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創造神の力で異世界無双  作者: TKG
異世界ディファード
133/221

嘘泣き

「いたたたた、転んだのはいつ以来かな。転ばされたのは初めてだね。あはははは」


 この人ずっと楽しそうだよな。俺だったら理由はどうあれ、少しくらい怒ると思う。

 イケメンで、性格も良く器も大きい、実力もかなりのもので家柄だって侯爵家で文句のつけようもない。付け加える要素としては許嫁に王女様だ。さらには生徒会長ということは人望もかなりのものなのだろう。

 うっわぁ、ここまでだと逆に引いてしまいますわー。さっき会ったばかりでこれだけ知れたのだ。これから関わるにつれ、この人の凄さは身にしみていくような気がする。


 そんな人を転ばせてしまうなんて…

 俺今度こそどうにかなるんじゃないだろうか。パイセンからというよりもパイセンの周りの人から。


「でも僕だってやられっぱなしは頂けないなぁ。そうだ!魔技祭の競技に相手を転ばせた方が勝ちっていう競技を提案しよう!」


「そんな地味な競技通るわけないだろう。あまり適当なこと言ってるとまた怒られるぞ。」


 魔技祭ってなんだ?

 それもそうだが、今の一言だってそうだ。仕返しをするなら今すぐだってやろうと思えばやれる。

 魔技祭が何かは詳細は分からない。だけど、名前と言葉のニュアンスから判断するに体育祭みたいなものなのだろう。

 パイセンはその仕返しさえも楽しもうとしているように見える。

 昔の俺は言わずもがな、今の俺から見てもこの人は眩しすぎる。


「そうかなぁ。魔法を使うんだからそこまで地味にはならないと思うんだけど。そりゃ、さっきのコータ君みたいな空間魔法を使われたらそうだろうけどさ。」


「まあ、提案してみればいいんじゃないか?きっと小言を言いながらもどうにかしてくれるだろう。」


「あのー、その魔技祭ってどんなことをするんですか?」


 一応聞いてみる。


「魔技祭とは夏休み明けの少し後に行われる魔法競技祭のことだ。個人、クラス対抗と様々だが、その順位に応じたポイントがもらえ、最終的にはクラス単位の総合ポイントを競う。…」


 魔技祭は毎年行われている恒例行事で、国中から、友好国からもお偉方が観に来たりするそうだ。

 そこで功績を残した生徒は、卒業後魔法師団に引き抜かれたりもするそうで皆張り切って臨むそうだ。


 まあ、そこらへんはある程度予想出来たことだ。

 ただ一つ気になるのは開催時期だろう。え?夏休み明けってなんですか?聞いてな…いや、そういえば。

 あー、カルディナの授業でそんな感じのことやってたような…

 入学試験の延長みたいなのばかりだったから気にしてなかった。

 ま、その時のことはその時の俺に任せますよ!


「…というのが魔技祭だ。」


「そんな行事があるんですね。ありがとうございます、フェリシアお姉様。まあ、だとしたら出ないが吉ですね。」


 そんな偉い人が観に来ているところで直接目立てばどうなるのか目に見えている。

 強制参加型の競技はともかく、個人競技なんて出ないのが懸命な判断というものだ。


「それは駄目だよ!個人競技に出てくれないと僕と戦えないじゃないか!」


「そうですね。でも、自分の安寧と他人の望み、どちらを取るかなんて分かりきっていると思います。それに勝ち逃げという素晴らしい言葉があるじゃないですか。」


 そのせいでカルディナ先生にしつこくつきまとわれているわけですが。

 もう、そろそろ一度相手をしてわざと負け…るのは嫌だな。大体、戦えと言っておきながら本気を出して来そうにないんだよな。

 本当は勝てるはずのない相手に勝つ、勝たせられてる時の虚しさはなんとも言えない。

 カルディナ先生が多少なりとも本気で相手をしてくれるんなら俺も得るものがあるので対応する意味もあるんだけどな。


「でも、コータ君の意思は特に関係ないんだけどね。僕は生徒会長ですから!こう、ちょちょいと根回しさえすればね?」


「あ!汚いぞ!職権濫用だ!」


「これが僕の力さ!」


 なんか悪ノリを始め出すパイセン。


「お、おねえさま〜。グリター先輩が虐めてきます、助けてください!」


「なっ⁈わ、わかった!私に任せておけ!」


 服をチョンと摘んで、少しの上目遣い。目元は濡れ、雫がこぼれ落ちてゆく。

 あー、俺は嘘泣きなんかはできないので水魔法ですけどね。


「グリター貴様!私の可愛い後輩を泣かせるとはいい度胸だな!今度こそ息の根を!」


「あれ?息の根とか言っちゃってるよね⁈殺す気なのかな⁈」


「『捕らえろ!アレストソーン』!」


「だったら僕も捕まるわけにはいかないかな。」


 ひょいひょい躱していくグリター先輩。

 この人、さっきから魔法使わないですごいな。いや、使ってるな。幻影…いや、ちょっとした認識阻害の魔法か。

 よく見ないとわからないくらいの魔法だ。そりゃ気づかないと直撃は難しいだろうな。特にお姉様の魔法は間接的な効果が殆ど見込めないからな。相性の悪さもあるのだろう。


 それはそれとして、お姉様に頼ったのでその件はなんとかしてくれるだろう。副会長らしいからな。

 だったらこのバトル、俺も一肌脱ごうじゃないか!

