念願の
やっとガレスが目覚めた。
アイリ達はギルドの用事は依頼の報告だけだったようで昼食を食べた後少し話して帰っていった。
依頼は昨日受けた依頼だそうで、達成して帰ってきてからそのまま報告に行くと混んでいるので次の日に報告しているのだとか。混雑を避けたい人はそうしているらしい。毎日依頼をやっている人は稀だと言っていた。冒険者は報酬がいいからだと。
そして、目が覚めてからのガレスの第一声。
「イテテッ。もうちょっと手加減しろよ、まったく。」
「おっ、やっと起きたか。こっちにも用事があるんだから時間取らせるなよ。」
グレイスの時間もあるし、リルの為に用意してもらってる料理のこともある。
「くそっ、他人事だと思いやがって。あの件だな。先にギルマス室に行っててくれ。」
「実際他人事だしな。先に行ってるから早く来いよ。」
何か用事があるようだから先にギルマス室に向かう。
まだあの部屋に行くのは三度目だが毎度登るのが面倒だ。
ギルマス室で待つ事数分、ガレスが入ってきた。
「待たせたな。それでどうだったんだ?ワイバーンが急に現れなくなったと言う報告は聞いてるが。」
「そうだな。その前に言う事はないのか?今なら許す余地はないが罪の重さを軽減する事はできるぞ。」
「な、なんのことかわからんな。お、俺としては竜族がここにいることが気になるんだが。」
「そうか。残念だな。薄々分かってるんじゃないか、ガレス。お前の筋肉も分かっていると言いたそうにピクピクしているじゃないか、気持ち悪い。」
「ん。キモい。」
「それやめた方がいいよ。生理的に受け付けないもん。」
話の序盤も序盤で撃沈しそうになるガレス。
本当に気持ち悪いのでやめてほしい。
「本当に分からないのなら説明してやろう。俺達はまずガレスの言った通りにワイバーンを探しに草原に向かった。」
ワイバーンを見つけるところまで話していく。
「そうしてやっとの事で見つけたんだがそこで俺達はある事実に気づいてしまった。」
あっ、また筋肉がピクってなった。
次やったら削ぎ落としてやろうか。
「それはお前がまた嘘をついていたことだ。」
「嘘なんてついてないな。目撃されたのは草原だった。」
「確かに草原だったな。ワイバーンがいたのは森だったけどな。俺が言いたいのは確かにそれもだが、一番はワイバーンの境遇についてだ。別に同情するわけでもないがあいつらは棲家を追い出されただけだった。それをさも人間を襲いにきているような言い方で話しただろう。あの状態だったらもし襲われたら人間の方が悪いと俺は思うがな。」
棲家を追われたワイバーンがまた追われそうになってそれに反撃しても仕方のないことだ。
「まあ、倒すことに文句があるんじゃない。俺だって出会い頭だったら戦いはする。俺が解せないと思うのはお前が嘘をついていたことだ。いや、嘘はついていないかもな。死地に追いやるのに真実を述べなかったから、か。まあ、今後自分達でも情報収集しなければならないということを学ぶ良い機会になったよ。」
バレる事は想定の内だったのだろう。
まだ平然とした様子だ。
今言ったように嘘はついてないからな。
「そうか。学ぶことがあってよかったな。それで邪竜の素材はどうしたんだ?」
ムカつくがぐっと我慢だ。今からが本番だ。
「だがムカついたんでな、一矢報いることにした。ガレス、その素材をどうするつもりだった。」
「はぁ?そんなの決まっているだろう。必要な奴に売るだろ?」
「勿論、ワイバーンも邪竜なんて言わずもがなだが高価な素材だ。買い手も限られる。冒険者で言えば上位ランクの冒険者だろうし、後は貴族や大商人相手の商売になるだろう。」
「な、何を言っているんだ?ま、まさか。」
「そのまさかだよ。俺達はワイバーンを倒さずに元の場所に返してきた。よく見ればこのワイバーンの依頼書もワイバーンからの被害が出る前にどうにかしてくれとしか書いてないしな。」
一応、形式として渡されていたのだ。
「だからワイバーンの素材なんて存在しない。だけど、依頼は達成だろ?どうにかしたからな。」
悔しそうな表情をしているがこの程度では終わらない。
「じゃ、じゃあ、邪竜はどうしたんだ。そっちには討伐と書かれているはずだ。」
「それは私から説明しましょう。」
後ろに立っていたグレイスが言う。
この部屋にはガレスの仕事机の他にソファが二つテーブルを挟んで対面する形で置かれている。
ソファは三人掛けで座っているのは俺、クオ、リルでレティは俺の膝の上だ。じゃんけんでレティが勝っていた。
無理すればグレイスも座れなくはないが立っていると頑として譲らなかった。
「邪竜はコウタ殿が来られる直前に我々に被害をもたらしました。これで掟により断罪の対象になりましたので我々守護隊が邪竜四体を討伐致しました。ですので、邪竜の素材の所有権は我々にあります。」
