#10
「これで国の創造の話はこれでお終い。次は小雛ちゃんの話を聞かせてくれる?」
「………私の、はなし?」
「ええ。小雛ちゃん、もうこの世界に来て一年たったわよね。これから小雛ちゃんがどう生きていくかを聞く前に差し出がましいとは思うけど、小雛ちゃんの事を教えてほしいの」
愛華さんは真剣な顔をして私を見てる。
京介さんを見ると、愛華さんと同じ様な顔をしていた。
二人は私の何が知りたいのだろう。
「小雛ちゃんが向こうの世界でどう過ごしてたのか。それを知りたいの」
「……普通ですよ……普通の女の子でした」
「そう……でもね小雛ちゃん。私からは貴女が生きる事を諦めている様に見えるの」
生きる事を諦めてる。
どうしてそう思うのだろう。
だって私は今生きてる。
生きる事を諦めてるなら、きっと死のうとするのではないのだろうか。
「そんなこと…ないですよ。だって私は今生きてるじゃないですか」
「今生きてるからって生きる事に前向きとは限らないわ。生きていたって、日々を無気力に過ごしていたりしていたら、それは生きながら死んでるのと同じよ」
「……っ」
「私は小雛ちゃんに初めて会った時からずっと思っていた事があるの。貴女、あの大怪我を負った時死んでも良いと思ったでしょう。自分が助かったと分かった時、京介に会った時、貴女はお礼を言いながら どうして助けたんだ という思いがあった」
そんな事ない。
そんな事は無いはずだ。
だって私は生きなくちゃいけない。
「わたしはっ!!生きたかったですっだから、助けて貰った事は本当にっ今でも感謝して.....っ」
「……ねえ小雛ちゃん。貴女が生きる理由は、なに?」
「それは……っ」
何で言えないんだろう。
だって、私にとって大切な事だ。
お兄ちゃんとの約束は私の生きる理由そのものだ。
私の所為で死んだお兄ちゃんが最後に願った事だから。