 ついでにアレも少しだけやっておこうか。先延ばしにしすぎるのも良くないだろう。今回はウィテラ見ているようだし。


「『ウォータードラゴン』いけ!」


 ウォータードラゴンは魔法の内容よりも見た目にこだわり抜いた拘束魔法だ。

 竜化した竜族というよりも東洋の龍で、角、髭、鱗など細部にまでこだわった逸品に仕上がっている。

 それほど大きくはなく、どれだけ頑張っても百五十センチくらいだが、見た目重視のおかげでかなりの威圧感を醸し出している。

 ま、前述の通り拘束魔法なので特にそこらへんに意味はない。


 まるでシェ○ロンのように空中を漂う龍は荊棘を躱した直後のグリター先輩に巻き付く。

 この魔法は水でできているので力で振りほどけないのが厄介な点だろうか。


「ウィテラ、こんな魔法どうだ?見ての通り拘束魔法だからサポートっていうのはクリアだと思うんだけど。」


「あんないかにもな見た目で攻撃しないんだ⁈」


「ほら、そこはギャップが効果を齎すんだよ。今だってその驚きでグリター先輩が隙を作ったわけで。」


 タイミングもあっただろうが、多少なりとも隙を作ったのは本当だ。

 俺も予想外の効果を持っていたみたいで何よりだ。


「でも、攻撃しようと思えばできるぞ?口から水出したりは出来るな。まあ、その分小さくなってしまうけどな。」


「体の水使うんだ。」


 なんだよその呆れた感じは!


「口から水のレーザー出したと思ったらそれが水龍に変化して二匹に分かれて拘束、とかも出来るからいいと思うけどな。」


 使い方次第だと言いながらお姉様が懲らしめてくれている姿を眺める。

 うんうん、二度とあんなこと言いださないように懲らしめておいてほしい。


「なるほどね。じゃあ、この魔法教えてもらおうかな。」


「ウィテラが教えてほしい魔法があるなら言ってくれれば頑張るから何でもいいぞ。」


 水魔法でサポート系統の魔法と言われて思いついたのはこれだった。

 この見た目はともかく、水魔法は他の基本属性に比べて物理的なしなやかさという点においては群を抜いていると思う。

 まあ、前に魔法をつくった時に面白そうだからと作ったこの魔法が陽の目を浴びるのだ。子供の出世を喜ぶ父のような気持ちである。

 でもウィテラが使うときは鞭とかそんな感じになってるだろうけどな。


「そうだねー、長所を伸ばす方を考えてもいいのかなぁ。」


「まあ、色々と決まったら声かけてくれ。出来ればブリーシアと一緒に来てくれたら助かる。」


 バラバラでするよりも一緒にした方がいいように思う。時間的にもそうだし、クオ達もいると思うので人員的にもだ。


「分かった。あ、ルロイ先生が。」


「見兼ねて声かけに行ったってとこだろうな。」


 グリター先輩とフェリシアお姉様の方に歩いていくルロイ先生。

 助っ人役の二人が時間を取っているからかもな。それに今日は俺たちだけではなく、一学年全員での授業だ。迷惑をかけるわけにもいかないのだろう。

 二人には若干悪いことをしたように思う。

 ま、俺たちより進んでないところもチラホラと見受けられるけどな。


「そろそろよろしいでしょうか?貴方達が戦っていると視線を集めるので。」


「それもそうだね。コータ君、この魔法といてもらえるかな?なんだか振りほどこうにも上手くいかなくてね。」


 ん?たしかにこっちを見てる生徒が少しいなくも…どころか手が止まっているところが殆どみたいだな。


「会長にああ言わせるなんてすごい魔法なんだね。ぜひこれを教えてもらうことにしたよ。」


「見た目は関係ないから、そこをこだわらなければすぐに習得できると思うぞ。」


 グリター先輩のそれはちょっと違うけどな。

 何を考えてるのかは分からないけど、これを振りほどけないわけがない。


「コータ、説得しておいたぞ。もし、また同じことを言い出しても止めるから安心してくれ。生徒会が強制するなんてことはあってはいけないからな。」


「ありがとうございます、お姉様!ますます尊敬します!」


「お、お安い御用だ。」


 ウィテラ、そんな目で俺を見ないでくれ!

 薄々分かってはいるんだ。かなり取り返しのつかないところまで来てしまっていることに。

 そんなアホを見るような目を向けるなら教えないからな!

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