#4
「さて、これからの話だ」
「……」
あれ、本題と言っていたからこの世界の話をするのかと思ったんだけど…。
「この世界については今此処で話すよりも、少しずつ聞いていく方がいいだろう」
顔に出ていたらしい。
でも確かに京介さんの言う通り、少しずつの方がいいのかも。
異世界なんて私の常識が通じない世界の話をいちから聞くんだから、きっと今此処で全部聞いてもパンクするだけのような気がして来た。
「それで、まずはお前にとって一番重要な話だろう。元の世界に帰れるか」
「……はい」
「はっきり言おう。諦めた方が良い」
「………そう…ですか」
そうか…帰れないんだ。
「何もないのか」
「…え?」
「お前はもう帰れないと言ったんだぞ。そこに何の感情もないのか」
「いえ…そんな事は……」
そんなこと……
……でも私の中に元の世界に帰れないのだという絶望も悲しみもない、と思う。
あるのは、帰れないのならそれこそこの世界でこれからどう生きていこうかという思いだけ。
だって生きる場所が変わっただけだから。
何も変わらない。
私は今まで通り……
「まあいい。それでお前にはこれからこの城で暮らしてもらおうと思っている」
「はい」
「暫くこの城で暮らしてもらって、怪我をきちんと治しつつこの世界の事を学び、そうしてこれからどうするか考えていけばいい」
「分かりました」
……どうするか。
ずっとこのお城にお世話になるわけにもいかないし。
城下の事をきちんと学んで、私でもできる仕事を探そう。
「小雛の世話係に桔梗をつける。分からない事があれば何でも桔梗に聞け」
「何から何まで…本当にありがとうございます」
「お前を拾った者の責任みたいなものだ。そう気にするなっ」




