#3
「来たな」
全身くまなく洗われ、頭の天辺から爪先までセットをされて案内された場所には煌びやかな人達が沢山いました。
「すまないな。怪我人にこんな所まで来させて」
「いえ…こちらの方こそ助けて頂いたのに、挨拶もしないで…」
「気にするな。あれだけの怪我を負っていたんだからこれなくて当然だ」
き……緊張する。
日本の政治家にだって会ったことないのに、いきなり王様だなんて。
「お前の事は妻から聞いてる。異世界から来たんだってな」
「あっはい。そう…らしいです」
………あれ?妻?
私がこの半月で会った事があるのは愛華さんだけだ。
つまり、私が異世界から来たって話をしたのも愛華さんだけのはず。
でも王様は妻って言った。
単純考えれば、愛華さんが王様の奥さんってことになるんだよ…ね?
あんなに高そうな着物を用意できるんだから、偉い人だとは思ったけどまさか王妃さまだなんてっ
どうしよう…ずっと『愛華さん』なんて気安く呼んでた。
「小雛ちゃん?」
「あっえっと…あの…」
どうしよう。
王妃さまだなんて知ったらもう『愛華さん』だなんて気安く呼べないし…。
でも知らなかったとはいえ、『愛華さん』呼びでも気分を害した様子はなかったし。
「もう貴方が妻だなんて言うから、小雛ちゃんがびっくりしてるじゃないっ」
「なんだ、言ってなかったのか?」
「最初から王様の奥さんです。なんて言ったら小雛ちゃんが愛華さんって呼んでくれなくなるじゃない」
あぁ、愛華さんって呼んで良かったんだ。
なんて考えていたら、愛華さんに手を握られた。
「小雛ちゃん。これからも愛華さんって呼んでねっ」
「はっ……はい」
あぁ温かい。
これは駄目だ。
私を駄目にする温かさだ。
「さて、そろそろ本題にはいるか」
「あ……はい」
「改めて、俺は京介。この『神花』の王だ」
王様が……京介さん。
京介さんって確か私を此処まで運んでくれた人。
「重症だったお前を見た時は助からないかもしれないと思ったが、無事回復して良かった」
「ぁ……はいっ。あのずっとお礼を言いたくて…ありがとうございました」
「気にするなっ。目の前に傷を負ったヤツがいたら助けるのは当たり前だ!」
……なんか、流石夫婦って感じだ。
この人と愛華さん、凄くそっくり。
凄くあったかい人達。
私の周りにはこんな人達いなかったから、調子が狂う。




