改善
「ま、まあ出来て一安心だな!これで少しくらいは改善されるだろ。」
「でも、なんだかラディックの方は暑苦しいですね。」
「そ、そうですか?この炎、熱くないけど…」
そういうことじゃないぞ、キャロル。
でもそうか。敵を拒めということは仲間にも害を及ぼさないということなのか。
「おい、雷か炎かの差しかないのになんだよこの差は。」
「俺に言うなよ。それで使い方だけどな、ちょっと魔法を俺に向かって使ってくれ。」
「なんでもいいのか?じゃあ、『魔力よ、火の球となりて我が敵を討て。ファイアボール』」
いい火球だな。
それを雷鎧を纏った腕でー、
「とりゃ!」
「あぶなっ⁈何すんだよ!」
「いや、こんな感じで使うって見本見せただけなんだけど。」
ちょっと腕で払って打ち返してやっただけじゃないか。
驚きすぎだぞ?
「弾くなら弾くって先に言えよ、危ないだろ!」
「躊躇なく撃ち込むラディック君もだけどコータ君も…」
「そんなに褒めるなよ、キャロル。照れるだろ?」
「ほ、褒めてないよ?コータ君…」
や、やめてくれ。わざと言ってるんだよ!
そんな心配そうな目で見られたら………目覚めるだろ!
じゃなかった。俺が惨めすぎるだろ…
「ま、まあ、とにかくだ。接触する以外にも使いこなせればこんなことも出来るって話だよ。魔法耐性プラス勝手にダメージを与えてくれるプラス使いこなせれば弾き返すことだって出来る。」
「誤魔化しましたね。ですが、ラディックがこれをマスター出来れば改善されるのも事実ですから今回は見逃しましょう。」
「あ、あの、視線が…」
「ん?」
なんだか周りの視線を集めてしまっているようだが何でだ?
「なあ、なんで視線集まってるんだ?カルディナにみんなしてサボってるって言いつけようか。」
「なんでって魔法を着込む魔法なんて滅多にないどころか俺は見たことないな。剣とかに纏わせるならまだしも自分がとなるとみんな同じなんじゃないか?」
「そ、それに魔法は見ただけじゃどうしても真似できないから。え、詠唱文が気になるんじゃないかな?」
あー、そういや詠唱がデフォルトだったんだ。
そこから短縮されることは普通だが、詠唱破棄されることはほとんどないからな。
「魔法を弾いたりしてましたからね。その魔法はさぞ魅力的に映ってると思いますよ。」
「この魔法、そんなに知りたいのか?」
誰となしに問いかけると気持ち悪いくらいに周りが一斉に頷いた。
でもデメリットはまだ当然ある。
継続的に使わなくてはいけないので、当然それに比例するように魔力を消費しないといけない。
奇しくもキャロルと同じ問題に直面するわけだが、片方に負担をかけるよりも二人三人で分けた方が上手くいくはずだ。
「でも、自分の許容限界を超える魔法は当たり前だけど跳ね返したり出来ないんだぞ?まあ、知りたいって言うなら教えなくもないけど…」
いや、待て。俺一人でこの人数は流石に面倒だ。
それにだ。いまそんなことに回す時間はほとんどない。
「じゃあ詠唱だけ教えるからあとは自分たちでやってくれ。俺もそこまで暇じゃないからな。ああ。一応言っておくけど、俺よりもラディックの方が上手く出来ているから。」
「なっ⁈おまっ!どういうつもりだ!」
どういうつもりも何も擦りつけるつもりですが何か?
そんなことを抜きにしても俺より上手く出来ているのは本当だろ?癪だがな。
まあ仕方ないので、さっき適当に作った詠唱を教える。
「『魔力よ、………鎧』。今の属性のところを使いたい属性に変えてくれれば完成だ。あとは自分達で頑張れよ。」
「そんな簡単に教えて良かったの?」
「この魔法って実際あってもそんなに変わらないからな。威力が低ければ打ち返したり出来るけど、耐えられない魔法は結局ダメージ受けるから。」
別に独占するほどの魔法でもないし好きに使ってくれればいいと思う。
「そ、それでもかなり有用だと思うよ?」
「結局使いどころは限られるわけだから広まっても問題ないさ。」
魔力切れになるのは目に見えている。
それよりもだ。俺たちは俺たちの特訓をしないとな。
「じゃあ、試しに色々な弱い魔法をたくさんはなっていくから躱すもよし、弾くもよし、相殺するもよし。どれくらい一人でも動けるのか試してみようか。」
「今度は手加減しろよ?」
今度はってなんだ、今度はって!
この前のだってラディックが勝手に気絶したのが悪いんだろ!
たとえ俺が考えながら攻撃してしまっていたとしても俺は悪くない。
「大丈夫、大丈夫。数が欲しいだけだしボール系しか打たないから。『ファイアボール』『ウォーターボール』『ウィンドボール』『アースボール』」
「ちょっ⁈いきなり数多いって!」
数が多いと言いながらキッチリと躱し、叩き切り、遠距離攻撃を絶やすが無力化していく。
「よし、これだけ動ければキャロルは死角をサポートしてやるくらいの気持ちでいいんじゃないか?」
「俺じゃなくなったみたいな…でもなんだか、魔法を叩くのって案外面白いな。」
「これくらい出来るならそれでいいかもしれませんね。」
「じゃあ、これで一つ解決だな。」
こうやって一つ一つ良くしていくのが大事なのかもしれない。
じゃあ、このパーティの次の弱点というか至らない点は…
そうしてパーティをより良くしていくうちに時間は過ぎていった。