「なっ!じゃあ、コータは邪竜の素材を全く持ってないのか⁈」
「いえ。それが行われた際に指揮をとっていた姫様が危険に陥りそれを救出したのがコウタ殿達です。その功績を称し、邪竜の魔石のみコウタ殿達にお譲りいたしました。」
「し、仕方ない。そ、それだけでも。」
「無理だな。これは俺達が使うからな。」
「そ、そこをどうか頼む!このまま何も出せませんじゃ済まないんだ、大口の相手なんだ!」
「そっちの事情なんて知ったことではないが、しょうがないな。グレイス、どうにかならんか?」
「そうですね。我々でも稀にしか手に入らないものです。コウタ殿との取引では二倍の値段での取引が約束されていたとか。竜王様を説得するためにもそれ以上は出していただかないといけませんね。二.五倍でどうでしょうか。」
「そ、そんなに出せるわけないだろう!」
「では、交渉決裂ということで。別に私共に損はないので。」
「わ、わかった。それで手を打たせてくれ。」
打ちひしがれるガレス。
「はっはっは。どうしたのだね、ガレスくん。そんなに暗い顔をして。今までの自分の行いを悔い改めるんだな。」
「ん。本当に手に入るかもわからないもので取引するからそうなる。」
俺もなんで手に入るかも分からない確実性のないものの買い手を見つけていたのか不思議だった。
レティ曰く、本来ならば竜族が邪竜を倒すことなどほとんどあり得ないことらしい。そうなると邪竜を倒すのは冒険者の可能性が高くなる。これは王国が動かない限り確実と言ってもいいらしい。なので、ほぼ確実に冒険者ギルドに素材が入ってくる。
今回に限っては別におかしなことでもなかったみたいだ。
しかし、それでも今回のようなケースは少ないがあるので手に入ってから捌かなかったガレスはアホだと言っていた。
被害が出てないのに討伐依頼が出ているのは素材の買い手がいるからだとも言っていた。
「これで約束の四つの依頼も終わりだな。もう面倒な依頼を俺達に回すなよ。これからは地道にコツコツとランクを上げていくんだからな。」
「では、邪竜はどこに出せばよろしいでしょうか。」
「あ、あぁ。この裏に倉庫がある。取り敢えずそこに出してくれ。」
その後倉庫に移動して、グレイスが持ってきていた特別製のマジックバック四つからそれぞれ邪竜を出していく。
クオが出していたら、それも面倒事の種になるかもしれないからな。あまり大きすぎるのはよくない。
マジックバックは大きさに関係なく収納できる。収納方法は、片手をマジックバックに触れて、もう片方の手で対象を触りながら収納したいと念じれば容量さえあれば収納される。
特別製とはマジックバックの容量が極端に大きいだけだ。
「よし、それじゃあ俺たちは帰るから。」
念願の仕返しを成功させて俺の顔は満足げに笑っていることだろう。
後日、俺が悪魔のような笑みを浮かべて出てきた後からギルマスが顔面蒼白で出てきた。という噂が流れ事実かもしれないがなんとも釈然としない気持ちになるのはまた別の話だ。
受付で俺はゴブリンキングとオークキングとワイバーンの依頼達成報酬を、グレイスは邪竜素材の売却金を受け取った。
実は邪竜の素材売却額は予想出来ていたのでフロード様に貰ってある。なので今貰った分はグレイスがそのまま持って帰ることになっている。
邪竜はただでさえ素材の値段が高いのにそれを二倍以上の額貰っているのでおかしいことになっている。
ミスリル貨や神金貨なんてこんなに早く拝むことになるとは思わなかった。
少し長く話していたのとガレスが伸びていたのでもう四時近い。
ギルドを出てから宿の前でグレイスとは別れた。当初の予定よりだいぶ遅くなったからな。
まだ夕食には早いので部屋で休むことにした。一週間分の宿代を前払いしておいた。
今日はリルの旅立ちと俺達のパーティへの加入を祝してささやかながらの歓迎会だ。
存分に美味しい料理を食べてもらおう。
貨幣の種類と価値
鉄貨1枚→約100円
鉄貨10枚→銅貨1枚→約1,000円
銅貨10枚→銀貨1枚→約1,0000円
銀貨10枚→金貨1枚→約10万円
金貨10枚→白金貨1枚→約100万円
白金貨10枚→ミスリル貨1枚→約1000万円
ミスリル貨10枚→神金貨1枚→約1億円
神金貨10枚→緋金貨1枚→約10億円
光太達の所持金は以下の通りです。
神金貨1枚 ミスリル貨3枚 白金貨10枚
金貨18枚 銀貨7枚 銅貨14枚 鉄貨5枚
10を過ぎても繰り上げてないのはわざとです。
大金貨と設定しておきながらすっかり忘却の彼方でした。
なので、大金貨をなくして新たに緋金貨を設けました。
申し訳ありません。




