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An Endowment  作者: アタマオカシイ
第2章 発芽
13/107

12蹴 クラブ入り

スポーツクラブに来ても、結構バカにされた。

いや、認めてくれているチームメイトもいた。

同じ高校のアダム、ゲッツに、ディートリヒ、ドミニクにフランク。

あとはエーベルハルト、ファルコ、フェリックス・・・


突っかかってくるならわかる。

「弱小国からやられにでてきたのか?」

とか言ってくるやつばかりだ。そいつらは気にしない。一番気になるのは、直接会ったことのないのに、めちゃくちゃ反発してくる、アーデルハイトである。

向こうはこっちを知っている様子だ。だが、会ったことはないはずなのだ。アダムに聞いてみると

「ああ、アーデルハイトか。このクラブで一番サッカーが上手いんだよね。おまけに日本通で、カラテやってるらしい。ニホンから来た師範に師事して、クロオビもらったんだって。ヨナタンのガールフレンドでね。ヨナタンの敵討ち!とか考えてるんじゃない?」

迷惑な話である。向こうから吹っ掛けてきたというのに、なぜ仇をうたれなければならないのか。フェリックスよりも上手いのか。その上空手で黒帯とか。勝てる気がしないぞ。

尋ねてみようとしても、声をかけられる雰囲気ではない。と思っていたその時、彼女のほうからツカツカと歩み寄って、いや駆け寄ってきた。

「どうせヨナタンに勝ったって言ったって、卑怯な手を使ったんでしょ?私が彼に代わってあなたを倒してやるわ!」

いやいや、それされたらヨナタン立つ瀬がないだろうよ。

仮に君が勝っても、女に負けたやつに俺が負けた…なんて落ち込むだろうし、負けたとしたら俺のために…と思うだろうし。

「まってよ、ぼく、しょうがくせいだよ?」

必殺のクリクリおめめも

「あんたは高校生。対等なの」

一蹴。待ってくれよぉ、これ以上面倒ごとに巻き込まないでよぉ。誰だ、未来は明るそうなんて思ったやつ…俺か。

「と、いうことで、あたしと勝負しなさい!」


いやな、このクラブ最強と言うから、本気を出したんだ。だけどさ…まさかこうなるとは…

「イグッウワァアン!ヨナタンがぁエグッあんたなんかにぃヒグッ負けるわけないんだからぁウワァァァァン!」

うーん、これ、俺が悪いのか?うーん、プレイングにも違和感があったし…なんというか、すごく…近かった。


彼女がチーム最強というのは本当かどうか、アダムに聞き直した。

「え、うん、僕はそう聞いてるよ。ゲッツにも勝ったって。」

「ちなみにゲッツとの対戦は見てたのかい?」

「見てないよ。どっかいっちゃって、ゲッツが『負けた』と言って帰って来ただけ。でも、彼が負けを認めたならば負けたんだろうし…」

とのことだった。ゲッツにも訊ねた。

「あぁ、うん…言ってもいいものか…いや、実際に手合わせした君のことだ、僕の実力と比べてどうかもわかってるだろう。言い訳になるから話したくなかったのでもあるが、実は…」

ゲッツはすべて話してくれた。どうやら、彼女のプレイングは女の武器を最大限に利用したもののようだ。例えばそのツインテールで視界を奪ったり、あるいは谷間に注目させてボールを奪ったり…テクニックの上それらまで使いこなすので、かなりてこずったそうだ。時間制限のうちになんとかしてボールを奪ったと思ったら、泣き出す始末。10秒と短い制限だったので、奪えるかどうかかなり厳しいところだったらしいが…そこでゲッツが折れて、負けたといったそうだ。

うーん、確かに俺は男だけど、小学生にそれをしようとするとは。確かに結構きょろきょろしていて、髪が当たりそうだったが、こちとら身長はない、頭の上をすり抜けるばかり。谷間を見せようにも、上半身を大きく沈める形になるので、そんなことしていたら一気に抜かれてしまう。なるほど、負け惜しみもあるが、これまで使っていた彼女の技術が通用しなかったわけだ。そりゃ泣きたくもなるだろう。

彼女はグラウンドから走り出し、どこかへ行ってしまった。

「今のはハイジだな。まあ、いつものとこだろう。ほっといたって帰ってくるさ、気にすんな。」

あのぉ、いまさら出てこないでくれよ。この感じだと、クラブのコーチか何かかな?

「コーチのアルヌルフだ!タケルの歓迎会をしようかと思っていたのだが、いらなかったようだな。技術も見せてもらった。合格だ。テストはなし!」

見ていたなら彼女を止めてくれよ!俺が悪者じゃないか!

「ハイジのことは気にすんな!いつものことだ。つっかかっては勝負を挑む。いつもと違うのは、お前さんが負けたといわなかったことさな」

いやいや、いつものことじゃないじゃないか。変わってるよ状況が。

「あの方向に走っていったとすれば、家に帰ったんだろう。なぁに、心配することないさ」

と言ったコーチに電話がかかってくる。内容は、アーデルハイトが家に帰って来たというものだった。

ホントにいつものことかよ…俺はこれからも彼女に振り回される。そんな予感がした。

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