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創造神の力で異世界無双  作者: TKG
異世界ディファード
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刻印魔法

 少し早かったが夕食も食べ終え今は部屋に戻ってきている。

 時刻は七時ごろだ。

 俺は今からある事をやろうと思っている。


「ちょっと膝の上から降りてくれないか、クオ。」


 部屋にいる暇な時間は大体ローテーションで俺の膝の上に誰かが座っていて、たわいもない話をしたり、時折リルエルの授業みたいな感じになったりしている。

 俺はまだ魔法も詳しい事はわからないので偶に質問したりはするが真剣になってる時は口を挟まない。

 そして今はクオが俺の膝の上だ。今されていた話題は俺が贈ったアクセサリーについてだ。まあ、お互いに誉め合っているだけだが。


「えー。まだ時間きてないよ。クオだけ短いなんて不公平だから断固拒否する姿勢だよ。」


 上半身を捻って抱きついてくるクオ。

 そんな事されては俺の方が降りてほしくなくなるので仕方ない。もう少しだけ待つことにする。


「あと少しだけだからな。」


「うん。ねぇ、コータ。さっき気になったんだけど、あのエマのしてたペンダントってコータがプレゼントしたの?」


「ん?あぁ、そうだぞ。今日付き合ってくれたお礼にな。好きなの選んでくれてよかったのに俺に選べなんて酔狂だよな。」


「うわぁ。ダメダメだね、コータ。選んだからこそ価値があるんだよ。これってそんなに高くないでしょ?」


「ん。ダメダメ。これくらいの値段で欲しいものだったら自分で買う。」


「本当にダメダメね。あんな嬉しそうな顔を見て見ておいてその感想はエマに失礼だわ。」


 いや、だってさ。


「だってそうなる理由がないだろ?特別な何かがあったわけでもないからな。」


「それだったら私も同じ。構図的に私はクオ様について来ているだけ。でも、今ここにいるのは私の意志。光太と居たいと思ったから。私の気持ち疑ってる?」


「疑ってないよ。いつも助かってるし、何だかんだ言ってもレティといると楽しいしな。レティも楽しんでくれてるのがわかる。それに何より俺もレティと一緒に居たいからな。」


 こういう気持ちにきっかけを求めたらいけないのか。

 クオやリルみたいなのが特別で殆どはありふれた、だけどどこか少しだけ特別な、周りからすればたわいもない、そんな理由で充分なのかもしれない。


「まあ、それでも気になってる程度じゃないかしら。あんなに皮肉を言い合える仲はある意味で特別かもね。」


「そろそろ時間。」


 名残惜しそうに膝の上から降りるクオ。

 そんなにいいものか?


