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創造神の力で異世界無双  作者: TKG
異世界ディファード
212/221

帝国の目的

 

「……レティ、ありがとな。」


「ん。私の方こそ悪かった。」


「レティは何も悪くないさ。レティの手を煩わせることになったのも逃してしまったのも俺の落ち度だ。」


 本当に。

 大毅とかいう男、アイツに俺の攻撃は一度も当たらなかった。

 それにスペーシャルイソリューションをどうやって突破してきたのかだって定かではない。

 アイツのスキルなのか、はたまた高ステータスで無理矢理こじ開けてきたのか。


「悪いけど拘束させてもらうぞ。」


「………好きにすればいい。」


 この子どうしようか。

 今は何故か大人しいが、自己空間とかいう固有スキルの中に逃げ込まれたら面倒だからな。


「私に任せて。私の言葉の後にはいと答えて。いい?」


「分かった。」


「貴方は私の許可なくスキルの使用ができない。」


「…はい。」


「貴方は私の許可なく私の指定した領域外に行くことができない。」


「…はい。」


「貴方は私に不利益をもたらす情報を他人に伝えることが出来ない。」


「…はい。」


「以上をもって貴方の安全を保障することで契約とする。『コントラクト』」


 スキル?

 レティと敵の勇者らしき少女を淡い青い光が包み、次第にそれは鎖のようになりやがて二人に吸い込まれるように消えていった。


「これでもう安全。この子は私達に危害を加えることも、不利益をもたらすことも、逃げることもできない。その魔法を解いても大丈夫。」


「そっか、ありがとう。」


 ティア達を覆っていたスペーシャルイソリューションを解く。


「コータ、大丈夫なのですか!」


「どこ見てたんだよ。敵の攻撃なんて一度も受けてなかっただろ?」


「いや、途中から目で追うのも難しかったから。どうなってたか分からなかったな。」


「そ、そうだね。試練を前に自信をなくしちゃいそうだよ。」


 あー、そんなにペタペタ確認しなくてもどこも怪我なんてしてないから。

 もししていても回復魔法なんて便利なものがあるんだし。

 それに剣主体で戦っていたこともあって魔力も7割ほどは残っている。

 二重のスペーシャルイソリューションに、エンチャント、氷雷鎧。そこまで魔力は食わなかったがアースアローレイン。

 魔力を使ったのはこのくらいだ。

 ああ。あとは今も常時展開している空間把握だな。

 そう言えば空間把握にも引っかからなかった。この少女のスキルのように違和感さえなかった。

 本当に謎だらけな男だ。


「それで貴方のお名前を教えて頂きたいのですけど。」


「…秋月静。」


「シズカですね。貴方の処遇ですが、コータに一任しようと思います。」


「え、俺?いやいや、ティアじゃなくてもカレン様とかまだいるだろ?俺では情報なんて聞き出せないと思うけど。」


「少し失礼しますね。ここから先はかなり国家機密的なお話になりますがキャロルとラディックはお聞きになりますか?」


「選べるのなら聞きたくないですね。」


「わ、私も出来るなら…。」


 なるほど、勇者の話か。

 さっきの敵と俺の会話はスペーシャルイソリューションの効果で聞こえていなかったはずなので、国家機密たる勇者の話は聞かせない方がいいのかもしれない。

 目線をこちらに送ってくるティアの意図を汲んで、二人の周囲のみにスペーシャルイソリューションを掛ける。

 俺たちを囲んでもいいのだが、またいつ敵が来るか分からないからな。


「それでは改めて。コータ、シズカは情報なんてもっていないと思いますよ?」


「どうしてそう思うんだよ。」


「目の前でこんなことを言うのは少々気が引けますが、シズカは置いていかれたのですよ?敵に情報をそう易々と渡すとは思えません。情報を持つ人間も然りです。」


 そうかもしれないが。

 でも何かあるかもしれないだろ?

 自分の命を狙っている相手にその対応は流石にどうかと思うぞ。


「それに戦闘中何やら会話をされていたようですが、あんなコータのドヤ顔はなかなか拝めません。何か情報を手に入れたのではないですか?」


「俺そんなドヤ顔だったか?まあ一応、敵がゼスティル帝国だってこと、どういうわけか勇者を複数人保有していること、敵の頭数がそこまで多くないことくらいだな。


 最後のは本当かどうか分からないが、あの男が助けに来たときに言っていたことだ。


「いや、フル強化した俺の攻撃が一切当たらなかったこともだな。」


「コータ…」


「今落ち込んでも仕方がない。あとで私を貸してあげる。存分に甘えるといい。」


「……そうだな。」


 今は俺が落ち込んで話を先に進めなくするのは愚行だ。

 レティの言う通り反省は後だ。


「そうだな。じゃありませんよ!私に甘えてください!」


「はぁ?何の話をしてるんだよ。それで秋月だったか?正直、ティアを襲った仲間ってだけで俺は許せないんだけどな。」


「それは違う、コータ。」


 それからレティは神界で得た情報を聞かせてくれた。


「静はスール王国に召喚された勇者。」


「スール王国。帝国のさらに北西に位置する小国ですね。あまり良い噂は聞きませんが。」


「スール王国の貴族はこの世界で一、二を争うほど選民意識が強いことで有名。静は召喚されてから王女に酷い扱いを受けている。」


 だからこの世界に恨みを持ってティアにそれをぶつけたのか?

