不用意な言葉
わいわい騒ぎながらやってきました冒険者ギルド。
昼前にはパパッとガレスの野郎の吠え面を拝みたかったのだが、さっきの騒動でもうがっつり昼時だ。あの騒動の最中にゴーンゴーンって鳴ってたから今は十二時過ぎだろう。
この時間帯のせいなのかギルド内に人は少ない。
「やっぱりこの時間帯は少ないねー。」
「ん。面倒なの少なくていい。」
「よく言うよ。この前も二人で町の中で人の山築き上げてたじゃない。」
「あれは向こうから来てしつこかったから仕方なくだよ。」
「遠目で少しだけ見ましたけど、最早二人のショーでした。」
「えっ?そんなに物騒な町なの?というかみんな目立つことしすぎじゃないかしら。」
よく言ってくれたリルよ。だがこいつらに言っても改めることはないと思われる。
ここで冒険者ギルドの構造について説明しようと思う。
誰にだって話だが、俺も数度しか来ていないので俺自身が確認するためでもある。
まず入って来て正面奥にズラーと十人ほど様々な感じの美女、美少女が並んでいて、そこが受付になっている。
時々、ベテランのおばさまがいるから要注意だ。
後ろを振り返ると例の勇者様の伝えられたランク別に分けられてる依頼内容の書かれた紙が貼られた掲示板がある。
流石に高くなればなるほど依頼は少なくなる傾向にあるようだ。
そういえば、一度もまともな依頼を受けていないな。
そして次に入って来て右側奥には素材の買取用の受付がある。因みにむさいおっさんなので詳しくはパスだ。
これは左側にも共通することだが入り口から見て両サイド手前奥には二階への階段が設置してある。
そして右側だが商談スペースみたいな感じになっている。朝はパーティ募集の為の待機場所として使われたり、昼は依頼主との相談で使われたりしているらしい。
俺はそんなこと知らなかったのだが、そこの張り紙に商談スペースの使用上の注意と書かれた紙が貼ってある。
ここに酒を持ってきて呑んだくれる奴がいるんだと。最後にはギルドマスター仕事してください!と書かれているので、あの筋肉はしょっちゅうサボっているのだろう。最初にいた場所もここだったしあの時は酒瓶を持っていた。
因みに酒場は二階である。
しかし、最後の大きな鐘、つまり夕方六時を過ぎると下のこのスペースも酒場として使用されるらしい。
二階は通り過ぎただけなので詳しくは知らない。酒場があることぐらいしか分からなかった。
三階には会議室やギルド職員用が泊まれるようの個室、後はギルドマスター室もこの階だ。他にも部屋はあるが似たような部屋だろう。
俺が知っているのはこのくらいである。
そして意図的に見ないようにしていたが、商談スペースでまたしても呑んだくれて業務放棄している筋肉と爺がいる。
あちらも気付いたようでこちらに近づいて来ようとして動きが止まる。
何故かめちゃくちゃ驚いている感じなんだがそんなに驚くようなことがあっただろうか。驚きすぎて酔いも覚めたと言いたそうな表情をしている。
いち早く爺が元に戻りガレスに何やら言っている。それを受けたガレスは何やら焦った感じだ。
「久しぶりじゃな、コータに嬢ちゃんたち。それに珍しい客もいるようじゃ。」
爺さんは面白そうに目を細める。
「なんで婆さんたちが一緒にいるんだよ。コータ達と知り合いだったのか。」
ガレスの一言でこの場の空気が凍った。
「死にたいの、ガレス。すぐにでも殺してあげようじゃない。」
「とっておきを使ってチリも残さずに消しとばしてあげましょう。」
「ガレスはいつからそんな口を聞けるようになったのー?成長って恐ろしいねー。」
アホだなこいつ。女性に対して婆さんはないだろう。
確かに年齢的にはそうかも知れないが見た目は俺とそう変わらんぞ。エルフなんだからまだまだお年頃なのだ。年は132と言っていた。
エルフは150歳くらいまでは付き合ったりすることもほとんどないらしい。早い人はそのくらいですることもあるようだ。
っいうか、この話し方からしてガレスのことは昔から知っているみたいだ。
ガレスは顔を真っ青にしているが、ガレスの言葉にショックを受けているのが他にも三名。
リルは目に見えてショックを受けており、クオとレティは神であることを明かすわけにもいかないので静かに落ち込んでいる。
「婆さんだって。じゃあ、わ、私はどうなるのかしら。バ、ババァなんて言われちゃうのかしら。」
因みにリルは164歳だ。
「筋肉破裂するといい。むしろ私が破裂させてあげる。」
そう言う二人とは違い、クオはこちらにトコトコ寄ってきて、
「ね、ねぇコータ。リルがババァならクオは何ババァなのかな。そんなこと言われたの初めてだよ。結構くるものがあるよ。」
小声でそう問うてきた。
一番傷ついていたのはクオのようだ。
見上げて少し涙目でそう言ってきた。可愛いがこんな落ち込んだクオなんて望んでません。
クオは天使なのにババァなんて言っちゃいけません!
よし。俺の天使をこんな顔にさせたこの筋肉、絞めよう。
「そんなことないぞ、クオ。ババァなんかじゃないし、クオは永遠の天使だからな。あんな筋肉の言うことなんて気にするな。」
撫でて安心させる。
事情を知らないガレスは何故かこちらの方が暗い雰囲気になっている事に驚いているが、そんな事は知りません。今更知らなかったで済まされる問題じゃないんです。
でもバレるわけにもいかないので、とどうしようか迷っていると、
「コータ殿、話が先に進みそうにないので後にしてもらってもよろしいですか。それに姫様、こんな事は竜族である限り今後も起こり得ます。こんな事で落ち込んでいてはこの先やっていけませんよ。とはいえ、姫様を直接的にではないとはいえ落ち込ませたのは許せることではありませんが。」
くっ!仕方ない。当初の目的を忘れるところだった。
「確かにこの筋肉をただの肉塊に変えてしまったら何しにきたのか分からないな。仕方がない。ミンチにするのは今度にしてやる。」
「なっ!なんでお前が怒ってるんだよ!」
ちょっと誤魔化しを入れることにする。
「当たり前だろう。こんな美少女達に対して酷いことを言った挙句に、友達を馬鹿にされて落ち込むクオとレティ。これだけで充分だろ?」
クオとレティは俺と歳はあまり変わらない設定なのでそういうことにした。
「それにアイリとは耳を触らせてもらう仲なんだぞ。そんな耳友を馬鹿にされて黙ってられるか!」
「なっ!何を言いだすかと思えば今言う必要ないでしょ!」
「嫌なのか?」
「別にそんなに嫌じゃない…って何言わせるのよ!嫌に決まってるでしょ!あんな無理矢理やらされて。」
「婆さんそんな趣味があったの、ゴハッ‼︎」
殴り飛ばされるガレス。
あーあ。ついに伸びてしまったよ。
あの巨体を、しかも仮にもギルマスを一発って。
この姉妹にワイバーンも邪竜もやらせればよかったんじゃないか。
それからガレスが目覚めるまでの一時間程時間ができたのでギルドの酒場でみんなで昼食をとることにした。
爺さんはそそくさと帰っていったが、魔法学園見学は三日後にしてもらうことにした。
もちろんガレスは床に放置である。




