うちの魔王様
昨日は予約投稿が出来てなくて投稿が遅れて申し訳ありませんでした。
うん。やっぱりザ・普通なんだが、それが逆に安心させてくれるな。
学園で食べた本格イタリア料理さながらのボロネーゼ的なやつは確かに大変美味しかった。美味しかったのだが、俺にはこの目の前に並ぶ居酒屋料理的な数々の方があっている気がする。
あれは俺みたいな一般人だと、高級料理を食べているという緊張感で料理の味などに集中し過ぎて楽しむということが出来ない。
だったらみんなでわいわいできるこの環境で、色々とつまみながら楽しむ方が俺は好きだ。
学園の食堂ということで、内装は少し大衆向けに作られているので慣れの問題かもしれないが。
「お昼に食べた料理も美味しかったけど、こっちもみんなで楽しめるから好きだわ。」
「クオはデザートが美味しいのが一番だよ。」
「ん。甘いものこそ至高。」
甘いのは三人が食べているのを見ているだけで十分だ。
この前、クオとレティがデザートばかり食べているような気がして、その量もかなりのものだったので、そんなに食べたら太るぞ。と言ったらかなりのマジトーンでレティが、
「神は不変。どれだけ食べても心配いらない。」
と言ってきたのを機にもう何も言うまいと決めた。
だって超怖かったんだぞ。太るか太らないかは関係ないのだろう。
その言葉自体がタブーなんだと思い知った瞬間だったな。
「明日の朝も今日と同じ時間だって言ってたよな。まだ寝るには早いんだよなぁ。」
「まだ寝たらダメなんだよ。筆記試験の前の約束が残っているんだからね。」
夜って特にやることないんだよな。
みんながいなかったら十九時ぐらいには寝ているかもしれないくらいには暇だ。
今度本でも買っとこうかな。それに、そこら辺の雑貨屋なんかを探せば地球でのアナログな遊び道具ならありそうだけどな。
過去の勇者が広めているはずだ。
リバーシとかトランプとか、ああいった分かりやすいやつなら元からこの世界にあってもおかしくない。これも今度探してみるか。
「特に約束はしてなかったはずなんだが。」
「コータ忘れたの?試験の時は離れて座らなくちゃいけなかったから離れる時に約束したじゃん。宿に帰ったらイチャイチャするって。」
「そうね。私もそう記憶してるわ。」
「はぁ。そんなこと一言も言ってないだろ。俺が言ったのは、それは宿でも、いつでも出来るから今は離れてくれって言ったんだよ。」
「光太の言う通り。クオ様もリルエルも拡大解釈は駄目。」
おお!今日は珍しく仲間がいるな。いつもは絶対に向こう側なのに何故かレティは俺の援護をしてくれている。
熱でもあるのだろうか?神が病気にかかるはずもないが心配だ。
「うーん。熱はないみたいだな。大丈夫か?レティ。」
「この対応はすごく不服。」
俺のおでことレティのおでこに手を当てるが、特に熱があるようには思えない。
不満そうにするレティだが仕方ないと思う。
今まで全くと言っていいほど自重しなかったレティが急に味方になったのだ。身構えてしまうのも仕方ないと思う。
「自分が関係ない時だけ敵に回るのはずるいんだよ!」
「そうよ、そうよ!コータはその手を即刻離すべきだわ!」
レティのおでこにあった手は、今は自然とレティの頭の上だ。
ついいつもの癖で。
言われては仕方がないので離すことにする。
するとレティは、
「光太が離そうと関係ない。私がくっつけばいいだけのこと。」
「ちょっ!危ないから!」
レティが抱きついてきた反動で椅子から落ちそうになる。
「おい!今は絶対に来るなよ!危ないからな!」
「問答無用だよ!とー、だよ!」
こんの、アホ女神共!
なんとかレティの行動につられて突撃してきたクオを受け止めたのだが、案の定と言うかなんと言うか
バターン
椅子ごと倒れてしまった。
「えへへ〜。今日はなかなか補充できなかったコータ成分の補充の時間だよぉ。」
俺の胸に頬擦りしてくるクオはとても可愛いのだが、だから場所を考えろって言っているのに!
ここはまだ宿の食堂だぞ。椅子から三人一緒に転がり落ちた音で注目浴びてるし。そうでなくても視線集めていたが。
「分かった、分かった。部屋に戻ったら好きにしていいから、ほら。離れてくれ。」
「クオ様危ない。」
元の原因はレティなのだが、予想できたはずの被害を被ったレティはクオを咎める。
クオは聞こえているのかいないのか未だ離れようとしない。
「あー、もう。みんな食べ終わったよな。じゃあ、部屋に戻ろうか。」
「そうね。いつものことながら、視線を集め過ぎているわね。」
この視線を集めたクオとレティは気にしていないが、俺とリルはなんだか居心地が悪い。
離れないクオは仕方ないのでお姫様抱っこをして持って上がることにする。
「よっ、と。騒がしくして悪かったな、エマ。また明日。」
「もう、慣れたました。この店の風物詩みたいなものですね。おやすみなさい。」
一応、いつものことだが騒がしくしてしまったので一言謝る。
なんで俺が毎日謝らなければいけないのか。少しは自分たちで謝ってくれないだろうか。
「エマ、おやすみ〜。」
「おやすみ。」
「おやすみなさい。」
一言ずつ挨拶を交わして階段を上っていく。
「コータ、ぜんし〜ん!我が波動を阻むものは何人たりとも許しはしないんだよ!」
「はいはい。分かったから、声を抑えろよ。ったく、どこの魔王様だよ。それで自分で歩く気は?」
「ない!」
わがままか!
「それで魔王様、どこまでですか?」
「我が居城、禍ツ神の神殿三◯六号室までだよ!」
うちの創造神様は魔王扱いされても気にしないらしい。それどころかノリノリだ。
魔王は禍ツ神の信奉者なのか?
「楽しそうね。」
「あとでリルもやってもらうといい。もちろん私もやってもらう。」
別にお姫様抱っこくらいならいいけど、この三文芝居はなしでお願いしたい。
「ほら、ついたぞ。下ろすからな。」
「ダメだよ!ちゃんと玉座までお願いするんだよ。」
多分だがソファのことだろうな。
すぐそこだしまあいいか。
「ほら、今度こそついたぞ。」
「よくやった、褒めてつかわす!」
そんなに楽しいか、これ。
「ありがとね、コータ。楽しかったからまたお願いするよ。」
「またやらせるのかよ。まあ、クオ軽いしステータスのお陰もあってこのくらいじゃ疲れないからいいけど、程々にしてくれよ?」
その後はさっきの会話通りレティとリルをお姫様抱っこしたり、色々とやらされた。
魔王様は肩車が気に入ったようで、魔王ごっこなるものをまたやらされた。
懸念は懸念に過ぎなくて良かったと思う。
リルは新たな目標を定めたけど、神とかでクオやレティとの接し方に多少変わってしまうかもしれないと思ったのだが、今まで通りで変わらずに楽しそうだったので良かったな。
「そろそろ時間も良い感じに過ぎたし寝ようか。このまま遅くまで起きてたら本末転倒だし、学園も明日が初日みたいなものだからな。初日から遅刻はできないだろ?」
それに何より寝ようと思ったら、どっと疲れが出てきたような気がする。
あ、もう無理。
「おやすみ。」
体力的にはまだ大丈夫だが、気力的な疲れがあったのかもな。
などと思いながら意識を手放した。




