嘘と魔法
「その手紙どうするの?」
「そりゃあ、ねぇ…どうしようか。」
「手紙なんて誰からもらったのよ。また女の子?」
前から思うんだが、女の子って決めつけ過ぎたぞ!
それに当然のようにまたを付けるのはやめてほしい。
貰ったのは美少年からだったから男の子ってことでいいよな?
「いや、マカはいくら美少年だったとはいえ男だろ?リル疑いすぎだぞ。」
「そうだったの、悪かったわね。でもコータの周りにはそれくらい女の子が多いと思うわよ?」
「リルは間違っていない。持ってきたのはマカ、だけど手紙の差出人は光太の娘。即ち女の子。」
「その言い方はやめろよ!外聞が悪いだろ⁈」
レティめ、なんてこと言いやがるんだ!
俺の貞操はキッチリカッチリ護られてますから!誰にも奪われてませんから!
そんな俺に子供なんて…いる、わ…け………
「……はぁ。なあ、悲しくなってきたからやめないか、この話。」
「結局女の子なのね。別に駄目と言ってるわけじゃないんだから隠さなければいいのよ。隠すから何かやましいことでもあるんじゃないかと疑ってしまうでしょ?」
「違うんだ、リル…この問題に関しては色々と事情があってな…」
だってさぁ、何この手紙?
まだ娘と言われて受け入れきれない内から、お父さんと呼ぶのをやめると言われてるんだぞ?
たしかに名前を付けてないのは悪いと思うが、適当に決めるわけにはいかないんだよ。
これが親心なんてことは全く思わないが、軽々しく付けられるほど責任感を感じていないわけではない。
なんか向こうは俺のこと見ているみたいだし?
「とにかく!この問題は刻印神との初対面までお預けってことで。なんかひと段落したら会いにくる的なこと前にロアとプランが言ってたし。いつになるのかは知らないけど。」
「こんな手紙を届けてくるくらいだからもう少しでひと段落するんじゃないの?」
もう来てしまうならその時はその時だ!
少し自棄気味になっていることは認めるが、いつそうなってもいいように素敵な名前を考えておこう。
でも顔も見てないのに決められないよなぁ。
子供に名前をつけるってそういうものだと理解しているが、神様は生まれた時から不変なんだからまさか金髪の白人に桜とか沙耶とかつけるわけにもいかないだろ?その逆も然りで大和撫子にベティと付けるのも違う気がする。
まあ、なんと言い訳を述べようが一番は渋られたり却下されたりするのが怖いのだと思う。
あー、どうしよう…
「そんなに悩むようなことだったのね。詳しくは聞かないでおくわ、神様関連みたいだし。あまり知り過ぎてもこんがらがっちゃうもの。」
「いや、別に隠すような事でもないぞ?この手紙の内容自体は誤解を招くような内容もあるけど、俺が悩んでいるのは名前なんだよ。」
「名前?だってさっき刻印神?がどうとかって。」
「その刻印神がいつまでも名前つけてくれないくせに、ポッと出のテイムした魔物には名前というか愛称をつけたから嫉妬してるんだと。それになんか知らないけど呼び方を変えるらしい。」
まあ、ね。大体どんな意味があって名前で呼ぶとかかいてあるのかは想像できますよ?
その可能性は前々から示唆されていたわけですし。
でもだな、なんか今のうちからそれを認められない。
なんの踏ん切りもつかないまま認めるわけにはいかないのだ。
それならまだお父さんと言われる方が納得出来る。
「刻印神ってアレでしょ?前にコータが偶然創ってしまったっていう属性の。あの時、レティの適当な嘘に騙されてあげるの頑張ったんだから。」
「えっ⁈あれ信じてくれてたんじゃなかったのか?」
「そんなわけないでしょ?ガチガチに隠蔽できてる人がちょっと変なスキル持ってるくらいでバレるはずもないどころか師匠が怒るからって。騙す気本当にあったの?」
「ま、まさか今までのレティの嘘が本当に通じていたわけじゃ…」
本当は要所要所で今までレティの付いていた嘘はあからさまで騙されていると思っていたのは俺だけだったのか?
「?リル以外には同時に魔法も使ってたから信じていたはず。闇属性を駆使すれば疑うことを忘れさせることも出来る。」
「まさか仲間にそんな魔法を使うはずもないからね。」
な、なるほど。
状態異常は使い方次第でとんでもないことになるんだな。
「すごいな。でもイマイチ状態異常の有用性を理解できてないんだよな。」
「まあまあ。色々と悩みもあるみたいだけど今日はそんなことは忘れてパーっと楽しまないとね!明後日にはもう試練なんだから。」
「そうだよ。英気を養うには今日しかないと思うんだよ。」
「光太は心配性。そんなこと心配しなくてもそんなヘマはしない。」
本当に色々と悩みがあるな。
でも、そうだよな。みんなで楽しく過ごすと決めた今日くらいはワイワイはしゃいでも大丈夫だよな?
「じゃあ、いよいよ人族の祭りに出撃ね!楽しむわよー!」
「「おおー!」」「おー…」
少し食後の休憩ということで部屋で休んでいたのだが、遂に出撃するようだ。
祭りと言う名の合戦に…
「今日は少し朝ごはん我慢したからいっぱい食べられるんだよ!」
「食後のデザートをお代わりしてた口が放てるセリフじゃないと思うぞ?」
さて、色々ありはするが全力で楽しませてもらおうじゃないか!




