クオの涙
クオが走り去ってからそう時間を置かずに爆音が鳴り響いた。
急ぎ過ぎて周辺被害を考えていないらしい。
それにしても暇だな。
ここに来るまでゆっくりと考える時間が無かったから丁度良かったかも知れない。
最初はどんなだったけ。
あぁ、そうだ。いきなり目の前に見た事もないような美女が現れたんだった。
それ後、お互いのすれ違いとかクオの残念な部分が見えてきたりとか色々あって、俺が魔法に惹かれたりして、異世界に来ている訳か。
今って、人生の中で一番濃い時間を過ごしてるかも知れんな。人生語れるほど生きちゃいないけども。
それでも、異世界に行くことなんてなかなかないだろうから、大抵の人は同じなんじゃないかな。
そんな事を考えていると…、
ん?あそこに誰かいるような…
結構遠いけど、紫の髪だからわかりやすい。
けど、あれ?こっち見てないか?
いや、間違いない。近づいて来るもん。
クオに負けず劣らずの美少女で、大人しそうな印象を受ける。
だけど、武装なしでこんな危険地帯に一人で来て大丈夫なのか?
いや、この世界の住人からしたらそうでもないのかも知れんな。まだどう見積もっても中学生ぐらいにしか見えんけど。というか、しょうが…なぜかこれ以上は言ってはいけない気がする…
しかし、こちらに来るのはいいが竜でも破れない結界が張ってあるんだよな。
それでもどんどんこちらに近づいて来る。
あるぇ?
俺には結界の見分けはつかないが紫髪の美少女は手を伸ばせば届くほどの距離に来ているんだが?
クオが結界を張り忘れたのか?それともあのかわいい掛け声に不安を持った俺に気づいてそれへの反撃か?万が一にもないと思うが、この美少女は激強なのか?
結界があると思っていた安心感からか、焦りとともに頭の回転が今まで一番早いように感じる。
そんな風に焦っていると俺の内心を知ってか知らずか紫髪の美少女が淡々と話し出した。
「黒髪で黒目、結構な美少女。こんな感じの子知らない?この付近にいるはずなんだけど」
聞いた感じはクオと当てはまるがそんな訳はない。
クオは言っていた。下界の人間にはバレないと。
だが、この時の俺は失念していた。
この美少女が神界の住人、即ち神である可能性を。その場合、すべて辻褄が合うという事実を。
「い、いや知らないな。知り合いに一人いるがそいつは絶対に違うからな」
「そう」
「悪いな、力になってやらなくて」
「別にいい。よくある事」
言葉少なだな。
よくある事ってどんだけ迷惑かけてるんだよ、そいつ。
「今、人待ってるんだけどそいつ来たら一緒に探してやろうか?」
よくわからないが、いつの間にかこんな言葉を口走っていた。
「ん、ありがと。でも、いい。急ぎ過ぎることでもないから。じゃあ、ね」
こんな場所で急ぎ過ぎる用じゃないってどんな用事だよ。
しかも、断られたの地味にショック。
「そっか。その友達見つかると」
そこまで言いかけて森の方から声が響いてきた。
「コーターッ!だいじょーぶーー?!結構強い結界張っていったのに破られたか…ら………」
「クオリティア様、やっと見つけた」
クオリティア様?
ってことは、この美少女はクオの知り合いか?
でも、そう考えたら辻褄が合うな。
竜ですら破れない結界を何もないように素通りしてきたことも、探していた人物が黒髪黒目の美少女っていうのも。
「二人は知り合いなのか?」
「ん。探し人。ありがと、見つかった」
「ち、ちょっと待ってよ。なんでレティがここにいるの?それよりもどうして二人はそんなに親しげなの?」
「ん。クオリティア様探してたら、彼見つけた。聞いたら、親切に対応してくれた。いい人」
「レティっていうのか、よろしくな。俺は、高橋光太だ。好きに呼んでくれ」
「ん。わかった、光太。私は闇神レティス。よろしく」
二人で自己紹介をし合っていると、
「ちょっと!二人で話し進めないでよ!で、二人が出会った経緯はわかったけど、結界は?レティなの?」
「ん?何かあったの?特に抵抗なかったからわからなかった」
「そんなの対神結界じゃないんだからあたりまえでしょ!あそこの山の竜程度の為の結界なんだから!」
神同士の会話はやはり違うな。竜程度ですって、奥さん!
次元が違いすぎる。俺もこんな感じの会話をする日が来るのだろうか?
竜なんて小指さえあれば楽勝だぜ!みたいな。
閑話休題。
「もぉ〜。それならよかったよ…。コータまだレベル低いから。神だから下界の生物に殺される事はないけど痛みは感じるから。それでも万が一のことがあったら…」
クオは今にも泣きそうだった。
「なんかごめんな、クオ。レティ、神って死なないのか?」
「ん。神は神にしか殺せない」
「神も一応は死ぬんだな」
クオが渋々説明する。
「ちょっと違うんだけどね。神の死は消滅。それは、司る概念が消滅した時か、神が世界に仇なしたときにクオかメーティスに消滅させられるかの二択。神は司る概念が存在する限り死ぬ事はないの。それの象徴だから。神人族も多少の違いはあれど、ほとんど同じかな」
クオが心配そうに、すでに泣いているとすら思わせる表情でこっちを見ている。
大丈夫なのにな。
「そんな顔しなくても大丈夫だぞ。そんな事で嫌いになったりしないさ。それも必要な事なんだろ?無差別にやったりしているなんて言ったら考えるかもだけど、クオがそんな事する筈ないしな」
「ん。いい人でよかった。ね?クオリティア様」
「ゔんっ!あ゛りがどう、ごーだ」
「あぁ、わかってるから。よしよし」
今までの経緯もあるから不安だったんだろう。
自分がしている事でまた恐れられたらどうしよう、また離れていったらどうしよう、と。
俺もダメダメだな。こんなに不安にさせていた事に気付かないなんて。
これからはもっとクオの事を知っていかないとな。
「俺は信じてるから。クオの事嫌いになったりしないと誓う。神は死なないんだろ?だったら何があろうとクオを一人にしない。万が一、もし、離れてしまっても必ずクオの元に戻るから。だから、クオも俺のこと信じてくれ」
「ゔわ゛ぁぁあ゛ん!!!!!」
それからクオは一時間もの長い間泣き続けたのだった。
一時間も泣き過ぎなんて人も中にはいるかもしれません。
他にも理由があるんです!
プロローグの伏線回収しますんで!
伏線とか苦手なので、あからさまとかあるかもしれませんがご了承をば。
次話を見てそれでも違和感のある人は報告お願いします。




