表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
An Endowment  作者: アタマオカシイ
第2章 発芽
10/107

9蹴 プロ体験(大嘘)

内田選手と仲良くなった。というか、内田選手が師匠になった、と言うか…

俺の練習を覗いていた時間を、俺に教えてくれる時間にしてくれたので、当然のごとく実力は…伸びねぇよ!いやさ!プロに教わってるとはいえさ!こいつ教えんの向いてねぇよ!

「うーん、俺よりだっさんに頼んだほうが、君のような理論派は上達するかもな。」

内田さんはそう言った。だっさん、と言うのは、安達あだち ひろし選手のことである。司令塔としてチームを率いるキャプテンである。彼のあだ名はシーンメイカー|《映画監督》である(ちなみに内田選手は日本のファンタジスタと呼ばれている)。Jリーグから日本代表として選ばれた数少ない日本人である(日本代表には海外のクラブチームに行っている日本人選手が多い)。彼は根っからの理論派としても知られ、チーム主催のサッカー教室では、彼の教え方のためか、彼に教わる列だけものすごく長い。内田選手のところはファンは多いが初心者は全然行かない。彼は感覚派すぎるのだ。まあ、チームの中でも初心者から上級者まで、どんな実力に対しても適切に教えられる選手に教われるというのは、願ってもいないことである。

「え!安達さんですか!?うれしいです!」

「俺と初めて会った時より興奮してないか?まぁいいや。裕斗さん、ちょっとこの子借りるよ。」

と内田選手に連れていかれたのは、清水エキスパーツの練習場だった。さすがに緊張。

「そこまでガチガチにならんでもいいよ。まあ、俺も初めてここに来たときはさすがに気圧されたけどな。」

そりゃあんたは子供のころから覗いてるだろうよ。こちとら年寄りじゃ!もっと大事にせんかい!と思ったのは内緒である。言っても何言ってんだの一言で一蹴されるだろうが。

なんだかんだ言って、実年齢は内田選手より年下だし、死んでなかったとしても44歳だし、ということは今の年は34歳だし。

「それに、ここに来たのはあくまで寄り道。今日はだっさん敵情視察だ。」

どうやら、安達選手は次に対戦する金沢オウルズの試合を見に行っているようだった。ということで長距離移動…やってきたのは京都。親に借りるよとしか言わずにここまで連れてくるとは、こいつは常識というものが通用しないのか!とか思っていたら、

「心配ないよ、裕斗さんには先週から言っておいたから」

とのこと。こいつ、心を読むぞ!

安達選手はすぐに来た。本人は変装のつもりだろうが、浮きまくっている。もちろん、オウルズの選手にはばれたくないだろうから、電話で呼んだようだ。

「ははぁ、この子がお前がよく話す尊くんか。上手なんだって?ウッチーの扱きには耐えられなかったのか?」

「そうそう、彼はすごいよ!我流のようだが、俺の教えで裏街道とクライフターンができるようになったんだ!」

「お前の教えでって、それなら俺が教えるよりお前が教えたほうがいいんじゃないか?」

「俺よりお前のほうが初心者に上手く教えてるじゃんか!よろしく頼むよ」

「誰に対してもお前よりは上手く教えるよ。それはともかく…」

だっさんこと安達さんは、俺にあった練習方法やら食事やらなにやら、一生懸命考えてくれた。父は食事にも気を使っているが、そこまで大した料理ができないのでいつも俺が飯当番をしている。自分で好きにさせてもらえるので、かなり楽である。というか、思い通りにできるので、この食事プランも実行できる。

前から食事のバランスは考えていたのだが、プロの食事とはやはり違った。タンパク質と野菜類多めのメニューがメインのようだ。あまり早くから筋トレしたら身長も伸びなさそうなのでしないが、小学校に入ったら少しやるのもいいかもしれない。など、安達選手は様々なことを教えてくれた。覚えきれないので大半を録音した。かなり勉強になった。翌日からのメニューに父は不満を爆発させるのだが、俺のために我慢してくれと頼んだら仕方ないと折れた。わりとチョロかった。


その結果として、サッカーがかなり上達したように感じる。内田選手の教え方よりは、安達選手の教え方のほうが俺に合っていた。というか、内田選手の教え方が合っているやつって相当少ないだろうな…自分ができないということがないから、できないことがわからない、といった感じだったからな…フェイントテクニックに関しては、たくさん動画もあったし、隣人がプロなので(かどうかはわからないが)わりと習得しやすかったように思う。実際、練習しだして、長いもので3週間、短ければ1日もあればできるようになっていた。父などもう相手にもならない。


だから、サッカーチームに入りたいとせがんだ。いや、伝えた。父は少し考えて、

「小学生になったら、ジュニアチームに入りなさい」

と言ってくれた。逆に言うと、幼稚園児のうちはまだ早い、ということだろう。

小学生になるのを心待ちにしながら、俺はサッカー練習に打ち込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