#17
「コヒナは本当にこの店の団子が好きなんだな」
「…え?」
「幸せそうに食べているから」
ああっそうだった。
私は今、案内される側じゃなくて、する側。
それなのに、夢中になってお団子を食べててどうするの。
でも、アルベルトさん。
まだ一口も食べてない。
もしかして甘いもの苦手だったりするのかな。
そういえば、必死になってあまり覚えてないけど、アルベルトさんに甘味屋さんばかり紹介してたかも。
「コヒナ」
「はっはい」
「ほら」
アルベルトさんに呼ばれて向き直ると、アルベルトさんがお団子を差し出している。
あれ…これ、アルベルトさんのお団子じゃ。
「あ…アルベルトさん。このお団子……」
「いや、コヒナがあまりにも幸せそうに食べるからな」
えっと、これは食べても良いって事なのかな。
「食べないのか?」
「いっいただきます!」
結局、アルベルトさんの分のお団子も全部食べてしまった。
ええ、美味しくいただきました。
最近太らないか心配です。
お団子も食べ終わってお茶を飲んでアルベルトさんと他愛もない話をしている。
このお店はお茶も美味しくて、しかもおかわりが自由だからうれしい。
「…アルベルトさんは、亜人…ですか?」
「ああ、猫族だ」
「ねこ…」
こんなにカッコいい人が可愛い猫。
見てみたいような…でも似合わないような…。
……やっぱり見てみたいし触ってみたい。
フワフワなんだろうな…。
……でも、アルベルトさんに迷惑だよね。
「触ってみるか?」
「……えっいいん…ですか?」
「ああ、城に帰ったらな」
やった。
元の世界にいた時は知らなかったけど、私は動物が好きらしい。
というより、元の世界にいた時は好きだと思うものなんてなかった。
この世界に来てから、甘い物や動物が好きだと知った。
自分にも好きなものがあるんだって知って、凄く嬉しい。
そう思えるようになった事も……。




