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創造神の力で異世界無双  作者: TKG
異世界ディファード
195/221

幸せの行方

 

「それでティアを襲った敵は国内の過激派の人間ということでいいんでしょうか?」


 俺がティアから聞いた話では、ティアの命を狙っているのは第二王子の側近連中だという話だった。

 勇者である神崎を戦争へ駆り立てたいが、その中でティアの行動が目障り極まりないと。

 だから暗殺されそうになっていて、勇者問題は深刻なので周りも迂闊に動けずティアは孤立している状態、だったか。

 ただ、第二王子は戦争で武勲を上げたいだけらしく戦争を出来ればいいと思っているようで、勇者はそのきっかけにあればいい程度にしか思ってないと。

 ティア暗殺には全く関係していないらしい。


「いや、今回の刺客は国内からのものではないだろうな。私がここにいることを知った上であの連中が送り込んでくるはずがない。」


「カレンと第二王子アレスは言ってしまえば軍事を担う二大巨頭なんです。アレスの側近バイスがどう考えているのかは分かりませんが、カレンと持ちつ持たれつの関係にある今敵対するのが得策でないことくらい理解しているでしょう。」


「私は今すぐにでもあいつらを潰してやりたいんだがな!だが、それも今の状況下では無理な話だ。彼奴らも別に国を肥やしにしているわけではないからな。」


 え?俺はてっきり完全に悪だと思っていたんだが違うのか?

 まさか愛国心で動いているような奴らなのか?


「その驚いた顔はなんだ?もし彼奴らが自身の損得勘定だけで動くような奴らなら我が国の要人になったりはしてないし、潰されているに決まっているだろう。」


「明らかな黒はご退場願いますけど、グレーは見逃すことも必要ですから。我々が第一に考えなければならないのはこの国の民が笑顔で暮らせることですからね。」


 ティアは複雑そうな顔をしている。

 そうだろうな。きっとその中に神崎は含まれていない。

 ティアが親友のために助けようとして、今度は自分が命を狙われてしまう原因となった人物は結局その中には含まれていないのだから。


「ですが、ティア。貴方は自分の思うようにやればいいと思いますよ。私はこの国の民を想うことで精一杯ですが、その外にも目を向けられるティアは素晴らしいと思いますから。」


「ああ。だがその行動に対しての責任は自分で負わなければならない。その道を進むというのなら今後私とも敵対する可能性があると理解しているか?」


「はいっ!その覚悟はとうに出来ています!私はあの二人に幸せになってほしい…その為ならどれだけ辛い道でも乗り越えてみせます!」


 分かった。あの話を神崎本人から聞かされ、尚且つ同郷の俺だから分かったことかもしれない。


「なあ、ティア。神崎はそれを望んでいるのか?」


「どういうことですか、コータ?私は間違っているのでしょうか…」


 目に見えて落ち込むティア。


「そうじゃないよ。神崎とセシルさんとはそのことに関して話し合ったのか?」


「聞いたって本音なんて言ってくれるわけないじゃないですか!」


 確かにそうかもしれない。

 だがその幸せに神崎たちの気持ちは考慮されているのだろうか?

 ティアがセシルさんに幸せになってほしいという想いは嘘偽りないだろう。

 だが、この世界で生きていく覚悟を決めた後の人間が、わざわざ召喚された理由を奪われた時どう思うかは考慮されているのか?


