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An Endowment  作者: アタマオカシイ
転生
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30歳=赤子

母親に頼まれて、コンビニに向かう、それだけのことだった。

信号を渡ろうと歩きだしたら、俺の体は吹っ飛ばされた。

「大丈夫か!おい!」

呼びかけられる声が聞こえる。その声は次第に小さくなった…


目が覚めると、見知らぬ天井だった。見回すと小さな容器に囲まれている。容器は透明で、向こう側が見えた。同じようなものが並んでいる。そして聞こえる鳴き声。ふと自らの手を見る。小さい。腕も短くて太い。

あばぁー!!!?(なんだってぇ!)

俺は赤ん坊になっていた。何が何だかわからない。考えても回転が追い付かない。赤ん坊の頭だからか…と思ったその時、意識が途切れた。


俺の名前は啓史(けいし)、周りから言わせても自分から見てもオタクだ。よくわからないが今は赤ん坊だ。はねられたと思ったら赤ん坊になった。…この状況は誰にも伝えられないし、伝えられたとしても誰も信じないだろうが、とにかく30歳のオッサンが事故で赤ん坊になった。


うん、自分でもわけがわからない。はねられた衝撃で赤ん坊になったとしても、転生モノ小説みたいに赤ん坊になったとしても、なぜ?理由を求めるのもおかしいのかもしれないが、なんで?と思う。そんなことを考えていると、また眠くなりそうだ。どうやら、脳みそも赤ん坊で体も赤ん坊だから、普段オッサンだったころみたいに考えていると、一気に疲れる。

エネルギーが足りないのかもしれない。食事は授乳である。嫌がっても顔に何か触れるとその方向を向いてしまうし、口に入ったものには吸い付いてしまう。なんでも、これは反射だそうで、それぞれ探索反射と吸啜反射というものである。童貞のまま死んだ俺としては役得である。もちろんただの食事なので、変な気は起きないが…

「タァくんよく飲んでねぇ」

と言うのは、この体の母親、藤 薫(ふじ かおる)だ。そしてタァくんというのはこの体につけられた名前で、戸籍上は(たける)である。ひかれた拍子に赤ん坊に変身したわけではないようで、転生モノのような感じらしい…現実味はないがこれが現実である。

気が付いて驚いたのだが、寝て起きてを繰り返したら、けっこうすぐに時間が経っており、もう退院していた。早い。

と、ドアが開いた。

「ただいま、今日は会議が早く終わってね」

言ったのはこの体の父親、藤 裕斗(ふじ ゆうと)だ。大手企業の棚橋産業に勤めるサラリーマンだ。年収は細かくはわからないが、そこそこ裕福なのかもしれない。少なくとも転生前よりお金に関しては大分恵まれているという感じがする。この体になってからとにかく寝るので時間感覚がないが、時計を見ると…見えない。大体のことは赤ん坊だからと諦められるが、結構不便である。

「よかった、ご飯の準備するからこの子と遊んでて」

そういうと薫は、いや母はと言うべきだろうか、エプロンを着て食事を作り始めた。

「じゃあパパとあそんでようねー」

と父が言うと、右手にタッチ。握る。左手、右足…握る。これも反射らしい。遊んでいるのは俺じゃなくて大人たちである。反射で遊ばれているのだ。ちょっぴり屈辱的。だからといって

「あうぁー」

声を出すと

「そうかそうか、楽しいかぁ!よし!」

と言ってもっと触られるのである。逃げ場はない…とっとと反射がなくなることを期待…そうでなくとも赤ん坊は大変なのだ。動けないし首はまだすわらない。寝返りをうとうとすると手足が邪魔をする…思ったとおりに動けないという不便さはとても大きい。


こうなってしまった以上は仕方ないので、これからどうしたいのかを考えていた。せっかく赤ん坊から人生をやり直せるのだ。前の人生の、バイトに行っては帰って飯を食う、それだけの日々、そんな毎日よりは充実させたい。赤ん坊だから、ここから成長し続けられるのだ。なにか大きなことを成し遂げられると。何を成し遂げるかと考えた。そしてひらめいた。才能才能と言われる世界で、今から頑張ったら本当に才能がないとやっていけないのか、努力で才能を超えられるのかを、試してみたいと思った。ここはサッカー王国と呼ばれる地域である。赤ん坊からやり続けて、一流のサッカー選手になれるのか。生きる目的は今決まった。


ここから、二つの意味で生まれ変わった俺の物語が始まる。

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