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An Endowment  作者: アタマオカシイ
第10章 ユーティリティプレイヤー
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恩師

さらっと見直して、完全に頭から消えていたエピソードというか・・・思わせぶりで何も書かなかった部分を発見してしまったので補足的に書いていきます。(98蹴の続です)

こんなのが見つかったらまた増えちゃうかもw

「どうしたんですか、こんな時間に」

「いや、時差を考えると…あ!計算間違えちまった。すまんすまん、そっちは今何時だって?」

「朝の4時です」

ただ足し算したり引き算しただけではそこまでの差は…4時間か、結構差は出るけれども。どうも、午前と午後を完全に間違えたらしい。そのうえ、普段なら夕方の4時は試合中のことも結構多く、そもそも電話に出られないことの方が多かったりもする。一体どれだけの間違いが重なったのだろうか…1つだけならいいんだけど。

「寝てたならすまん、またあとで電話するわ」

「いえ、かまいませんよ。ちょっと落ち着かなくて、あんまり寝れてなかったので」

「猶更寝なきゃいかんだろ、えーっと、何時ごろがいいか…」

「ああ、こちらからかけなおしますよ。そうですね、6時はどうですか?」

「6時って今じゃねぇか」

「間違えました、そちらでは夜の8時ですね」

「そうか、わかった」

「では、また後で」






電話の内容は、調子はどうだ、とか、うまくやってるか、とか、プレイは衰えてないか、とか、俺の事ばかりだった。なんだかんだきついことを言っているが、照れ隠しなのは見え見えであった。卒業後も気に掛けるとは、いい監督だ。


「ああ、すまん。長くなっちまった。本題に入ろう」

「もしかして、小清水ですか?」

小清水というのは、清水第三中出身のルーキーで、中学卒業後は順調にサッカー歴を重ね、目覚ましい成績を残したため、多くのリーグからスカウトされているゴールデンルーキーだ。

「ああ」

「面倒見てやってくれ、とか、そういうことでしたら知り合いに聞いてみますが」

「ああ、いやそうじゃないんだ。あー、こんなタイミングでいうのもなんだが」

俺の頭に?マークが現れる。


「サインしてやってくれ」

「は?」


思考停止状態になってしまった脳を慌てて動かそうとする。

「サインというのは…えーっと、家を買うとかローンを借りるとかの連帯保証人…」

「いやいやいや、そっちじゃない。金は前金でたんまりもらってるはずだし、派手に遊ぶ方でもなかったからな。だからその…」

もごもごと、監督は続けた。

「…小清水は、お前の熱烈なファンでな」

「シーズン直前になって、そのためだけにわざわざ電話を?」

「ああいや、そんなこともないんだが…」

「冗談です、お忙しいですものね」



「監督はもうやめたから忙しいもないんだが…前々から言われてたのを忘れてて…」


ずっこけるかと思った。

「いつからですか?」

「あいつが入学した時だから」

「そんなに!」

「わかったわかった、聞いとくよと言ったらマジにしやがって」

「もしかしたら監督の事だからすぐできる、そんなに重大に構えなくても待ってりゃすぐくる、みたいにとらえられたんじゃないですか?監督がそういうときってくだら、いや簡単なことに応えるときによく使ってましたし」

「ありゃ、俺そんな風に見られてたのか」

「で、あまりに長いんで催促されたと」


図星らしい、黙りこくってしまった。

「わかりました。こっちの住所を教えてもらえれば送りますし、なんなら届けに行きますよ」

「ほんとか!」

すごく食い気味に言われ、しかし冷静になったのか

「いや、そこまでさせらんねぇよ。流石におめぇに迷惑だろうし」

「こんな時期に電話してる時点でどうかと思いますが」

「・・・」

「冗談です、それに、ファンは大切にしないと。いくらチームが違うとはいえ、1試合1試合をいい試合をするのが一番大事だと思いますし、それにはモチベーションも関わりますから。僕もいいカンフル剤あるかもですし」

「そう言ってくれると助かる。いや、お前の底なしの人の良さを当てにしてた部分もあるにはあるから、断られたら困るところだった」

ふう、といった調子で監督は言う。こんのジジイ・・・


教えてもらった住所に向かったが、留守だった。ので、カリブースの練習場へ行ってみることにした。もちろん、事前連絡(当日にというのもなんだが)はしたし、OKももらったから問題はないだろう。敵チームだという部分ではもちろん問題だし、堂々と行くわけにもいくまい。なので、お忍びで向かい、近くのレストランに呼び出してもらった。


