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創造神の力で異世界無双  作者: TKG
異世界ディファード
194/221

神の寵愛と祈祷魔法

 

「仕方ない、か。『我、求む。深く傷つきしこの者に祝福を与え給え。御身の慈悲で救済を。神の癒し(ゴッズキュア)』」


 これでどれだけの人を騙せるか…

 これだけの衆人環視の中、この傷を一瞬で治してしまうような魔法を使うのは避けたいところだったがそうもいかない。

 今の魔法はエンジェルブレスでしかないのだが、それっぽい詠唱をつけ恰も祈祷魔法であるかのように錯覚させようとしたのだ。


 そして発動したゴッズキュア改めエンジェルブレスで傷口は光に覆われ、それが消えた時には傷は跡形もなく消え去っていた。

 規則正しい

 エンジェルブレスは完全回復させる、魔力が尽きるのが先か回復しきるのが先かという魔法なので血が足りないなどということもない完全な状態のはずだ。

 ただ。


「これでもう問題はないはずだけど、急に体が回復したことへの衝撃で少しの間目覚めないかもしれない。そこは我慢してもらえると助かる。」


「コータ!」


 目に溜めていた涙をメアリーさんが一命をとりとめたことでダムの放水の如く流しながら飛び込んでくるティア。


「よかったです、本当によかったです…うぅぅ」

 

「ほら、もう大丈夫だから。」


 まさかこういう風にこのネックレスが役立つとは思わなかったが、また使えるようには出来る。

 むしろこの判断を下せたティアのおかげでメアリーさんは助かったと言っても過言ではない。


「桃色の空間を広げるのはいいが我々は一度退席することにしようか。」


「カレン様…そうですね。そちらの方が良さそうです。」


 ドーン、ドーンと花火が鳴り響いている中、この場の全てのものがそれを背景にしているというのはいささか異様である。






「ここなら人目を気にせずとも大丈夫だろう。それでコータ、まずはメアリーを助けてくれたこと感謝しよう。」


「いえ、俺を呼ぶ判断をしたのはティアです。俺は少しの手助けをしただけですから。」


「あんな魔法を使っておいて手助けとは些か謙遜が過ぎるのではないですか?」


 そんなことはないと思う。

 ティアの判断がなければメアリーさんが助かるのは絶望的だったから俺を呼んだんだ。

 俺の評価なんて二の次だろう。


「やめておけ、ミラ。回復魔法が得意なお前としては思うところがあるのは分かる。しかしそんなに強くいくこともないだろう。コータはメアリーを救ってくれたんだぞ。」


「しかしですね、カレン!あれほどの祈祷魔法を使って何の代償も…っ!」


「それはどういうことですか!カレンお姉様、ミラお姉様!」


 何の話かは分からないがティアは知らないことのようだ。

 祈祷魔法の性質の話だろうか?

 勇者召喚や死者蘇生など、本来出来ないようなことを成し遂げるのが祈祷魔法だ。神に祈りを捧げ、時に代償を払うことで神の御技を享受出来る。

 俺が知っているのはこのくらいしかない。

 安易に使うのは失敗だったか?


「ティア、あれだけの傷を一瞬で治してしまうような魔法を発動させたのだ。何の代償もなく使えるわけがないだろう。」


「そ、そんな…し、しかし、コータは何事もないように…」


「だからミラは怒っているんだ。そんな魔法を躊躇いもなく使った上に、ティアを心配させまいと平常を保っている今のコータの姿を見てな。」


 うーん、話が見えない。

 俺って今異常をきたしているのか?

 っていうか、祈祷魔法って代償を支払う前提の魔法ではないと思うんだが。


「それは本当なのですか、コータ?」


「いや、別に何か異常があるわけではないけど…」


「我々の不注意が招いた出来事で負わせてしまったものだ。出来れば私達に責任を取らせてほしい。その為にどんな代償を払ったのか教えてもらえないか?」


 どうしようか…

 代償なんてものは本当に払ってない、強いて言えば魔力ということになるかもしれないが、それだって本来は俺が使った魔法は祈祷魔法ではなくただの聖光魔法なのだ。

 始めから嘘なのでこれ以上どうすることも出来ない。


「仕方ないですね。俺は正直、ティアのことは信じられてもアビド王国を、そして貴方達を信じられているわけではないので多くは語れませんがそれでもいいでしょうか?」


「貴様!王女殿下に対して無礼すぎるぞ!平民の分際で、お前達のようなものはただ答えておけば良いのだ!」


 ティアが狙われるという事件があった直後だ。

 王女様を誰とも知らぬ男と二人きりというか四人だけにするわけにはいかないということで護衛の騎士の入室を許可したんだけど断ればよかったか?


