思っていたのと違うんだが…
少し短いです。
「午後の授業説明をカルディナ先生にしてもらいます。カルディナ先生お願いします。」
「今から説明するからしっかりと聞いておけよ。邪魔した奴には問答無用で罰を下すからそのつもりで。」
もー、そんなに見られたら照れるじゃないですかー。特定の誰かに向けてのメッセージなんて依怙贔屓はダメですよ、センセ!
「あと、なんかムカつく顔をした奴もだ。」
「おーおー、人の顔に文句があるなら聞こうじゃないか!戦闘狂師!」
「ふっ、誰もお前のことだとは言ってないぞ。それとも自分の顔にコンプレックスでも抱いているのか?」
「そ、そんなことはない!俺はこの顔に異常なまでの愛着を抱いているに決まってるだろ!」
この野郎!教師のくせに生徒のことを馬鹿にするなんて許せん!
「カルディナ先生、コータ、その辺にしておくのじゃ。」
「すみません。」
「爺さんのくせに生意気な。」
でもまあ仕方ない。爺さんに言われるのは癪だが、俺が我慢することでこの場が治るならばそうしてやろうじゃないか。
このくらい上から行かないとやってられないので許してもらおう。
「話を戻すが、午後に行うのは三つだ。まず、一対一の個人戦だ。これは出来るだけパーティ内でやってもらうからそのつもりで。」
ん?なんであんなに苦虫を噛み潰したよう表情をしているんだ?
あ、さては!俺とかクオ達とかの相手を何かしらの理由をつけてやろうと思っていたのに素気無く却下されたんだな、そうに違いない。
却下した人、俺はあなたに感謝の意を表するぞ!
「そしてそれが終われば今度はパーティで魔物要員と戦ってもらいながらの模擬戦だ。これは指導しながらだな。」
魔物と戦ったことがない生徒もいるだろうからな。そういう意味でも試練なのかもしれないな。
「そこまでが終わって時間が空いていればパーティ同士で模擬戦をやってもやらなくてもいい。もちろん個人戦も可だ。そこまで時間は残らないだろうからな。」
あー、嫌だね。あんな分かりやすい顔されると嫌でも理解させられてしまう。その個人戦を許可した意味も。
周りの反応から見てあれは独断だな。もうカルディナ先生は減俸でいいんじゃないですかね。
「では詳しく説明していくぞ。」
長かったのでまとめるとこうだ。
まず最初の個人戦。これをパーティ内で行うのは、その相手の戦闘スタイル、癖、得意なことの中でも最も得意なことはなんなのか、またその逆で最も不得意なことはなんなのか。
そう言った様々なことを自ら戦うことで実感し、パーティで戦う時に連携しやすいようにするらしい。
そして次の魔物を想定したパーティ戦は、個人戦を活かして連携などを確認しながら、対魔物用のあれこれを教えていくらしい。まあ、これは模擬戦というよりも実技指導のようだ。
最後の各々好きにしていい的な時間は、まあ何をやってもいいんだと。
パーティで連携を確認するも良し、カルディナ先生の言うように模擬戦を行いながら連携を深めていくのも良し、一応個人戦も許可されたみたいだ。爺さん許すまじ。
「早速、始めていくぞ。時間も多くあるわけではないからな。この広さを十二分に活用して十一組から十二組ずつ行ってもらう。」
たしかに広すぎるくらいあるな。
それだけ一気に行うなら四回から五回で終わらせられるからな。
「では、今から名前を呼んでいきますので呼ばれた人から順に先生方の指示に従って位置についてください。」
書記くんが名前をつらつらと挙げていく。
「パイロとガス、アメリアとフリップ、…」
パーティ一つを一気に終わらせるんじゃなくて、一戦ずつさせるんだな。
まあ、そうした方が残りのメンバーは戦っていなくても見て学べるからな。
因みに、パイロ達は一組目のパーティ、次の二人は二組目のパーティだ。
「……クオとカイル、…」
あのカイルってやつの冥福を祈っておこう。ナムナム。
「実力近い奴と当たるって言ってたけどある程度なんだな。」
「そう言われる可能性のある方々は事前のパーティ仕分けの際に固まって分けられているんですよ。」
あー、納得です。
「セレスティアとキャロル、ウィテラと…」
「お、ティアとキャロルか。じゃあ俺はラディックとだな。」
「お互い頑張りましょうね、キャロル。」
「は、はい!セレスティア様!」
「な、なんで俺が…」
キャロルがやる気だな。でも、攻撃性のある魔法苦手なんじゃなかったっけな。
「俺たちも頑張ろうな、ラディック。お互い手加減は無用だよな!」
「無用なわけないだろ!」
「そんなこと言って実は?」
「手加減してください、お願いします。」
むぅぅ、こいつ最初とは全くの別人じゃないのか?
オールラウンダーの名が泣くぞ。
「まあ、これって後々の連携の為の個人戦だからな。分かりやすい程度に頑張ろうか。」
「そうだよな!頑張ろうぜ!」
急に元気になりやがって。
ふっふっふ、妙案を思いついてしまった。ラディック慌てふためく顔が眼に浮かぶようだな!
「よし、所定の位置についたな。準備ができたところは手を挙げてくれ。」
いいなー、みんな杖を取り出している。
俺もマイ杖買おっかなぁ。使う機会ほぼ無いだろうけど。
でも、一部が剣を取り出しているのは先入観がある所為でとてもシュールに見える。
だってここ魔法学園ですよ?
「始める前に一つ。くれぐれもやりすぎないようにしろよ。では構え!始め!」
あれ?思っていたのと違うんだが…
もっと合図と同時にドカーン!!!ドゴーン!!!的な感じを予想してたのにこれは。
各所から声が聞こえるだけで何も起こらない。
もう声がごちゃごちゃしすぎて誰が何を言っているやら。
こうなるのも必然か、詠唱必要なんだもんな。シュール過ぎて笑えてくるけど。
「ぐわぁぁあ!!!」「ガハッ」
などと思っていたら他とは違う声が。
その声の方に目を向けると、クオとリルの相手さんがやられた声だったようだ。
まあ、そうだよな。詠唱しなくていいのに待ってやる義理もない。
リルの場合は槍だったようだが。魔法…
ドゴーン!!!ドガーン!!!
あ、やっと予想していた展開だ。
やっぱり魔法って派手だよな。というよりも派手な方派手な方に行きがちというべきか。
あそこなんて竜巻と大きな火炎球がぶつかっている。
あっちにはナイアスが………
見なかったことにしよう。面倒だからって押し付けたりするのは駄目だよな、うん。
逸らした視線のままティアとキャロルに目を向けると、キャロルの目前に魔法陣が展開されているところだった。




