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An Endowment  作者: アタマオカシイ
第10章 ユーティリティプレイヤー
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99蹴 前夜(1)

日常に慣れていく中で、時間は過ぎていった。

そして、ついにシーズン開幕の前夜になった。


直前というのは、だれしも例外なく緊張している。緊張が見えやすいかそうでないか、出やすいかそうでないかの差はあれども、平等に緊張している。


緊張をほぐすために、と父がビデオレターを送ってくれた。どうやら、サインをもらったと自慢していたが、そういうことらしい。

「尊、元気してるか?プロ入りの時のお前の緊張を考えると、何かやってやれないかと思って、元チームメイトの方々にエールをもらってこようと思う。」

映像はそこから始まった。そして、生まれた病院、幼児期、児童期と進んでいった。


『覚えているかどうかはわからないが、お久しぶり。君を取り上げた、竹中博人です。起きたと思ったらすぐに寝てしまって、お父さんはあたふたしていた様子を、今も昨日のように思い出せます』

20年ほど前のことを昨日のようにって、薄い人生すぎでしょ、なんて毒づいてみる。顔を見ていると、たぶん覚えていなかったのを思い出した、そんな感じがしている。

『息子が泣かないんです、と相談を受けたりした。君は本当に泣かなかったから、僕も少し不安だったのだけど、ほかに全く異常がなかったから、自信をもって大丈夫だといいました。君には記憶もないでしょうから、こんなこと言ってもあれだけど・・・』

うん、聞いてた。言えないけども。

『正直に言って、あの時に取り上げた子どもに、こんな潜在能力があるとは思わなかった。いや、他の子にしたって思っていなかったんだけど、特にこれといって特徴がある子とは思わなかった。イケメンになるんだろうなーなんて思ってはいたけれど』

大半は前世のおかげだからな。

『一番最初に、この世界に出てきたときに触れていたのが僕だった、というのは、一つの自慢です。無事に育ってここまでの人になってくれた、それを聞くだけでもよかったが、わざわざ思いを伝えられるチャンスまで貰えてよかったよ。初めての海外チームに入っての公式試合だから緊張もあると思うけれど、頑張ってください。1ファンとして応援しています』

うちの父親はどこまで徹底するんだ、ちょっと引いた。

「シミズジュニアのコーチはオーストラリアに行っているとかで、直接会えはしなかったんだけど、家に伺ったら奥さんから、コーチの手紙をもらった。読んでみる。」

手紙が(画像だが)贈られてきて、父がそれを読み上げ始めた。

俺が見出したんだの俺に恩返しをしろだの、ふざけた調子で書いてあったが、〆は真面目だった。


お前の思うように、全力でやれ。お前はもっと強くなる。自信をもって突っ走れ!




ビデオレターは続いた。

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