#6
城下町に行く許可をもらいに、京介さんの執務室に行ってみる。
「…京介さん」
「おっ小雛どうした?」
「今お邪魔しても大丈夫ですか…?」
好きな時に来てもいいとは言われたけど、やっぱり王様の執務室だしお仕事中だったら悪い。
「ああっこれから休憩する所だ。入れ入れ! 和馬、愛華に小雛の分のお茶も頼んで来てくれ」
「かしこまりました」
和馬さんはこの城の参謀さん。
この人も鬼人なんだけど、戦う事が苦手らしくて書類仕事が得意らしい。
優しい人だけど、たまに怖い時があるのはここだけの話。
「それで、どうした」
「あの……城下町に行きたくて…許可をもらいに」
「城下町か。誰か共に行ける者はいたか…?」
「いっいえ…あの…城下町に行くだけですし、一人でも……」
「それは駄目よっ」
どうにか一人で行けるように京介さんを説得しようとしたら、お盆を持った愛華さんが襖を凄い音を立てて開けて入って来た。
「っっっ!」
「愛華…小雛がびっくりしているだろう」
「ごめんなさい…でもっ小雛ちゃんを一人で城下町に行かせるのは駄目よ!」
京介さんに注意されて、シュンとした愛華だけどすぐに持ち直して京介さんに詰め寄ってる。
……京介さんだけだったら、説得できると思ったのに。
愛華さんも加わったら絶対に一人で城下に行けない。
愛華さんは何故か城ではともかく、それ以外の場所では私を一人にしたがらない。
「まあ、俺も小雛を一人で行かせるのは反対だな」
「……どうしても駄目ですか?」
なんだかここまでくると、意地になってくる。
何でみんな一人は駄目って言うんだろう。
「小雛はこの世界に来てから沢山の事を学び、魔物がとても危険なものだと分かっているな」
「……はい」
「だが、危険なのは魔物だけじゃない」
人間や亜人だっていい者ばかりじゃない。
邪な考えを持つ者だっている。
そんな相手にとって、小雛は格好の餌食だそうだ。
「国の事、城下の事をよく知らない奴は、どんな言葉にも騙されやすい。勿論例外もいるが、小雛の場合は気が付いたら攫われてましたって事になりかねない」
…否定できない。




