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創造神の力で異世界無双  作者: TKG
異世界ディファード
61/221

光太vs勇者

 今、俺と勇者は鍔迫り合いになっている。

 剣同士がぶつかり合う前に結界は張り直された。

 久しぶりの剣術なので少し不安だったが、剣王スキルのおかげか問題なく動かせた。


「そんな貧弱ステータスでよく耐えられたな。まだステータスについて大まかにしかわからないんだ。何か秘密があるなら教えてほしいぜ。」


「そうだな。まずは自分と同レベルか高レベルの相手のステータスは信じないことだな。更に言うと戦闘職に限り低すぎるステータスもだ。」


 この世界に来てそんなに経ってないが、俺が思っていることを言った。

 突進した勢いを乗せた右上段からの袈裟斬りを背後のみんなよりも数歩進んだだけのほとんど勢いのない状態で容易く受け止めたのだ。

 余裕そうな笑みを浮かべているが、受け止められた瞬間は驚きが顔に出ていた。


「つまり、ステータスを偽装しているのか。俺の鑑定以上のレベルで。やけに素直に教えてくれるじゃないか。それは余裕か?俺が勇者だと知っているみたいだしな。勇者はこの世界の人間じゃないってことは常識らしいしな。舐めているのか?」


 一旦距離を取る勇者。余裕そうなのはどっちだよ。

 こいつ気づいてないのか?確かに、俺やこの勇者のような日本人顔の人間はこの世界では珍しいがいないわけではない。それが、勇者の召喚の影響であることは前に聞いた。

 しかし、気づかないものなんだろうか。俺なんてあからさまな日本人だと思うんだが。

 まあ、俺はテレビの情報なんかがあったから気づけただけでこいつの立場だったら気づかないのかもしれない。


「そうじゃないさ。俺はお前に聞きたいことがあるんだ。だから、俺だけ聞くのは不公平だと思ってな。おれも答えられることは答えようと思っただけだ。」


 それにそんなに余裕じゃなかった。どうも俺は自分の力を過信していたようだ。

 今の攻撃、制限解除を最大まで行った上で危うくはなかったが結構強かった。称号効果や剣王の超補正がなかったら危なかっただろう。

 このままこいつに策がなければ負けることはないだろうが、そんな事は有り得ない。ニヤついた顔がそれを物語っている。

 という事はこのままだと危ないかもしれない。


「殊勝な心がけだな。でも、俺が答えるか分からないだろ?」


 そう言って再び斬りかかってきた。

 答えるかどうかは別としても内容くらいは聞いてくれてもいいんじゃないのか?と思う俺がいるが、斬りかかってくるなら応対しないと仕方がない。


 今度はさっきの一撃に力を込めていたのとは違って、手数重視だが決して威力も弱くない怒涛の攻撃をしてくる。

 しかし、見えているステータスを完全に信じているわけではない、というか信じられないが、こちらのステータスの方が完全に上回っているし、剣王の行動補正もあり遅れをとる事はない。

 最初は拮抗していた剣戟も段々と俺が押してきている。

 そして強引に力を入れて振るった剣で距離を取る勇者。


「もういいか?そろそろ俺の話を」


「やるじゃないか。弱いなんて言って悪かったな。次はもう一段ギア上げていくけど途中で根をあげたりするなよ!」


 俺の話を聞け!

