#9
「でも、ドラゴンはもういないの」
「いない…?」
「そう…ドラゴンだけじゃなくて妖精も…自然を司るモノは全て」
ようせい……。
また新しい言葉が出てきた。
とりあえず置いておこう。
「いないってどういう……」
「……人間と亜人が戦争をして、歪みが酷くなったの」
ドラゴンと妖精は聖なるモノだから歪みが広がり魔物が増えてしまえば、その地に住めないのだという。
神子はドラゴンの力を借りて、歪みを消す事ができるそうだが、戦争が続き歪みが広がり消すスピードが追いつかなくなり、ドラゴン達も力が弱まっていき結局はいなくなった。
ドラゴンがいなくなった事によって、人間や亜人は自分達がした事を悔み反省し両種族が共存のために三つな国を作ったらしい。
その一つが異世界からきた人間が作った神花、一つが亜人が中心に作った−フォルテ−、一つが元々この世界にいた人間が作った−グランデ−。
その後、三つの国を中心に様々な小国が作られていった。
「……どうして最初は三つの国だったんですか?」
国を作る時に、沢山の国ができそうなのに。
なんで三つだけなのだろう。
「それはね、中心になる国が必要だったの」
「中心になる国……」
「そう、これ以上争いをしないために世界をまとめる大国を作って、その後で小国を作ったの」
大国が三つだったのは、当時神子が三人だったかららしい。
世界の事を最もよく知る神子が、国が作られた訳を忘れず後世に伝える為に一国に一人ついたという。
「それで、神花についた神子の子孫が私なの」
「……そうなんですか」
「だから、この国に詳しいというよりこの世界に詳しいって言った方が正しいかな」
「だが、神花もグランデの様に愛華の代でお終わりそうだな」
「そうね。私達の子供は亮輔しかいないものね」
大国の一つ、グランデは何百年か前に神子がいなくなったらしい。
国の始まりはもう何千年も前の話だから仕様がないらしい。
京介さんと愛華さんの子供も亮輔さんだけで、国を継がなければいけないため神子にはなれない。
そもそも神子は女しかなれないため、男である亮輔さんは無理だそうだ。