「静かにしていろ!出来ないのなら退出を命ずる!すまないな、コータ。それでもいいから話を聞かせてもらえるとありがたい。」


「そうですね。無理矢理聞いたりなんてことをするとティアに恨まれそうですもの。」


 ミランダ様が冗談交じりに言ってくれたおかげで、どこか殺気立った空気が和らいだ。



「はい、お姉様でも遠慮なく恨ませてもらいます。ですが、もし本当に苦しかったり辛かったりするのなら私だけにでも、いえクオ達だけでもいいですからどうか!どうか一人で背負いこむのだけはやめてください!」


「分かったよ、ティア。でも本当にどうもないんだ。」


「でも祈祷魔法は代償を必要とすることくらい私も知っています。先程までは視野が狭まっておりすぐに気づくことは出来ませんでしたが。」


 どうやら知らなかったわけではなく、あんなことがあった直後で考え至らなかっただけのようだ。



「では少しだけ俺の秘密を。」


「その前に。おい、席を外せ。今からの話は一介の騎士が聞いていい話ではない。ついでに人払いもしておけ。」


「ですが!誰とも分からぬような男と護衛なしになど危険すぎます!」


「聞こえなかったのか?命令だ。これ以上私に言わせるなよ?」


「っ⁈り、了解致しました…」


 いやぁ、俺を睨まれてもなぁ。

 気を利かせてくれたのはカレン様だし。それに俺はティアにならともかく、この二人に話す義理はないのだ。

 お前なんかに睨まれる筋合いはないぞ。


「では改めて。祈祷魔法は神仏に祈りを捧げ、供物を、代償を支払うことで神の力の一端を借りる魔法な訳ですけど、別に祈りを捧げた上で代償も支払う魔法ではありません。」


「どういうことだ?」


「聞いたことありませんか?祈祷魔法は使う人物によって代償の大きさが違うと。」


「それは聞いたことがありますが、でも完全に代償がないというのは聞いたことがありません。これは聖法国の教皇でさえそうでしょう。」


 そんなお偉いさんまで知らないのか?

 いくらなんでもそれはないだろう。祈祷魔法の概要は、勇者関連の話で派生として軽くレティから教えてもらっただけだがそれでもこれだけの情報量だ。

 それにそんなガッツリ宗教国家のお偉いさんが、一部しか知らない俺なんかよりもよっぽど知って入りと思う。


「俺は村から出てきたばかりでその聖法国?のことはよく知りませんが、きっとまだ彼らは達していないのでしょう。」


「達していないとはどういうことですか、コータ?」


「祈祷を捧げる神から賜る加護の話ですよ。」


「なるほど。祈祷魔法はどれだけ神から信頼されているのかが重要というわけだな?だから明確な基準として加護で分かる、と。」


 まあ少し違うがそれでいいか。


「大方その通りです。しかし俺が言いたいのは加護ではまだ代償を必要とするということです。加護はありふれたと言うほどではありませんが珍しすぎる程のものではありません。」


「まあ、そうだな。貴族の中にも少なからずいる。」


「たしかに、そんな数の人々が代償を必要とせず神の御技を行使できるとなればそれは世界の崩壊を招きかねない事態です。」


「そうです。俺がステータスを隠蔽しているということくらいはもう知っているんでしょ?」


 そのくらいは調べられているだろう。

 最初の頃、不自然なくらいの変動があったからな。


「ああ、悪いが調べさせてもらった。それに今お前のステータスを見ても俄かには信じられないからな。」


「気にしてませんよ。それで俺のステータスの称号欄にはこんなものがあります。【〇〇神の寵愛】」


 どの神と言わなくてもいい、というかそれは言わない方が良いだろう。

 絶対面倒なことになる。今だけでもそうなりそうだが。


「寵愛、だと?そんな称号は王女の私でさえ聞いたことない。ミラとティアはどうだ?」


(わたし)もありませんね。そんな称号は一度聞けば忘れないと思うのですけど。」


「どこかで見た記憶が……そうです!昔見た本に書いてあった記憶があります!たしか、まだ勇者が勇者であった時代のお話で、そのお話に出てくるどのような傷でも癒す聖女様の称号にそんなものがあったと思います。」


 えー。寵愛ってそんなレベルのものだったのか?

 まあ今更後に引けないから仕方ないか。


「そうか。部下にその文献を調べさせておこう。で、話を戻すがその寵愛を所持していると祈祷魔法に代償がないと?」


「まあ、一部ですけどね。それにいくつか制限もあだたりもするので完全ではありませんよ。死者蘇生や勇者召喚もそうですが、そこまでの極大魔法となればいくら寵愛でもかなりの代償が必要となるでしょうね。」


 試したこともないし、試すつもりもないけど。

 因みに、加護や寵愛は俺には授けることができない。

 神族と神人族の違いはそこにもあって、司るものがあるというその枠組みの中で最強である彼ら神族のみが許された特権なのだ。


「それを全て信じるとしても、今回の傷くらいなら代償なく治せるということだろう?かなりのアドバンテージではないか?」


「いえ。日に何度も使えるわけではないですから。使えて週に一度。あまり過度に頼りすぎるのは自分と神の間に角質を生みかねませんから。」


 暗に使いすぎると加護でも寵愛でも消えてしまうと告げる。

 だってそうだろ?信じていた者に、無遠慮にそんな力を使い続けられては裏切られたような気持ちになっても仕方がないと思う。

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