ホムンクルス
「エマおかあさーん!何か食べ物出してくれー、死にそう。」
「コータさん。お母さんなんて言わないでください!まだそんな歳じゃありません!でも、どうしたんですか?」
今日はなんやかんやで昼飯抜きだったので、休み時間にクオになにか出してもらおうと思ったのだが、その休み時間中クオの周りに人が殺到。質問の嵐である。
次もカルディナ先生の授業でさらに移動ということでそんなに続くことはなかったが、その移動中もクオの周りは、人、人、人。
ご飯にありつけなかったのだ。
帰って来る途中に串焼き一本でもと思ったのだが、クオ達が少しぐらい待てと買わせてくれなかった。
その結果が今である。
「クオ達が俺をいじめて来るんだよ。そのせいで腹ペコなんだ。何でもいいから飯プリーズ。」
「まだ準備中で用意できるものはパンくらいしか。何かあったでしょうか?」
「大丈夫だよ、エマ。後、一時間くらい待たせるよ。急がなくていいからね。」
な、なんて無慈悲な!
やめてくれ!部屋に戻るなら三人でどうぞ!俺は置いていってくれ!
「やめろー!エマー!助けてくれー!」
冷徹な三人衆に引きずられていく俺。
「私達だってお腹空いているのよ?少しくらい我慢しなさいよ。」
「ん。この責任の一端はコータにもある。少しは我慢する。」
「クオの不注意だったとはいえ、元はコータがラヴィに酷いこと言ったからでしょ?これは神様からの罰なんだよ。」
洒落になってないからな、クオ。
本当に無慈悲な神罰だよ。
この世に罰を与える神はいても、救いを与える神はいなかったようだ。
引き摺られながら今度からは俺もマジックバックに食べ物を入れておこうと誓った。
それに俺を裏切ってお菓子を食べていたティアに天罰を!
と言いたかったが、あの綻んだ天使のような笑顔の前に俺はあえなく黙認するしかなかった。
「大体、カルディナのやつみんながお腹空いて死屍累々としていること分かった上での、あの悪魔の所業なんだよ!」
「本当に驚いたよ。」
「ん。耳を疑った。」
「先生がどこかにいってるわよ?私もそれはダメでしょって驚かされたわよ。」
あんな奴、先生なんていらないね!
クオ達も同じように思っていたようだ。
なんとか五限を耐え忍んで、食べられなかったという絶望的な状況の後の六限目。
間食を持ってきていた裏切り者はそれほど多くなく、実技ということもあって殆どが空腹と戦うことに集中していた。
そうなると授業に集中できないわけで。
怒ったカルディナは理由を聞いてきた。そしてみんなしてですわがどうだの、ラヴィがどうだの、ホムンクルスがどうだのと言う。
もちろん俺もお腹が空いたと誰よりも大きく言い放った。
その直後だっただろうか?ごちゃごちゃと言うので聞き取れるはずもなく、もういいとすっぱり。
その後は授業が終わるまで訓練場内を走らされたのだ。
何故かみんなして俺に変な目を向けてきていたが何故なのか、どんな意味を持っていたのかは今でも謎である。
「「「分かってない(よ)(わね)。」」」
なんだよ。確かに分からないが三人も俺と同じように思ってたんだろ?
でも、なんだか今それを言うと確実に俺に不利な状況になる。と俺の感が言っている。
最近、こういう感だけは伸びてきているのだがどこか複雑だ。
やっと部屋か。
お尻腫れてるんじゃないかってくらい痛い。
ぐぅぅう
ん?あれれ?俺のお腹、ではないぞぉ!
「そうだよな、リル。お腹空いたよなぁ。うん、その気持ち痛いほど分かるぞ。うんうん。仕方ない、夕食まで小一時間ほどだけど何か小腹を満たす程度に食べよう!うん、そうしよう!」
「遠慮しておくわ。確かにお腹は空いてるけど、そのくらい我慢できるもの。それになんで私に言うのよ?」
その言葉には有無を言わせない迫力があった。
たが、その言葉の威圧とは裏腹に顔は真っ赤である。
はい、分かりました!これ以上このことに関しては触れません!