 見た感じさっきと同じ手数重視の剣撃だ。

 だが、その剣を受けて違うことがわかった。

 三つの衝撃が同時に同じ場所にやってくる。実質、三倍の威力になっているみたいなところはあるが対応圏内なので問題ない。


 しかしムカつくな。全く人の話を聞かない。

 イライラが剣に出てしまったのか、少し力が入ってしまい勇者を弾き飛ばす。

 宙を舞った勇者は綺麗に回転しながらスタッと着地する。

 いちいち格好いいのもムカつく。

 だが、さっきまでとは違い額から汗を流し余裕ある表情が崩れて驚きで開いた口がふさがらない様子だ。


「おいおい、今の力なんだよ。今まで手加減してたのか?ステータスを隠しているとは聞いたけどここまでかよ。」


「そろそろ話を聞けよ、神崎祐樹。それとも神童一とでも呼んでほしいか?」


 こいつのステータスを見てこいつがアイドルをやっていたのと同一人物だと確信した。

 こいつのアイドルの時の名前、つまり芸名は神童一で、本名は神崎祐樹だ。

 本名なんて知る機会はあまり無いが、こいつの場合はテレビの報道でバンバン出ていた。


「はっ!そうか、お前この世界の人間じゃなかったのかよ。他の国の勇者ってところか。だったら納得の強さだな。」


 やっと俺がこの世界の人間じゃないことが分かったみたいだ。

 思いっきり俺がヒントをくれてやったが。

 だってまず話を聞かせないと始まらないしな。


「いや、違うんだが。まあ、そんな事はどうでもいいんだけど、話聞く気になったか?」


「この世界にくる方法が勇者召喚だけとは限らないか。そうだな、次の俺の攻撃を全て受け切ったら考えてやるよ。」


 まだやるのかよ!しかも、考える止まりとかいい加減にしてくれ。

 というか、神崎のステータスを信じられない理由は二つ。

 一つ目はいつもと同じ理由で、まず俺の鑑定レベルが低いので信じきれないこと。

 二つ目は、神崎のステータスに固有スキルが表示されてないことだ。

 勇者召喚されたものは絶対に神から固有スキルを授かると聞いた。

 なので、どんな内容のスキルでもないのはおかしいのだ。


 さっきの複数回の同時攻撃は固有スキルの効果だろう。俺の認識速度を超えるような速さの剣撃を繰り出した可能性もあるかもしれないがその可能性は低いだろう。

 固有スキルがわからない以上、まだ他のスキルがあるかもしれないし、どんな攻撃をしてくるかもわからない。


 不意に使っていた剣を腰の剣帯に納める神崎。そして、


「顕現しろ、レーヴァテイン。」


 神崎が手を前に突き出しそう唱えると、神々しく光り輝く剣が神崎の手の中に現れる。

 それを神崎が握ると光は徐々に薄くなり、やがて消えた。

 その剣は赤と金の繊細で美しい模様が刻まれており、見るものの視線を釘付けにする。

 しかし、レーヴァテインか。確か伝説上のあれは剣かどうかは明記されてなかったはずだが。

 まあ、今のがゴブリンキングやオークキングの武器顕現と同じようなスキルの効果だったのならあり得る話だ。

 あれはスキルの持ち主の望む、更に持ち主に合った武器を顕現するスキルだ。

 神崎が望んだのならレーヴァテインをモチーフとして、望んだように効果の変質した、神崎に合った武器なのだろう。


 後で分かったことなのだが、確かに武器顕現という名称の同じスキルだったが多少効果が違った。

 神崎の武器顕現は固有スキルで、ゴブリンキングなどの武器顕現は特殊スキルだった。

 そして効果だが、違うのは特殊スキルの方は使用者が死ねば他者が扱えること。固有スキルの方は、使用者か使用者の許可した者のみしか使えないこと。また、使用者が死ねばその武器は消えることだ。


 レーヴァテインは美しくもあるのだが、一目でその強さも分かるようだった。

 更に神崎はスキルを使っていっているようで、今度は背中から半透明のゴツくて巨大な腕が四本現れた。

 あれは魔力で出来ているようだ。邪竜との戦闘後に手に入れた【魔力感知LV.1】のスキルの効果で魔力で出来ているものはある程度分かるようになった。


 更に変化していく。

 今度は三面の鬼の仮面が神崎の顔を覆うように現れた。


「ここまでするのはあの時以来か。流石に破邪顕正は使えないからこれが今の俺の本気だ。死ぬなよ?」


 死ぬような攻撃をしないでほしいとか当たり前のことを思ったりもしたが、この戦いはこいつの覚悟がどこからきているのかを知るためのものだ。

 逆に生半可な攻撃をされても感じた覚悟は俺の間違えだったかと思ってしまうかもしれない。

 破邪顕正とは、話の内容的にスキルなのだろう。多分、固有スキルだろうな。


 腰から下げていたマジックバックから四本の大剣を取り出して魔力腕に持たせる。

 この大剣は市販の鉄剣のようだ。

 その状態で何度目だったかの突撃をしてくる。


 自らの両手で持ったレーヴァテインでの脳天めがけての垂直斬りと、四本の魔力腕での左右袈裟斬り、逆袈裟斬りを少しの間隔をずらして行ってくる。

 その全ての攻撃が三度の衝撃で襲ってくる。

 神崎の今の強化されたステータスを見てもまだ俺の半分以下だ。それでもこの攻撃の連続は辛いものがある。

 今まで剣の修練を怠ってきたツケなのか、どう動けば良いのかは分かるのだが体がついていかない。

 今度はこちらが押されている。ステータスの差で無理矢理捌いていくが一対五だという事と、神崎の剣撃の鋭さに、ステータスのゴリ押しも少し無理があるようだ。


 俺のスキル頼りとは違い、かなりの鍛錬を感じる。

 少しのズレが段々と大きな隙となっていき、致命的なミスへと繋がる。

 少しずつ遅れていた対応に慌ててしまい、判断を誤ってしまった。

 レーヴァテインの上段からの垂直斬りを弾いたと同時に間に合わない速度で四本の魔力腕が襲ってくる。


 くそっ!ステータスでは余裕で優っているのに使わされてしまうなんて。

 今回は補佐目的以外で魔法を使ってないとはいえ、目の前の魔法という誘惑に負けて、剣を疎かにしていたツケが回ってきた。


 ガガガキキンッ!!!


 静寂。


 そこにあったのは皆が幻視したであろう斬り刻まれた俺の姿ではなかった。

 そこにあったのは周りを数本の土棒に囲まれた俺の姿と魔力腕の剣撃を弾かれた神崎の姿だった。

 神崎はすんでのところで止めるつもりだったようだ。

 俺の魔法が邪魔して弾かれてしまったようだが。

 神化を使った俺の目には止めようとしていたのがはっきりと分かった。


 そう、俺は神化を使ったのだ。使わされてしまった。

 神化を使えば確実に勝てる。なので魔法を使わなくても良かった。

 だが、今の戦いでは暗黙の了解みたいなものだったがお互い主として使うのは剣のみだった。

 なので負けを認める意味でも躱さずに魔法を使って受け止めた。


 途中から神崎は焦っていた。多分だがあの衝撃を重ねる攻撃や魔力腕なんかで大分魔力を消費していたのだろう。

 そして今の最後の攻防に全てを注いだ。

 神崎は膝をついて息も絶え絶えに座り込み、俺は息も切らさず立っている。

 この場面だけ見れば俺が勝っているように見えるが、本来なら俺の負けである。

 試合に勝って、勝負に負けた。みたいな感じだろうか。


 神崎が口を開く。


「俺の完敗だな。まだそんな奥の手を隠していたのか。約束通り話は聞くし、俺の答えられることは答えるよ。」


 そんなことを言う。


「違う。俺は今の戦いで魔法を使うだけに飽き足らず、使うはずじゃなかったスキルまで使った。今の戦いは俺の負けだ。」


「そうか。そういうことか。お前はまだこの世界で生きるってことの意味を分かっていないんだな。」


 神崎は、意図せずして俺の知りたかったことを語り出した。

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