対水龍
「お主達好きじゃのう、その鎧の魔法。前も、その前も使うておうたわい。そうじゃのう、己より強者と戦うのに持久戦は下策じゃから良いのではないかと儂は思うがの。」
それも場合によりけりだとは思うけどな。
でもまあ、強者と戦うほとんどの場合持久戦にはなり得ないとは思う。
鎧シリーズは持続型なので結構魔力消費が激しいからな。持久戦となると向かない魔法でもある。
「しかし残念じゃったな。儂は水龍、お主の纏った火種では相性最悪じゃ。」
「なっ⁈」
火種と言われ悔しそうにするラディック。
「一々気にしてる暇ないぞ、ラディック。大体なぁ、お前の水遊びなんて俺の炎で蒸発させてやる!くらいの威勢をだな。」
「ほう、儂の魔法を水遊びとな。言うではないか、小童。」
「いやいや、今のはラディックの姿勢に対して指摘しただけであって。水龍の魔法をそんな風に言う馬鹿いるわけないだろ。」
「もう準備は出来たようじゃし、早う攻撃してこんか。その後に儂の魔法で好きなだけ水遊びさせたるわい。」
はぁ、人の話聞けよな。
なんでいつもいつもこう悪い方に転がるのか。
いや、結局同じような気もするけど気持ちの問題だ。
なんか上手く行ってる風な方が体も軽い感じがしそうなイメージだ。
あ、駄目だ。今の俺の思考、全部仮定の話でアホっぽさ全開だな。
でも、気持ちが大事だとは思う。
ほら、あきらめたらそこで試合終了とか聞いたことあるだろ?
この世界だと諦めたら命終了だがな。
「いやだな。って事でティア、一発で決めてくれ。」
「それはまた難しいことを言ってくださいますね。『次元断首』!」
あー。ディメンションスラッシュも遂にギロチンにまで進化したんだな、うん。
「なんて魔法を使うてくるんじゃ、この小娘は!」
「このくらいでないと効果はないと思いましたので。」
なんだか口と現状が真逆だな。
口では驚嘆したような水龍だが余裕そうな表情だ。竜の顔の表情は読み取れないけどそんな感じがする。
だが一転、ティアは余裕を装ってはいるが額に汗をにじませ拳を強く握っている。今の魔法に相当量の魔力を注ぎ込んだんだろうな。
「力を制限しているとはいえ久し振りに自分の血なんて見たわい。さて、今度は儂の番じゃな。」
「ほら、その首の傷治すからもう一回俺たちの番ってことでどうだ?」
「儂にも攻撃させんか!でないと面白くないじゃろう!」
なんだよ、面白さなんて最初から求めてないから!
大体さ、リルの言葉通りなら俺たちの相手は守護隊員でさらに力が制限されているはずだったんだ。
今更負けるつもりはないが、リルの奴どう言うつもりで俺を騙したんだ?
というよりも、あの時点で力を制限しているとはいえ龍に勝ってこいと言われていたのか。
それに何故か戦う前からデートの心配してたし…
なんで俺が龍に勝つことを疑ってないのか不思議なくらいあるな。
でも、それだけ信じてくれてるなら俺だって勝ちへの執念が芽生えるってものだ。
「ラディック!しっかりと踏ん張れよ!今からお前が受けたことのない、生半可じゃない攻撃が来るぞ!」
「心配するでない、まずは小手調べ程度じゃ。『ウォータートルネード』」
そりゃそうか。
俺とラディックに迫る二つの超巨大な水竜巻。
ウォータートルネードも龍族が使えばこれだけ大きくなるんだな。
こんなのどう対処しろっていうんだよ。
どうしたって濡れちゃうだろ!
俺が水に滴ってもいい男にはならないから!
