#50
入学式の日に何となく元の世界の時と同じようなな予感がしてたんだけど、そんなこともなくてちょっと意外だった。
確かにちょっとした陰口はあったけど、全然手は出てこない。
うーん……やっぱりみんな貴族だからなのかな。
陰口は言ってもいじめはしないってゆう。
あ、でも……グランデの王女様はすれ違うたびににらまれてるけど。
その話を桔梗さんに言ったら、すっごい微妙な顔をされました。
…………解せない。
何はともあれ、私はアンジェリアとエドモン様と平和な学園生活を送っている。
……いや、アンジェリアとエドモン様だけじゃないな。
入学式の翌日、グランデの王子……リナルド様が話しかけてきて、その後もちょくちょく話しかけてくる。
アンジェリアとエドモン様は警戒してるけど、私は何となく邪見にできなくてよく話すようになった。
-キュッ!ー
「あ、ごめんね。流星今ご飯にするから」
入学式以降、学園生活に慣れるためにバタバタしていたら、いつの間にかたまごがかえっていました。
名前は流星。私のお兄ちゃんの名前をもらった。
妖精さんたちにはドラゴンの存在を秘密にしていてくれって言われたから、ダメもとでなにか……鳥の姿にでもなれないか試してみたら、できました。
なので、桔梗さんやアンジェリア、エドモン様は流星のことを普通の鳥だと思っている。
あ、因みに妖精さんたちの名前も無事に決まった。
最初に私の前に現れたライオンが太陽、蛇が満月、狼が輝、しゃちが海、鷹が颯、熊が樹。
契約をしても私自身何も変わった所はなくて、本当に大丈夫なのかな……って思うけど太陽曰く問題ないらしい。
そんなこんなで、一年間の学園生活が始まりました。
「やぁ、こんにちは。コヒナ」
「こんにちは、リナルド様」
「いやだなぁ、リナルドでいいって言っているのに」
グランデ第三王子リナルド様。
彼は人間しかいないグランデでは珍しい亜人で、犬族の中型種だ。
アンジェリアとエドモン様に警戒されているせいか、必ず二人がいない時に話しかけてくる。
「今日はどうかしましたか?」
「いやぁ、最近コヒナの警備が固くてねぇ。なかなか話しかけられないから、今日たまたま見つけて嬉しくなってね」
「そうですか……」
うーん、悪い人ではないとは思うんだけど……この手のタイプはあまり得意じゃないから対応に困る。
「そこで何をしているの!?」
そんなことを思っていると、横からグランデの第一王女、ルチア様がこちらに向かって歩いてくる。
「神花の王族なんかと何を話していたの!?」
「まあまあ、落ち着きなよ。ルチア……」
「お前みたいな出来損ないに呼び捨てにされる筋合いはないわっ」
「……申し訳ございません。ルチア様」
……学校が始まってからずっと疑問だったんだけど、この二人って王子と王女なんだから兄妹なんだよね。
なのに、リナルド様はずっとルチア様の付き人みたいなことをしてるんだよね。
それに……リナルド様のことを出来損ないって……。
亮輔お兄ちゃんや、フォルテの兄弟を見ていたから兄弟って凄く仲のいいイメージなんだけど……グランデは違うのかな。
「行くわよ。出来損ない」
「……はい」
ルチア様の後ろを歩くリナルド様の顔が、忘れられなかった。