「おおおおおおおまたせしましたぁぁっぁあ」

とにかくでかい声で入ってきた。小清水武明その人である。

「えっと…まず座っ」

「失礼します」

食い気味に、しかし大きな声で顔をしかめたのが見えたのか、小さな声でそう言って彼は、テーブル横の床に正座した。

「あ、テーブルにかけてくれた方がこっちとしても助かるんだけど」

「すいません!ご迷惑おかけします!」

いちいち恐縮されるのでやりづらい。とっととボールを渡して帰ろうか、とさえ思ったがいろいろ聞いておきたいこともあるので我慢する。

「初めまして、藤です。見たことあるような気はするんだけど…いつかな…ニュースで見ない日はなかったから」

「恐縮です!神にそう言ってもらえるなど!」

こいつにとって俺はなんなんだ。

「神はちょっと…」

「気分を害したようですみません!」

話が進まない。ので、共通、と思われる話題を振っていくことにした。

「まあまあ、とりあえず今日呼んだのは、ああ、トレーニングの邪魔になったようで申し訳ないんだけど、藤村さんから聞いたかな、とりあえず忘れる前にこれを」

とサインボールを渡す。

「ありがとうございます!」

満面の笑みで受け取るところを見ると、ファンというのは本当らしい。

「俺、藤さんに憧れて!」


小清水君は話した。止まらなかった。藤尊愛を。ちょっと怖かった。

「特にあの5ゴール!」


「キックオフゴール、狙いまくって監督に・・・」


「エキスパーツでも・・・」


どうやら、エキスパーツの試合を見に来てくれていた一人らしい。握手した手を親に洗われて、泣きじゃくったそうだが…

「今度握手してもらったら、もう手は洗いません!」

「いや、洗おうよ。試合後に握手はするんだからさ」

「そうですね、それで思い出しました。藤さんは、なんでカナダに来たんですか?聞くだけってのもあれなので俺も言うと、祖母がカナダに来た時に感動して…」

どうやら祖母の見た景色を見たかったそうだ。

「10年以上言われ続けましたよ。死ぬ間際でも『あの景色は』なんて。そんなにきれいだったんでしょうね」

「なるほど。前にテレビでも行ったんだけど」

「それは見ました。何度も。でも、ほかにも理由がありそうだったから」

「大した理由はないよ。いろいろなところでサッカーがしてみたかった。そしたらカナダからオファーが来た。それだけ」

納得がいかないといった顔で、小清水君は首をかしげる。沈黙が続くのもあれなので、いろいろ聞いてみることに。

「こっちに来てどう?俺はまだ慣れないけど」

「うーん、もともと秋田生まれで、中学は引っ越してきましたけど高校からはまた北の方だったので、あんまりそうは感じませんね。でも、文化の違いとか、食べ物の違いが慣れませんね」

「なんなら、みそでも持ってこようか?日本に帰ったときとか、たまに親が贈ってくれたりで味噌やら醤油は結構あるし」

「くれるんすか!」

やはり、故郷は恋しいし、同じ国の人に異国で逢うのは結構楽しいものだと痛感する。


「じゃ、次は試合で。いい試合をしよう」

「ありがとうございました!」


うん、緊張はほぐれた、かな。ちょっと怪しい気はするけど、大丈夫だ。なんだかんだ、監督は見抜いていたのかもしれない。この時期の硬さと、望郷の心を…いや、違いそうだな。まあいいや。


カリブーズとの初対戦は4戦目、先発出場ではないだろうが、彼の出番は来るのだろうか。ちょっと親心、いや兄のような気持になっていた。こりゃ試合でちゃんと動けるのかな、なんて笑ってしまう。


まあそれもこれも、エルザのハッパですべて掻き消え、緊張も緩みも、なくなったわけだが。

やっぱり冗長になっちゃいます、すみません。

読みにくい文章ですね。気をつけます。変えられそうなら変えるけれど、本心から言うとあまり変えたくないかなぁと…まあ、文章力がないのを読者の皆様に押し付けてしまっているのは事実です。大変申し訳ありません。


この後も更新はするかもしれませんが、ひとまずここで話を完結、とさせていただきます。

始めたときは、正直、ここまで続けるとは思っていませんでした。50話くらいで終わるかなぁ、なんて。

でも、描いていくうちに面白くなってきて、その結果詰め込みすぎて空中分解してしまったわけですが…

こんなぐちゃぐちゃな文章を書いて、読者なんてつくのかね、とか、好んで読む人は変人だな、なんて思ったこともあります。でも、読んでいただき、ブクマが1人増えるだけでもとてつもなくうれしく、元気をもらいました。


最後には10万人以上のアクセス、1万端末以上からの閲覧と、ここの先輩方と比べると、弱小小説家のステータスが見えるようですが、それでもこのような作品を長々と、いやずっと見続けていただけて、本当に感謝しております。読者の皆様が楽しんでいただけたのであれば、素人ながら作家冥利に尽きます。

しつこいくらいに厚く御礼申し上げます。お付き合いいただき、誠に、ありがとうございました。

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