#42
「さて、いつまでもコヒナを拘束するわけにはいけませんね」
「……え?」
拘束ってなんのことだろう。
アンジェリアの事を誘ったのは私なのに。
なんて考えていると、不意にアンジェリアが横を向いた。
「あら、いらっしゃったんですね。アルベルトお兄様」
「呼んだのはお前だろう。アンジェリア」
アンジェリアがアルを呼んだんだ。
アルも一緒にお茶を飲むのかな。
……ハッ!!
私も亮輔さんを呼べばよかったかな。
でも亮輔さん今、出発前の最終チェックしてるんだよね。
ああ……でも、終わってからこっちに来てくださいって頼めばよかったかも。
「さて、私はリョウスケ様に挨拶をしてきます。コヒナとアルベルトお兄様はゆっくりお話しをしていてください」
アンジェリアは席を立つと庭園を出て行って、アンジェリアが座っていた椅子にアルが困惑しながらも座る。
メイドさんがアンジェリアが飲んでいたお茶を下げて、新しいお茶をアルの前に出して下がる。
すぐに準備してくれたって事は、アンジェリアにあらかじめ言われてたのかな。
「アル、今日仕事は?」
「休みだ。リョウスケの手伝いをしていたら、メイドに呼ばれてな」
「そうなんだ」
アルは仕事だと思ってたし、アンジェリアとと最後に話をしたかったからお茶に誘ったけど、アルの仕事が休みだったらアルも誘えばよかった。
……そういえば、フォルテに来てからずっとアルと一緒にいた気がする。
だからだろうか。アルと一緒にいないと、アルが隣にいないと凄く、違和感がある。
神花だとそれが普通なのに。
神花に帰れば、彼はいないのに……それが少し寂しい。
「アンジェリアには感謝しないとな。コヒナが神花に帰る前に話ができる」
「……うん。そうだね」
「コヒナ? どうした?」
「……寂しいなって思って」
だって、神花に帰ったらもうアルが隣にいない。
アルとこうやって話ができない。
アルと、笑いあえない。
もう会えないなんてことはあり得ないけど、それでもこうやって毎日のように会うなんてことはできない。
それが寂しくて……苦しい。
でも、どうしてアルに対してだけこんなことを思うんだろう。
やっぱり、私の初めての友達だから?
私の恐怖を、取り除いてくれたから?
「ねえ、アル。私はどうしたのかな? どうして……苦しいのかな。どうして……涙が止まらないのかな」
気づいたら出ていた涙が、拭っても拭っても止まらない。
ねえアル。貴方なら、この涙の止め方を知っていますか。
この寂しさを、苦しさをなくす方法を知っていますか。
「コヒナ、俺はその答えをコヒナ自身に見つけてもらいたいと思ってる」
「私が……見つける?」
「ああ……その苦しさの訳も、涙が止まらない理由も、コヒナが考えて、自分の力で見つけてほしい」
じゃあ、見つからなかったらずっとこのままなのだろうか。
このままずっと、寂しくて、苦しくて、涙が枯れるまで泣き続けなければいけないのだろうか。
「だが、俺も寂しいのは同じだからな。……手紙を書くよ」
「てがみ……」
「ああ、コヒナに沢山の手紙を書く。だからコヒナも俺に沢山手紙を書いてくれないか」
手紙ならアルの声が聞けなくても、手紙でアルの事を知れたのなら、少しはこの寂しさも、苦しさも和らぐかもしれない。
そうしてアルの言ったように、この寂しさと苦しさの訳を考えてみよう。
「わかった、アルに沢山手紙書くね。だからアルも沢山手紙ちょうだい?」
「ああ、約束だ」
こんにちは。
ひなた こはるです。
フォルテ滞在編終了です。
そして、作者の中ではここで第一章が終了になります。
次の話からは第二章になります。
これまでは日常のような話でしたが、第二章ではもう少し話が進展できればな……と思っております。
これからも『異世界トリップしたら鬼娘に!?』をよろしくお願いします。