「ティア、酷いことを言うようだけどその幸せは押し付けているものなんじゃないのか?」


「っ⁈すみません、少し席を外します…」


 こんなことを言うつもりじゃなかった。

 ましてや泣かせるつもりなんて毛頭なかった。

 でも、結果的にそうなってしまったのはなぜだろうか…


「行かせてやってくれ。護衛に影を付けてある。」


「…分かりました。」


「すまなかったな、コウタ。もっと早くに身近にいた我々が言ってやるべきだったのに、言えなかった。」


「コータさんはどこまで知っているのですか?今回の勇者召喚に携わった中軸となった二人はご存知でしょうか。」


「いえ、そこら辺は聞いてないですね。」


 正直、走り去ったティアを今すぐにでも追いかけたい。

 だが、一人で考える時間も必要だろう。

 今のこの状況で一人にさせるのは危ないとは思う。

 しかし、影という護衛をつけているという話だ。カレン様が大丈夫というからには大丈夫なのだろう。


「勇者召喚陣を起動させるために必要なものは三つある。まず一つ目、これはよく知られているだろうが莫大な魔力だ。」


「その話は知ってます。何十年単位で貯めた魔力が必要だと。


「そうだ。そして二つ目は、その召喚陣を起動出来る術者の存在だ。かなりの技術を要するがこの国には幸いうってつけの人物がいた。」


 爺さんのことか?多分そうだろうな。


「そして最後の三つ目、空間属性の使い手の魔力が必要なんだ。そしてこの二つ目と三つ目は同一人物であってはならない。」


「それがティアなんですか?」


「ああ。その空間属性もレベルが高くないといけない。」


「ティアしかいなかったんですよ。ここ数年、父と賢者様は国内中で空間魔法の使い手を探していました。ですがその誰もが勇者召喚陣の基準値に達していなかったのです。」


「帝国が妙な動きを見せ始めた時期でもあったからな。勇者召喚をしないわけにもいかず、否定派だったティアをほぼ強制的に参加させる羽目になってしまった。帝国への牽制のために、民を守るために必要、なんて言われたらティアが断れるはずもないのを分かったうえでな。」


 そうか。

 神崎への責任を一番感じていたのはティアだったのか。

 ティアが強制的にやらされたんだから自分は悪くないなんて割り切れるはずもない。


 この話を聞いた後でも、ティアがセシルさんの幸せを願って行動していることは疑っていない。

 責任を感じているからその償いにとか、その責任から逃れるためにとか、そんなことも無いと思う。

 それに勇者という当事者ではない上に、この国出身でもない、完全なる第三者視点から見てもティアの行動が完全に間違ったものではないと思う。


 最悪な言い方をするが、勇者という一人を犠牲に国民全てが助かる。この構造を嫌う者もいるだろう。

 何故誰かの為に誰かが犠牲にならなければならないのか、と。

 そういう者たちに言ってやりたい。今お前の立っている場所はそういう場所なのだと。

 意識的にでなくとも、無意識的にでも、人は誰かの犠牲の上に成り立っているのだ。

 どちらかを選べない優柔不断な人間が、どちらかを選び取った覚悟ある人間のことをとやかく言える立場にはない。

 俺は俺自身を含めてそう思う。

 ティアは国民の幸せを選び取り、尚且つその中で神崎とセシルさんの幸せをも考えられる覚悟ある優しい人間なのだと思う。

 ただ今回は、その幸せが空回りしたというだけの話だ。


「俺、ティアのところに行ってきます。」


「ああ、任せたぞ。今後ともな。」


「私達ではティアを守ってあげられません。どうか、ティアのことをよろしくお願いします。」


「任せてください、ティアとも約束しましたからね。それで最後に一つ聞きたいのですが。」


「なんだ?」


 今回の黒幕の話だ。

 結局、他国の仕業としか聞けてないからな。


「今回の主謀者はどこの国だと思いますか?」


「おそらくゼスティル帝国だろうな。ティアを暗殺することで戦争への足がかりにしたかったか、それとも戦争の燻りを悉く消してまわるティアを快く思わなかったか。今後お前自身が狙われることも念頭に置いておけよ?」


「ご忠告ありがとうございます。では、失礼させてもらいます。」


 今後は俺も狙われる可能性もあるのか。

 まあその時は返り討ちにして差し上げる所存である。


 さて、ティアはどこだ?

 ネックレスに魔力を流してっと。こっちだな。

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