「俺はそっちで作業してるから。何かあったら言ってくれ。」


「作業?何するの、コータ。」


「ちょっと魔法道具の研究だ。せっかくだから作ってみたいだろ?一回ぐらい挑戦してみてもいいかなと思ってな。」


 正規の製法は難しそうなので、俺の思いつきのやり方だが。


「あれ結構繊細な作業が必要だよ。大丈夫、コータ?」


「その前に古代魔法言語の習得しないとでしょ?現代の魔法言語だとあまり役に立たないから。」


 現代魔法言語は古代魔法言語を簡略化されたものだ。

 詠唱は想像の補助なので、それに特化されているのが現代魔法言語だ。補助だけなら簡略化されたもので充分なのだ。

 しかし簡略化したことにより、詳しい内容を現わすことが出来にくくなった。

 魔法道具は文字だけで起こしたい事象を記さなければならないので、詳しく記せる古代魔法言語の習得が必須なのだ。


「それなら無問題。」


「そうか。まだ何も俺の事について話してなかったな。俺はさ神崎と同じ世界から来たんだよ。つまり異世界人だ。」


「それは何となく分かってたけど、それと何が関係あるのよ。」


 そりゃ日本人顔の人が少なくはあるがいるこの世界でも、その顔を見ればもしかしたらこの人は異世界人かもしれないと疑いはするよな。


「今俺とリル話せているだろ?つまり、この世界に来るときに神様に言語理解のスキル貰ったんだよ。」


 まだ神について話すのは早いと思う。

 上位種族なんかがいる世界で、今のリルにはまだ早いと思う。

 せめてフロード様からの課題の上位種族になる事をクリアしてからでも遅くないと思う。

 不用意にリルが危険になるような情報は教えない方がいいと俺は思う。


「なるほどね。勇者はみんな持っているってスキルよね。だから、クオが言ってた問題が大きいのね。」


 古代魔法言語が分かっても、魔方陣を寸分の狂いなく描くのは難しいってことだろう。

 俺もそう思ったのだ。そんな技術はポッと出の俺にはない。

 ならばと代用案を考えたのだ。


「ちょっと別の方法を考えてな。それを試してみようと思うんだ。」


「どんなやり方なの?」


「魔方陣って所謂彫刻だろ?すごく複雑な模様を彫刻しているようなものだと思うんだ。俺にはそんな事無理だ。だから、魔法陣を使おうと思ったんだ。」


「それってどういうこと?なんだか発音が同じだから混乱しちゃいそうだよ。」


 俺がやろうとしているのは、まず魔力を用いて魔法陣を生成する。それを魔法を用いて対象物に刻印いてしまう。簡単に言えばこういうことだ。

 刻印する工程で難しい理由は失敗が許されないことと、大きく描けないことだ。

 一度失敗すると最初からだし、魔法道具にしたいものにはそれぞれ大きさに制限がある。その大きさに合うように描かなければならない。


「話だけ聞いてるとなんだか出来そうね。でも、それができるなら誰かが試してそうだけど。」


「条件が揃えば出来る。けど、今回は出来ない理由がある。まずやってみるといい。それと、多分生まれる。」


 レティは失敗すると思っているようだ。

 俺もそんなに簡単には成功するとは思っていない。

 最後の言葉は小さくて聞こえなかった。


「まずは効果を決めるところからか。」


「最初だし簡単なのがいいんじゃない?」


「そうだな。水が出るくらいでいいか。」


 こんな感じでいいか。

 魔法陣には古代魔法言語でこう書かれてある。


『直接的に魔力を流すとその魔力量に応じた水が流れる。』


 直接的にの部分は、例えば装備者だとそれを判断する材料がない。なので、直接的、つまり接触して魔力を流すか、間接的、離れた場所からでも発動できるかを現わす内容だ。

 他の部分はそのままの意味だ。


「でも、やっぱりこれだけの意味でも大きいな。このリングには刻印出来る大きさじゃないな。」


 今回使うのは最後に買った鉄のリングだ。

 ということで一つ魔法を使う。

 魔法陣を小さく圧縮する魔法だ。

 生成する時は、細かすぎて小さくは作れないが、後から小さくすればいいと思った。

 早速やってみる。


「『コンプレッション』」


 想像した通りに小さくなってくれた。

 今度は刻印だ。


「『インスクライブ』」


 これまた想像通りにリングの内側に刻まれる。


「おぉ。いい感じなんじゃないか。後はこれに魔力を流して水が出ればいいのか。」


 ということで流してみる。

 一応、備え付けのカップの上でだ。

 魔力を少しずつ流すとチョロチョロと流れ出した。

 成功かと歓喜しようとしたのだが、


 ビキビキッ、バキンッ!


 砕け散ってしまった。


「あちゃあ。砕け散ったら、魔法道具の意味ないもんな。まだ数字で言ったら三しか流してないぞ。」


 ステータスのMP欄を見ながら言う。

 魔法スキルの欄に刻印魔法と圧縮魔法が追加されている。基本属性の魔法には当てはまらなかったようだ。


「なんで失敗したのかしら。途中までいい感じだったのに?」


「それはね、リングの素材が鉄だったからだよ。どんな物にも耐久値はあるし、魔力に対しても耐久値は当然あるんだよ。金属の中で鉄の魔力耐久値はかなり低いから、こうなることは必然なんだよ。」


 そういうことか。

 効果が大きくなれば必要な魔力量は大きくなるし、その魔力量に耐えられる材料が必要になる。

 今回は少しだが鉄でも水を流せた。

 水を流すだけの効果だったらもう少し魔力耐久値の高い素材で大丈夫そうだ。


「光太は出来ているけど、他の人間が成功してこなかった理由がある。それは、並列思考を持つ人間が少ないから。それと私は刻印魔法なんて魔法属性聞いたことない。」


「そうだね。土属性の魔法で削ることはあっても魔法陣をそのまま刻印するなんてことされてこなかったからね。」


「つまりどういう事だ?」


 並列思考のスキルを持つ人が少ないのは分かる。

 だけどその後の言葉は何故か嫌な予感がする。


「つまり、それは光太が作り出した魔法属性の可能性がある。」


 可能性があると言ったのは、なんで断言できるのかのリルの追求を避けるためだろう。

 属性神であるレティが属性の有無を知らないはずがない。


「私も聞いたことないわね。すごいじゃない。実質、固有魔法みたいなものね。使い道は少ないけど。」


「クオは知らないからね。ロアに怒られるのはコータだけにしてよね。」


 はっ!この嫌な予感の正体はそれか!

 意図せずして魔法属性を一つ創り出してしまったのだ。

 つまり新たに神が生まれたことになる。

 最下級神に刻印の神もいるだろうが、今回は魔法属性だ。属性神は例外なく上級神である。

 最下級神は日常茶飯事とまではいかないだろうが、そこそこの頻度で生まれているだろう。しかし、上級神がそんなにポンポン生まれていたら大問題である。

 つまり、怒っているかどうかは分からないがロアが来ることは確定と思った方がいいだろう。


「それが固有魔法だったら問題なかったのにね。」


 固有魔法だったらその人個人しか使えないものなので最大も最小もないから、神も生まれないということだろうか。

 がっつり魔法スキルの欄に【刻印魔法LV.1】とあるし、なんならLV.1と書いてある。固有スキルはLV.EXだ。


「そのロアって誰なの?また女の人みたいだけど。」


 またってなんだよ、またって!


「よく怒る。そして怒ったら面倒臭い。夜通しなんて当たり前。」


 言いながらレティは思い出したのかうんざりした表情だ。


「なんで怒られるの?」


「ん。ロアはコータの師匠。ロアは目立つの嫌いだから、弟子がそんな目立つスキル持ってたら怒る。固有スキルだったらあってもおかしくない。だけど魔法スキルにあるのはさらに目立つ。」


 そりゃ存在しないはずのスキルがスキル欄にあれば目立つだろうさ。

 そして今日もレティの口は絶好調だ。

 ロアが神だとは言えないし、いつもの村がどうのってやつも異世界から来たって言ってしまったから使えないからな。


「へぇ。コータの師匠ってことはその人も強いんだ。」


 またもや上手く?ごまかせたようだ。


 それからはやることもなくなったので適当に時間を潰してから眠りについた。

 はぁ。起きたくない。


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