魔法実技概要
少し短いです
「こ、この建物です!」
ルロイ先生の猛ダッシュに着いて行く。
と言っても全員が着いて来られる速度のようだ。
貴族と平民の差が如実に現れているようで、息を切らしている者達はレベルがまだ低いのだろう。
それでこの学園に入学出来ているのだから天才肌なのかもしれない。
ただ一つ言いたいのは、その速さのダッシュでも地球では考えられない速度だったということだ。
ステータスは偉大なようだ。
「皆さんをお待たせしています、急ぎましょう!」
扉を開け中に入るとそこには、爺さんやカルディナをはじめ、他にも教師だろう人達が二人を除いて五人いた。
「すみません、遅れてしまい申し訳ございません!」
「よいよい、儂達も途中からではあるが見ていたからの。事情はわかっておる。」
謝るルロイ先生に学園長が答える。
見ていた?監視カメラみたいなものがあるのだろうか。そうすると、声も一緒に聞かれていたらまずいな。あれが終わった後、レティの核心に少なからず触れる話をしてしまっている。
「まあ、聴こえるはずの音が全く聞こえなかったというアクシデントは起こったがのぅ。」
レティに目を向けながら言う爺さん。
そうか、レティはあの状態でそこまで気を回していたのか。相変わらず感心させられる。
「隠し方がお粗末。分かっていれば対応はいくらでも出来る。」
「あれは結構高名な偽装師に依頼して取り付けたものなんじゃがの。」
まるでバレるとは思ってなかったようだ。これには、爺さんもお手上げ状態らしい。
どこにあるのか全く分からなかった。偽装・隠蔽は隠したりする場合は、気付いてしまえば効力を発揮しない。なので、どの様な形でも一度でも気づくことができれば良いのだ。
鑑定のレベルが高いことが一番有効だが、偶然手をついたところにあったとか、他の人から教えてもらったとか、どんな風に見つけようとだ。
ステータスなどは、後から何度も変えることができるし、レベル差でバレにくくなったりもするのでその限りではないが。
「学園長、そんなことより早く試験に移りましょう。待ちくたびれて少し暴れたい気分です。なあ、お前ら。」
こちらに語りかけるのはやめてくれ。
カルディナはやはり待たされたことに少々の苛立ちを覚えているようだ。
「さっき暴れたばかりだろ?それに俺は日に何度も暴れる様な趣味はない。」
それに、戦闘狂の思想と一緒にされたらみんなが可哀想だ。
「やめたまえ、カルディナ先生。今回の試験では、そう言った内容の試験はないはずだ。」
初めて見る教師だろう男がそう言う。ルロイ先生とは別の意味で真面目そうだな。
それにしても、ないのかよ!と言ってやりたい。無意味に暴れたいとかどうなってるのか。
「その目はなんだよ、コータ。私は最初から言っているだろう。待ちくたびれて戦いたくなった、と。まあ、別に相手はお前でなくてもいいんだがな。」
開き直ったぞ。こいつ、冒険者よりも荒々しいんじゃないか?
「それに、私でも暴れることができる試験はある。まあ、それはコータ次第だからその時はよろしく頼むぞ。」
毎度毎度、背中を叩きながら笑うのはやめたほうがいいと思う。
主に俺の痛みとか痛みとか痛みとかあるし、これは俺の偏見かもしれないが女性としてもどうかと思う。豪快といえば聞こえはいいが、何事も限度というものがあると思うのだ。
大体、何のことなのか説明しないと分からないだろ!
脳筋説再びか?
「カルディナ先生の言葉ではないが早速始めようかの。ルロイ先生、説明を頼むのじゃ。」
予想と反してカルディナは暴れることはなかったな。
ただ、さっきの会話がなければ認識話改めることもあったかもしれないが戦闘狂であることに疑いの余地はなさそうだ。
「はい。魔法実技は全部で四つに分かれています。まず、ここにいる教師陣が強固な壁を作るのでそれに魔法を放ってもらいます。これは、主に威力を見ます。」
もっと便利な魔法道具とかあるものだと思っていたのだが違うようだ。
まあ、そんな便利なもの高価そうだし、威力を見るという内容からも壊れやすそうだけどな。
「二つ目は次々と現れる的を魔法で撃ち抜いてもらいます。だんだんと速度が上がり、三度ミスしたら終了です。これは、主に正確性、発動までの速度を見ます。」
ほうほう。連射性みたいなものかな。
「三つ目は近い距離から順に現れる的を撃ち抜いてもらいます。距離は順に5m、10m、30m、50m、75m、100m、200m、失敗した時点で終わりになります。これは、効果範囲、正確性を見ます。」
さっきから思っているのだが、ここに移動してくる意味はあったのだろうか?
たしかに、授業が行われていたが今は行われていない。まあ、それがイレギュラーだっただけだろうが。
「最後の四つ目ですが、」
「お前達が私達の中から一人選んでの実戦だ。分かってるよな、コータ。」
おい。ルロイ先生の言葉を遮ってまで戦いたいのか。
というか誰も咎めないのはいつもの事だからか?それともこのそれぞれが放ってきている威圧感的なものはこの教師陣は全員がカルディナと変わらないということなのだろうか。
爺さんとルロイ先生は苦笑いだ。
「嫌だよ。さっき戦っただろ。一日に二度も同じ相手と戦いたくないし、どうせさっきよりも力出してくるだろ。」
カルディナは負けたままで終わらせるようなタイプじゃない。
さっきも俺が勝ち逃げと言った時にピクってなってたからな。
「おいっ!約束が違うだろ!」
約束なんて何もしてません!さも、約束していたように言わないでください!
「大丈夫ですよ、カルディナ先生。ここには俺以外にも三人もいるじゃないですか。」
「あー!卑怯だよ、コータ!クオ達に押しつけないでよ!」
「いやいや、あれ見てみろよ。どれを選んでも同じだって、な?」
「そ、そうかもしれないけど。何か釈然としないよ。」
俺は押しつけたりなんかしてない。ちょっとクオ達に頼っただけなんだ。
「私は誰でもいい。」
「私もかな。」
俺はルロイ先生辺りがいいな。
「選ぶのはその時になってからでいいじゃろ。では、はじめるかの。」
誰選べばいいんだよ。嫌だなー、どれ選んでも同じ未来しか見えない。




