日本の児相で働いている友人がいるとか、知り合いに敏腕弁護士がいるとか…彼女の両親が逮捕されるまで、数えるほどしかかかっていないのではないか…親が悪いとはいえ、彼女も不憫である。逮捕され、少なくとも容疑の段階ではなく実行していることがわかっているので、親が犯罪者という十字架を背負うことになる…

彼女の未来はあまり明るくなさそうだった。


無言の彼女に対して、

「終わったよ、悪夢は」

なんてカッコつけていったら、彼女は俺に抱き着いて泣き出した。彼女は3時間俺に抱き着いていた。3時間である。役得?バカ言っちゃいけない。高校生に抱きしめられたら、いくら相手が女でも、絞殺されるかと思うぜ。まあ、1時間もしたら泣き疲れたのか、寝ちまった。重い。いや、別に俺は女を敵に回す気はない。彼女も女子として、体重が多いというわけではないだろう。ないだろうが、こっちは小学生だ。そりゃ重いわな。自分の体重を持ち上げられても、それ以上はさすがにつらい。父が帰ってきたと思ったら、

「おおっと、早くもガールフレンドか?うらやましいねぇ」

開口一番それかよ…

「あの、重たいから早くどけて…」

「女の子にそんなこと言うなよ。もっと抱き合っててもいいんだぜ?」

こんの親父ぃ…

「そういうのいいから、早く…俺より布団のほうが眠れるでしょ…」

さすがに早くどけてくれないと、圧死する…


彼女に巻き込まれるのは、まだまだ続きそうだ。

2000字前後を目指して書くようにします…

たまに長い回あってもいいよね?いいよね??

フラグとかたてていきたいのですが、絶対忘れるやーつなので、結構ストーリーは単純になりそうです。

これまでに書いた単純な伏線も見逃しちゃいそう…忘れてたらすみません。

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