何か変なオーラ出てますよ!ヒィィイイ!
「女の子にそういうこと言うなんてコータ最低だよ。自業自得だね。」
「クオ様はお腹鳴ったりしないから余裕綽々。もちろん私も。リルエル頑張って。」
クオはお腹が鳴ったりしないらしい。
もしかしたら俺も鳴らないのか?確かに死なないとか、不変とかの特性があるんなら食べなくても平気だよな。
でもお腹空いてるから不思議だ。
まあ、食べなくても平気だろうけど、食べた方が頭の回転良くなったり、体の機能を動かすエネルギーになったりはするはずだ。
だから俺は食べます!例え必要ないと言われても食べます!
「ゴホン。それで?学園生活は楽しめそうかしら?色行こうとしなかった割には楽しそうに見えたのだけど。」
「最初は落ち込んでだけどね。」
「ん。自己紹介失敗したとか名前を言ってはいけないあの人を魔法で吹き飛ばして後悔したりしていた。」
名前を言ってはいけないあの人って。
違うぞ。ヴォル◯モー◯ではなく、噛んでしまったら一大事なリロコンだかロリンコだかだぞ!
レティがその対象にさえ入らなければ問題ないんだがな。
大体、幼女というカテゴリーに、ギリギリ中学生ほどに見えるレティが入るのがおかしいのだ。
「そのギリギリは撤回してもらう。私は立派な中学生。」
「いやいや、レティは中学生ではないからな。」
俺の思考を読んでの会話も慣れてきたよなぁ。
レティの頭の中はどんな思考回路をしているのか見てみたいよ。
「そういや、クオ。ホムンクルスってこの世界で成功してるのか?」
「成功してるよ。でも、あれは人族みたいな短命な種族に出来るほど簡単なものじゃないからね。ハイエルフや龍でも不可能に近いはずなんだよ。」
ホムンクルスを実際に作った人物はいても、今この時代にホムンクルスを作れる人材がいるかどうかは分からない、いないに等しいということか。
「まあ、人族お得意の後世に引き継ぐってやつで似たものは作られているかな。あの魔方陣の劣化みたいなのは人族でも作られているはずだよ。」
「ハイエルフ、龍の場合は単身で作り上げようとする。人族は一人でできない分、協力して作り上げようとする。こういうところにも種族の特性が出る。」
質か量かってことだろうな。
まあ、人っていうのは最終的には両方求めるものなんだろうけどな。
「確かに竜族は良くも悪くも頑固なところはあるわね。成果は書かれているのに過程が書いてない文献とかよく見かけるもの。それに、一から自分でやろうとするところもあるかしらね。」
人の力は借りない、人に力は貸さないということだろうか。
長寿故に出来ることが多いから、自分で出来ることはやる。の範囲が大きいのかもしれない。
「ホムンクルスは補佐には丁度いいから私も作ったことがある。だけど、何度か失敗した。」
うん。レティが失敗するんだ。
難しいという言葉がちっぽけに思うくらいには不可能に近いものなんだろう。
「ホムンクルスを作るっていうのは擬似的な人間を作るっていうことだからね。難しいのも当たり前なんだよ。」
「そりゃそうだな。そのレティの作ったホムンクルスはどこにいるんだ?」
「神界の私の家。うちのメイドは超優秀。」
ホムンクルスはメイドとして働いているらしい。
「あー、そういやこの前神界に行った時建物があったな。あれは神様の家なのか。ってロアが言ってたっけな。」
「一応言っておくけど、この話って全部世間話程度でする話じゃないわよ?内容は物凄くスケールが大きいのに世間話に聞こえるのが不思議でならないわ。」
もう隠す必要がないと思うと、普通に話してしまうな。
レティの家で思い出したが、俺達も家を買ってもいいかもな。
学園の生徒の殆どは寮みたいだけど、中には家から通う生徒もいるらしいし。
まあ、本当にこの町出身の生徒は極少数でその大半は貴族とかみたいだけど。
せっかく大金もあるし、きっとこれからも思いがけないお金は入ってくると思う。
気に入った町に家を買って転移陣で繋ぐのも面白いかもしれないな。