 それとこれとは話が別だろ。


「話は少し変わる。帝国はかねてよりの宿願、世界征服を勇者召喚で召喚された男をきっかけに動かし始めた。その男の名前は佐久間大毅。さっき逃げた男。」


「あの男が帝国が召喚した勇者なのか。それでどうきっかけになったんだ?」


 勇者が勇者と呼ばれるのは神から与えられる固有スキルと異世界人たるステータス上昇値の補正の入りやすさだ。

 この世界の人々の中から現れる英雄と呼ばれる人たちの方がよっぽど強いので、ただ勇者なだけではきっかけにはなり得ないはず。


「この男が神に望んだ固有スキルは話術、属性強化、魔法適正。この固有スキル話術は相手に少しだけ疑いを抱かせない程度のもの。本来そこまで強力なスキルじゃない。」


「じゃあ、そのほか二つが原因なのか?」


 とてもそうは思えない。

 属性強化の方は、アイツが俺の攻撃を躱すときに使っていた同化、纏、アシストとか言っていたやつだろう。多分、属性と言葉通り同化したり纏ったり、アシストさせたりして自分を強化する類のスキル。

 魔法適正はどの程度かは分からないけど、魔法属性のへの適性が持てるっていうスキルだと思う。

 このどちらにも世界征服なんて大業に踏み出す何かがあるようには思えない。


「違う。帝国は話術スキルを使って他国の勇者を取り込んだ。特にこの世界に連れてこられたことへの不満が大きい勇者を選んで。」


「弱みにつけこんでってことか?でもこの世界に連れてこられた恨みにつけこんで帝国に手を貸すよう仕向けるって矛盾してないか?」


「その矛盾を感じさせなくするのが話術スキル。本来技能スキルに属する話術が固有スキルになったことでその効果は多少大きくなっている。そして人は弱っている時、信じたいものを信じてしまう。」


 まあどこか納得できないが、その納得できない部分が話術スキルの効果なんだろうな。


「話を戻す。静は帝国に利用された勇者の一人。召喚されてから酷い扱いを受け、その後は殆どの時間を自己空間スキルの中で過ごしていた。」


「…いい。私が話す。アイツが私のところに来たのはつい最近のこと。私の固有スキルは自己空間、真実の瞳、空間魔法適正。スール王国の王女は私にそこまでの期待ができないと判断してからは暴力なんて日常茶飯事。食事なんて日に二回あったことなんて数えるくらいしかない。」


 秋月はその王女のことを余程恨んでいるのか力強くに語った。


「そんな時にアイツが現れた。私もこの世界に来てまだ半年も経ってないけど、それなりの恨みを募らせていた自覚はある。そこに付け込まれた自覚も。でもそれでもいいと思った。アイツはこの世界に復讐する手伝いをしてくれと私に言ったから。」


「…帰りたいとは思わなかったのか?」


 俺はそれが無理だと知っている。

 俺自身そうなのだから。

 クオが言うには十倍加スキルを持つ俺でさえ百年単位の時間を必要とするらしいからな。

 自己完全操作スキル。あれがないと俺自身に内包された魔力が、魔力を持たない人間を亡き者にしてしまう。


「?あれ?思わなかった。ううん、忘れていた?あの頃はあれだけ帰りたいと、昔の日常を取り戻したいと思っていたのに…」


「そういうことか。」


 話術スキルの正体、それは認識の書き換えだ。

 帰りたいと思っていた秋月の思考は、帰りたいと思わせるこの世界に復讐してやりたいにすり替えられ疑いを覚えることがなかった。

 だが、何かの制限があるのか俺に効くことはなかったな。

 今思えば、あの仲間を返してもらうという発言も話術スキルが絡んでいたのかもしれない。


「静が帝国に力を貸したのは今回が初めて。だから静はまだ」


「いや、いいんだレティ。俺はさっきアイツを殺そうと斬りかかった。俺がそれを気にできる立場にはもうない。」


 一通り事情は理解出来た。

 つまり秋月は佐久間のスキルで誘導される形で今回ここにいるわけだ。

 そして本人は今の今までそれを理解出来ていなかった。

 まあ、それにこれは俺がどうこう言うことではなく、ティアが決めることだと思う。


「ティアは秋月を許すのか?」


「私は最初から言っているではありませんか。全てコータに一任します。あれだけのことを言っていた学園長ですから認めてくださると思いますよ?」


 爺さんは結構自信満々だったからな。

 結局ティアは襲われているので、ティアの決定には口出しできないだろうけど。


「俺はもう怒りとかはないけど、秋月はそれでいいのか?」


「構わない。貴方が手を伸ばせと言った。そのせいで悩んでここにいるわけだから、少しくらい貴方に責任を取ってもらう。」


「責任ってなんだよ。俺に処遇が一任されただけで責任どうこうは関係ないと思うんだけどな。」


「あっ、でもエッチなことは許容できない。」


「しないから!」


「しないの?」


「そういうことに関しては光太のヘタレは極まっている。心配しなくても大丈夫。」


 ありがとよ、レティ!

 お陰で涙が溢れ出してきたよ!


「さて、お話も終わったことですしこれからどうしましょうか?試練に戻りますか?」


「静は私が町に連れて行く。光太は頑張ってくるといい。リルとの約束、ちゃんと果たすべき。」


「リル?また女の子。顔に似合わず人気者なのね。私は逃げられないから試練とか言うの続ければ?」


 顔に似合わずは余計だ!

 よく喋るようになりやがって!


「言われなくてもこのむしゃくしゃを竜にぶつけてやる!竜族なんてクシャクシャに丸めてゴミ箱にポイだ!」


「リルに報告しないといけない。コータが竜族なんてゴミ箱に」


「ごめん!謝るから!それだけは勘弁してくれ!」


 言葉の綾だろ⁈

 違うな、上手くなかったからこうなってるのか。

 例えが悪かったのは謝るから、お願いだから許してください!


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