過密スケジュール(笑)と懸念
なんだか実感ないですが200話目みたいです。
ここまで見てくださっている方々、本当にありがとうございます!
つい先日、五件目の感想を戴いたりして歓喜している私ですが、それを活かしてより良くできるよう邁進していきますので今後ともよろしくお願い致します!
「何回目かって話だけど三人共、昨日はごめんな。でもお陰で昨日の事件はあらかた片付いた。」
今はもう教室まで辿り着いている。
朝食を終えて直ぐクオ達がやって来て一緒に登校したのだが、ティアの屋敷の場所を知らなかったのでクオ達の遠回りの程に驚いた。
これだったら直接行った方が良かったのではと誰もが思うだろうな。
「本当に何回謝るの?だけど、もう面倒だからそろそろ大元をどうにかするべきなんだよ。」
「それがな、今回はどうも違うらしいんだ。」
今回の刺客は国内の過激派からのものではなく、恐らくだがゼスティル帝国からのものだと言っていた。
「状況から鑑みて、他国からの刺客じゃないかってカレン様が言っていたからな。」
「ん、そう。でも、国内の過激派と帝国を潰せば終わる。今からヤる?」
いやぁ。怖いのはレティさんなのでは?
たしかにおいおいはそのつもりだが、片方だけでも今すぐどうこう出来るような相手ではない。
それを無理だと思わせないレティは………
うん、神様なんだから当たり前なんだよな!うん…
「今はちょっと時間がないから無理だけど、帝国はともかく過激派は早くどうにかしないとな。」
「人族って何でこんなにも同族同士で争うのかしら?本当に愚かよね。まあ、精霊に手を出してしまう私達もよっぽどでしょうけど。」
そうだな。竜族の個の力の強さではなく、数での強さが他よりも勝る人族は、良くも悪くも色々な思想の集合体となってしまう。
同じだけの力を個で発揮する竜族は、その一人が好戦的であれ、狡猾であれ、勇敢であれ、臆病であれ、一つとして完成した道を進むことができるだろう。
しかし人族の場合は、勇敢な人物がいて、好戦的な人物がいて、狡猾な人物がいて、臆病な人物がいる。
彼らが力を合わせることで、時に竜族以上の力を発揮することもあるだろう。
だがそうなって来ると、指揮官に違いはあれど人それぞれの考え方に左右されてくるものだ。
そんな考え方の違いが燻り続ければ、仲間同士で争い始めることになる。
今の竜族からしてみれば、人族は醜く滑稽でしかないのは理解できるけどな。
「まあ、でも。いつでも、どこでも、こればっかりは変わることはないだろうけどな。」
「そうだね。考えることの許された、知識を得た生き物なんだから避けることはできないんだよ。」
俺だって戦争は確実と知っていて起こった後の身の振り方しか考えていない。
起こらないように尽力しているティアとは違ってな。
この際、俺とティアの立場の違いとか、王女と冒険者では出来ることの幅が違うとか、まだこの世界に来たばかりで何がどうなっているのか理解出来てないとかは関係ない。
そうしようと動けた者、そこまで行かずとも少しでも動こうとした者と比べても俺は小さい人間だということだ。
俺には勇者にも、英雄にも、ヒーローにもなれる資格はない。
「というか今更なんだけど、この大元さんの名前を聞いとかないとどうにも出来ないよな。今までは襲って来たら撃退するだけだったけど、打って出るとなると知っておかないといけないか。」
「どう対応するにしてもグロウでは何も出来ないんじゃないかしら?王子の側近ってくらいだから王都に行く必要があるんじゃないの?」
え、なにその忙しいスケジュール。
試練終わって迷宮都市で合宿だろ?その後はそのさらに奥にあるはずの霊峰とやらにリルの用事を済ませに行く。その後は特に決まってないけど次は王都か?
どこかで一旦腰を落ち着けるために家も買っときたいし、色々と回るのもアリなんだけど…
夏休みにスケジュールが詰まってることなんて今まであっただろうか?
「そうだよな。避けられないわけだし、どこかのタイミングで王都には行く必要がありそうだな。でも一つだけ懸念があるとすれば…」
「すれば?」
過激派が一時の間、若しくは今後一切ティアを襲わない可能性があるということだ。
過激派の目的は勇者を戦争への足掛かり、その後も戦争で戦力として数えるのが目的だ。
その邪魔を悉く行ってくるティアを鬱陶しく思い暗殺をしてこようとしている。
しかしだ。裏を返せば、その目的さえ達成してしまえば今後襲ってくる可能性は低くなってくる。
今日、ティアはセシルさんと話すと言っていた。
その話し合いに左右されるのは言わずもがなで、更に戦争確実と言われている今、勇者の戦力導入以外の目的がない以上、王女の命を狙うなんて愚かしいことをしてくるのだろうか?
「許すとか言ってるわけではないけど、今後もう襲って来ない可能性だよ。」
「なるほど、一理ある。」
せっかく襲って来なくなった相手に中途半端に制裁を加えようものなら過剰な猛追が来る可能性だってあるのだ。
俺はまだ敵を知ることが出来ていない。
カレン様やミランダ様の言いようからして、ティアを襲っているのは愛国心ありきのことらしい。
ティアもそれは理解しているようだが、俺はティアを助けるということがどこまでのことなのか判断しかねているのだ。
敵を根こそぎなのか、それとももう命を狙われなければいいのか。
それも全部、今日の話し合いで決まると思うけどな。
「おい、席につけ!」
「カルディナ先生ってやっぱりカレン様に繋がるところあるよなぁ。」
まあ、本人達には言えないけどね。
だって似通ってる部分があれだからな。
「今日は一日お前達に時間が与えられるわけなんだが、もう少し試練に目を向けて今日の時間を有効活用しろよ?」
「どういうことだ?」
「試練は竜族と戦うだけじゃないってことだ。どこかの誰かさんに触発されている奴らも多いようだが、今のままでは祠にさえ辿り着けないぞ?」
なるほどな。
試練には行きも帰りもあるのだ。その道中、ほとんどの確率で敵と遭遇することになるだろう。
魔物の森の横の街道を通らなければならないし、祠の前の試練の森でも魔物は出る。
そこで体力の消耗を招いたり、配分を間違えてしまえば、祠に辿り着けずにリタイアなんてこともあるのかもしれない。
どこかの誰かにはあえて触れないことにするけどな。
「忠告はこれくらいにして、だ。時間は有限だ、強くなりたい奴はさっさと移動しろ。」
「カルディナ先生マジカッケー。」
「お前みたいな奴が…失敗して欲しい限りだな。」
アホなこと言ってないで俺もさっさと移動しよ。