「って事で返却させてもらいます。『ゲート』」
「なんて無茶な魔法の使い方を…お主、さてはアホじゃな?」
失礼な。
返却期限が迫ってたから急いで返却したのにアホとは。
俺はただ迫り来る水竜巻を転移ゲートで水龍に御返却しただけだ。
まあ、返却したら即掻き消えたんだがな。自分の魔法でダメージを負う馬鹿はそりゃいないか。
一方のラディック側だが、ティアとキャロルが竜巻の動きを止め、ラディックが溜めの一撃で何とか消し去ったようだ。
本当に小手調べだったのか大きさだけで強力な魔法ではなかったからな。
「俺、いや俺たち今日勝ちに来たんだよ。だから俺も本気で行かせてもらうぞ?」
「ハッハッハ、あんな魔法を使うた癖に魔力切れの兆しも見せんとはの。今年の当たりはどうやら儂じゃったようじゃな!」
しかしあれだな。
このまま前衛として戦っていても有効打を与えられる気がしない。
さっきのティアの攻撃もこちらが万全の状態で、尚且つ相手が何の準備もしていなかった上でのかすり傷程度だったのだ。
子供相手に大人気ないなんてレベルじゃないぞ。
制限する力の大きさを間違っているんじゃないか?
「さあ、お主の本気儂に見せてみるのじゃ!」
「『氷雷鎧』その他諸々エンチャント詰め合わせセットだ!」
「適当に魔法を使うておるが無詠唱に魔法の同時行使。さてはお主、並列思考を持っておるな?」
いやだね、お年寄りの蓄えられた知恵は。
「そんなスキル知らない、な!」
「『水の羽衣』。こんなに魔法を振り乱れさせてよくしらを切れるのう。」
はっはー。そう来ると思ってました!
俺が適当に四方八方から放った魔法の数々を水龍は水の防御壁を全身に纏うことで防いだ。
だったらやることは一つだ。
「待ってました!『かみなり』!」
「ぬぅっ⁈」
ピカッ、チューーー!ってな。
1○万ボルトの方が良かっただろうか?
「やっぱり水相手に戦うなら基本戦術だよな。」
「ナッハッハ!やはり面白いのう!儂ももう少し本気で行かせてもらおうかの!」
うっわぁ。攻撃されて喜んでる…
ヤバイ人だよ、この人。
もうきっと付ける薬もない、どんな天才な医者でもお手上げ状態な人ですね。
「『バインドレイン』『ボトムレススワンプ』。この魔法からどう対処するのか見ものじゃな。」
「なんだ、この雨!どんどん纏わりついてくるぞ⁈」
「キャッ!足が沈んで!」
「くっ。『隔たりを!イソレーションルーム』!」
初動で遅れてしまったラディック達は纏わりついてくる雨に足を取られる沼の魔法に苦戦していたようだが、すぐにティアの魔法、俺のスペーシャルイソレーション的な魔法で防いだみたいだ。
「『キノコチックな岩』『アイスフィールド』!」
かんっぺき!そんな魔法喰らいませんね!
俺はと言うと多少の遊び心を入れたキノコみたいなただの岩で雨宿りを、あとは沼なんて凍らせてしまえば深さなんて関係ない。
まあ少しの失敗としては氷が多少滑るくらいだな。
地面が土だったから水龍でも底なし沼なんて作れたんだろうけど、地形を生かした魔法か。
勉強になります!
「お主は大きな魔法に頼りすぎじゃて。そんな大魔法ばかり連発しとるとすぐに魔力切れになってしまうのじゃ。」
「確かに。まださっきの分が回復しきってなかったからもうあと半分しかないな。大切に使わないと。」
ゴクゴク、ぷはぁ!
うん、不味い!
初めて魔力ポーション飲んだけどなかなかの不味さだな。
良薬口に苦しとは言うけど、現代の薬がどれだけ良心的だったのかと思うくらいだ。
無くなってわかるって本当だったんだな。
「微々たるー、って感じだな。まあいいや。」
「そうじゃったか、お主がフロードの小僧が言っておったウチの姫君を連れて行った人族か!これはまた面白い人族に目をつけたものじゃて!」
フロード様が小僧だってさ。
この爺さん龍、結構なお偉いさんだな。きっと何度か聞いた長老とか言われている人たちの一人だな?
今までの魔法名の間違いをここで訂正させていただきます。
光太の魔法なのですが、
スペーシャルイソリューション
↓
スペーシャルイソレーション
隔離のisolationの読みを誤認識していました。
色々な話で出したいたので予定している一斉修正の際に直そうと思います。
ご了承の程宜しくお願い致します。




