竜王との遣り取り
今回は少し短いです。
グレイスに案内されたのは特に装飾などはないが堅牢そうな扉の前だった。
竜王がいるというぐらいだから謁見の間みたいな所に連れていかれると思ったのだが違ったようだ。途中、すごく大きい宮殿内で見たものの中で一番豪奢な扉があったのであそこが謁見の間なのだろう。
「こちらに竜王様とフリーズ様、オリヴィエ様がいらっしゃいます。では、開けますね。竜王様、姫様とコウタ殿達をお連れいたしました。」
ノックをして確認を取るグレイス。
すると中から端的な厳格そうな声が聞こえてきた。
「入れ。」
「失礼します。」
グレイスの後に続いて入っていく。
中にはフリーズの他に青髪の壮年の厳格そうな男性と金髪を腰まで伸ばしたおっとりしてそうな、リルをお淑やかにして大人にしたらこんな感じだろうという美人の三人がいた。
「では私は外で待機しておりますので。」
グレイスは俺達を残して出ていった。
「お前達が邪竜を倒したというもの達か。私はフロード・ユニスト、竜王をやっている。今回は邪竜を倒してくれて感謝する。掟があるとはいえこのままでは王国との関係に溝が出来ていたかもしれない。」
軽くだが竜王は頭を下げてきた。
ラノベはよく見ていたが頭を下げられる偉い人は善政を敷いているとか、良い王だとか言われていたので鵜呑みにするわけではないが賢王なのかもしれない。
まあ、上位種族に至っているものが多く、更にバトルジャンキーが多いらしい竜族をまとめられている時点でそれはわかるようなものだが。
「いえ、仕事でやっただけですのでお気になさらず。」
「話はグレイスから聞いている。感謝の印に手を尽くそう。別の話になるが、すまないがステータスを見させてもらった。一応は王として確認しておかなければならないからな。」
おぉ、ありがたい。これでガレスに一泡吹かせてやれるな。
まあ、自国内に邪竜を楽に討伐するような人族がいて目の前にいるなら確認しないなんて愚王もいい所だと俺も思う。別に重要人物でもないし初対面だしな。
本当のステータスが見えているとも思えないし別に怒るほどのことでもない。
「なっ!父様どういう事なのですか!グレイスから素性は探らないように話があったはずです!もし、鑑定するにしても確認を取ってからでも遅くはないはず!」
「リル、落ち着け。王として確認することの必要性は分かるつもりです。構いませんよ。」
「すまないな、リルエル。これは今回必要な事なのだ。だが、私の上位鑑定でも偽装が解けないとはな。その余裕はそれ故か?」
鑑定じゃなくて上位鑑定?
フリーズが相当驚いているみたいだし、龍に至っている竜王が言っているのだから結構あり得ないことなのかもしれない。
しかし、そんなに鋭い目で見ないでください。
何者とも分からない奴がその実力も分からなければそうなるのも頷けますけど。
「確かに見られることはないとは思いましたが、鑑定する必要性を感じたのも本当です。ただ、自分から見せるようなことは出来ませんが。」
数秒間鋭い目で内心を探ろうとするように見つめられ、表情を崩しそうになったがなんとか我慢して目を見返し断固とした意思表示をした。
だってこの数秒間我慢することで面倒事に巻き込まれないなら我慢するよ。
神由来のスキルとかバレたら面倒事確定だからな。
「まあ、自分のステータスを隠すのは実力者なら当たり前のことだ。人族で邪竜を倒せるほどの腕を持つならそのくらいのことはやるだろう。それが異常なくらいなことは置いておいてな。別にステータスを見せろと言っているわけではない。確認できなかったのは私が未熟だったからに他ならない。」
龍が未熟だとかあり得ない話だし思い上がるわけではないが、この場には龍以上の存在が三人いるからな。
「本来ならば邪竜を倒してくれた恩人を疑うような失礼極まりない真似はしないが。いや言い訳だな、すまないとは思うが今回は事情があってな。リルエル本人ですら知らない真実に関わることなんだ。信頼できるものにしか教えることは出来ない。リルエルは信頼しているようだが私達はまだ君達の事をほとんどしらない。」
俺からしてみればその秘密を俺達に明かす事自体が謎だ。
「光太は分かってないと思うけど、私とクオ様は最初に会った時から理解している。鑑定できない時点で気付いているはず。今回の話し合いは釘をさす為?」
クオとレティは何かを知っているようだ。
特に表情を変えないことからレティの言ったことはあながち間違いではないらしい。
鑑定できないってことは偽装又は隠蔽のレベルが高いことを指す。それは必然的に鑑定も高いのだとか。
偽装、隠蔽のレベルが高いと鑑定のレベルが高いのは結構当てはまるらしい。
しかし、リルは結構驚いている。
そりゃそうだろう。自分でさえ知らない秘密を今日会ったばかりの人物が知っているというのだから。
「確かに最初は言いふらさないように釘をさそうと思っていたが考えを改めた。私がステータスを見れない時点でな。その後の攻防は悪いが試させてもらった。あそこで折れていたら考えものだからな。まだ負けるつもりはないが今後私より強くなっていくだろう。そんなもの達と友好的にしておく他ないであろう。」
言いふらしません!
どんな事か知らないが言いふらしたりしたらどうなるか怖くて仕方ありません!
「それに竜族はある一定時期を迎えると見聞を広げるために試練という名の旅をする事になっている。リルエルの場合はある理由から見送っていたのだ。本人はフリーズの過保護などと思っているだろうが。そして私は信頼する事に決めた。丁度良い機会でリルエルも信頼しているようだしな。だからリルエルを連れて行ってやってくれないか。そして守ってやってくれないか。」
「後ろめたいことがあるわけでわないけどステータスを開示しないで信頼してくれるならそのくらいのことはやらせてもらいます。まだ守れる力があるなんて嘘八百述べているようなものだけど、リルが付いてくるなら絶対に傷つけさせないことは誓います。」
力強く断言できないのは悔しいがそれは俺が早く強くなればいいだけの事。
「仲良くしておくためにそちら側が信頼してくれるという事はわかった。その代わりにリルエルの試練の手伝いをすることもわかった。だけどそれなら光太にもリルエルにも真実を話すべき。これから旅をしていくなら何かの拍子に覚えることもあるかもしれない。」
覚える?それが真実と関係のあることなのだろうか?
「そうだな。もう十分リルエルは強くなった。真実を伝えても良い頃だろう。今回話し合いもその為だからな。」
そうして語られた真実は竜族の中でも秘密とされてきた、他の種族の中の竜族の常識を覆すような、伝説としてでさえ細々としか伝わっていないような真実だった。
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