日本現代話
少し短いです
あー、なんだろう。この学校だと思うと起きたくなくなる病気は。
最近は何もしなくても早く起きていたのにな。
学校だと思うと目覚ましがあっても起きれない時があったからな。
因みに今は二度寝と言うには間が空き過ぎている二度寝から起きた微睡の最中である。
どういうことかと言うと、昨日はちょっと寝たのが早過ぎたせいで四時頃に目が覚めた。寝るにはいい時間帯だと思ったのだが、改めて考えると二十一時前には寝ていたように思う。
そんなわけで四時に目が覚めたのだが、あの後三人は起きていたのかまだ起きる様子もないので、三日坊主にならないように剣の素振りを一時間程行ってきたのだ。
それでもまだ最初の鐘もならず、三人とも寝ているので汗を拭いて寝ているクオの横に寝転がって寝顔を眺めているうちに二度寝?をしてしまったわけだ。
そして最初の鐘が鳴り六時を知らせた音で目が覚めたのである。
起きたくない病を患い、必死に微睡んでいる最中だ。
これだけ考えられている時点で目が覚めているのは確実なのだが、俺の中の何かがそれを認めさせない。
「ほら、コータ。もう朝だよ。起きないと遅刻しちゃうよ。」
「コータがなかなか起きないのは珍しいわね。」
「私に任せて。」
お、レティが何かする気だな。
くすぐりくらいなら耐えてみせる!
「昔々あるところに、とある平凡な高校生がいた。」
「どうしたのよ、レティ。こうこうせい?なにそれ?」
「高校生は学生のこと。あとは聞いていればわかる。」
何か語りだしたぞ。
「彼は中学では友と呼べる存在は少なく、その少ない友も別の高校へ行ってしまったため離れ離れになってしまった。だから高校では今度こそ友達を、と意気込んだけど悉く失敗。ぼっち生活を送ることになる。」
あ、あれ、涙が…
「その期待は大きく、それが失敗したことで彼は学校というものに更に苦手意識を持ってしまった。彼の中にあったコミュ症は加速度的に酷くなってしまい、最終的には目覚めるのすら億劫になってしまった。」
「あー!よく!寝、た、なー!今日から楽しい楽しい学園生活の始まりだ!楽しみすぎてあまり眠れなかったせいかな?ちょっと寝坊してしまったみたいだ!急いで支度支度!」
「あ、起きたわ。でも、泣いてるわよ?」
「きっと感動して。今のは日本五大現代話の一つ。」
日本むかし話みたいに言うな!
そうだよ!感動したよ!感情が動いたよ!
悲しい方にだがな!
それにしても奇遇だな、レティ。俺はその話にとてもよく似た話を知っているぞ。
だからか思わず感情移入してしまった。
それだけだからな!
「駄目だよ、レティ。コータの過k」
「いやー、良い話だったよレティ。思わず目が覚めてしまうくらい良い話だった。ん?なんだ、クオ。俺の何だって?」
何を言おうとしているのだろうか。
何故だかその言葉は必ず阻止しないと行けないような気がした。
「な、何でもないんだよ。学園生活楽しいと良いね。」
「そうだな。きっと楽しくなるさ!きっと道中はスキップだろうな。」
「コータすごい顔してるわよ。そんな顔したらクオが可哀想よ。」
「はっ、いかんいかん。」
「効果覿面。日本現代話最強。他も聞く?」
さっきレティは五大とか言っていた。
今のが花咲爺だとすると、他にも桃太郎や舌切り雀みたいなのが四つもあるのか。
レティ、超危険。
「きーきーまーせーんー!高くなったMNDでもゴリゴリ削られているからな!やめてください。」
「仕方ない。次の機会にとっておくことにする。」
うん!早寝早起き頑張ろう!
次はどんな話をしようとしているんだ?あの話なんかされたら再起不能になるレベルだぞ。
「あっ、こんなことしている場合じゃないよ!急がないと初日から遅刻になるんだよ。」
「だーいじょうぶだって。八時ぐらいにあそこに着けば良いんだから。あと一時間半以上あるんだぞ?朝食食べてからでも余裕だって。」
「違うわよ、コータ。今日は八時までに学園長室よ?」
いつの間に⁈だがそれでも
「高校入学してからその考えで二十回以上遅刻している。たった三ヶ月でこの数は多い。」
「ぐはっ。何でそんなことまで。」
遅刻しても休んだことないからいいだろ!
まあ、休まなかったのは家にいるよりもマシだったからだが。
「とにかく急がなきゃだよ。早く着いたって悪いことはないんだからね。」
そりゃそうだ。
行かないわけにもいかないし、さっさと朝食食べて行くとするか。
「ほら、早くしないと置いて行くぞー、クオ。」
「ん。早くする。」
何モタモタしてるんだよ。遅れたらクオのせいだからな。
自分の行動が無かったかのように振る舞う俺とそれに続くレティ。
クオはいきなりの変化に唖然とした様子だ。
「え?う、うん。今行くよ。おかしいなぁ。いつ間にかクオが悪くなってるんだよ。」
「いつの間にそんな所まで移動したのよ。無駄に行動が早いわね。」
無駄にとは失礼なやつだ、まったく。
ーーーーーー
「時間通りじゃの。」
結局早くもなく遅くもない時間に着いた。ただ、クオがいなかったら間違いなく遅刻していた。
「俺は時間には厳しい人間だからな。」
「どの口が言っているのか甚だ疑問だよ。」
やはり流してはくれなかったか。
「それで何を聞きに来たんだったっけな?」
「筆記の点数じゃ無かったかな?他にはちゃんとした合格をもらいに、とか?」
「その通りじゃ。詳細な点数は後から来るルロイ先生にでも聞くといいのじゃ。今回は正式な合格を通達する為じゃ。実技も筆記も大した問題はなく無事合格じゃ。」
「もう昨日の時点でほぼ確定していたから緊張とかは無かったな。まあ、ティアと別のクラスになったりせずに本当に良かったよ。」
「ん。さすが賢者。私を見た目や年齢で判断せずに試験で判別したのは懸命。ほんの少しだけ見直した。」
あー、そういえば昨日不安だって言ってたな。
コンコン
「ルロイです。コータさん達を迎えに来ました。入ってもよろしいでしょうか?」
「良いのじゃ。Aクラスまではルロイ先生が案内してくれるのじゃ。その後はAクラスの担任のカルディナ先生に従うとよいぞ。」
異世界に来てまで学校に通うなんて思いもしなかったが、せっかくもう一度通うことになったんだ。
それに今度は前とは色々と違う。学園生活も色々と変わったものになりそうだな。




