魔王叶偉と魔術の話
魔王の部屋の中。
ルーランタンと15代目魔王叶偉の2人が、話していた。
魔王叶偉は、この城に〈人間〉はいないのか、と問いた。
ルーランタンは茶を濁す。
何故なら〈人間〉はいると言うにはいるんだけれど、いないと言えばいないからだ。
ーーー〈魔術〉を使える〈人間〉。
それは果たして、〈人間〉なのだろうか。
「〈魔王〉が召喚される度、一人の〈人間〉が〈選出〉され〈魔術〉を使う権限が賦与されるのです」
ルーランタンはそう言った。
この世界には、二種類の〈人間〉がいる。
女神の庇護に守られている者と、魔王の支配を受けている者だ。
〈選出〉を受けるのは、もちろん後者の方だ。
しかし問題は、その〈選出〉の方法だった。
魔王が死なないと次の〈選出〉はないので、少しでも〈魔術〉を使うのが上手い人を選ぶべきだとは思う。
だが〈選出〉の方法は簡単にして適当、やる気が無いのもほどがある。
《全人類(魔王の支配下の人々)〈魔術〉を賭けたビンゴ大会》
は毎回、盛り上がらないのだという。
当たり前だ。
別に人々は悪魔になるのは嫌ではない。
むしろ身分が上がるので喜ぶほどだ。
問題は、ビンゴの内容そのもの。
《内容》
・全人類(魔王の支配下の人々)は、ランダムに配布される自分のビンゴカードを持参して、絶極城の前にある「魔王運動公園」に集合して参加する。
・ビンゴは、15マス×15マス(計225マス)のカードで行う。
・番号は1~1000で行う。そして数字が書かれたビー玉サイズの玉が全て入った箱に〈司会者〉が手を入れて、出した数字がコールとなる。
・〈司会者〉は魔王が指名して、五時間以上〈司会者〉が仕事をした場合、一人目の〈司会者〉が二人目を指名する。
とまぁ、こんなかんじだった。
………早くて7日、かかるらしい。
それでも33人の〈司会者〉が必要である。
コールをする度に〈司会者〉が少し話すのも、聞いている方はキツいらしい。
それに途中で寝ていた分は、穴を開けられない。
そんなビンゴがあるか!
ちなみに、悪魔は1ヶ月に約3日(70時間)寝ればよいのらしく、大会中はずーっと起きているのだそうだ。
よって結論は、こうだ。
[悪魔達が楽しむお祭り]!!!
悲しい世界……
そしてルーランタンは最後に
「次の〈選出〉は、明後日です」
と言って笑った。
もっともそれは、〈悪魔〉の笑みだったが。
「話を戻そう」
ルーランタンは、〈選出〉の話で盛り上げ過ぎた時、話を戻した。
「〈魔術〉についてだ」
「そう、〈魔術〉を知りたい」
そう言う俺を何故か嬉しそうにルーランタンは見つめて、こほんと咳払いをした。
「まず、〈魔術〉は〈道具〉と同じだということを分かってほしい」
ルーランタンはそう言った。
「自分の力を、〈魔術〉\〈道具〉で使うということだ」
「力?」
そう言う俺の問い掛けは無視した。
「だから〈魔術〉の使い方を知知るということは、〈道具〉の使い方を知るということとほぼ、同じということになる」
「じゃあ、魔王である俺に〈魔術〉を教えてくれるんだな?」
せかすな、とルーランタンは偉そうに言って続ける。
「魔王様は、〈魔術〉を使えないと困りますからね。歴代の魔王様も、頑張って習得してきた〈魔術〉です。あなただって習得しますよ」
「ほーう、じゃあ今すぐ教えてくれ」
俺はせかす。酷い魔王だ。
「まず〈魔術〉には、5種類あるので全て覚えるところからです」
そうルーランタンは言って、
「・位置魔術 ・創造魔術 ・破壊魔術 ・回復魔術 ・解放魔術」
俺も口の中でくり返す。
「位置魔術。これは最も基本的で簡単な魔術です。物体を動かしたり、移動…いわば瞬間移動なんかもこの分類です」
「昨日の広間に移動したやつもこれか」
ルーランタンは頷いて肯定する。
「創造魔術。これは何か、その場になかった物体などを出現させる魔術です。昨日、魔王様の服が一瞬で変わったのも、この魔術が関わっています」
「じゃあ昨日ルーランタンが魔術のために唱えた呪文は、2つの魔術を使っていたんだな」
と言うとよくお分かりで、と嬉しそうにルーランタンは続ける。
「破壊魔術。基本的に物体を破壊、消去する魔術です。高度な上に危険です。結果的に何かを傷つけるのですから」
少し暗い口調で話す。
俺の頷きにも少し反応する。
「回復魔術。物体の修復、自己のエネルギーの移動などに使用します。物体の保存にも不可欠です」
あとは解放魔術だな、という俺の声を無視して、
「こんなもんですね。覚えるのは」
とルーランタンは締める。
「ちょっと待ってくれ、解放魔術は?」
そういう俺の問いにルーランタンは、
「まぁ、知らなくても困りません」
と話す。
問い詰められるとも思わないので黙っておく。
「次は呪文なんですが…。それも、今教えるのは止めておきます」
「なんでだ?」
ルーランタンはそう問う俺を寂しそうに見て言った。
「教えるのが難しいからです。堕天使長にでも教えてもらってください」
「ああ。分かった」
「では、これくらいですかね。質問は」
俺が頷くと、ルーランタンはそれでは、と言って部屋から出て行った。
しばらくして。
「誰だよっ!こんなところに濡れた雑巾たくさん置いたやつわぁぁ!」
というルーランタンの聲がして、
「あのボケこあくまめぇぇ!」
という悲鳴にも似たものが聞こえた。
そのあと、こあくま4人の笑い聲が聞こえたのは気のせいなのだろうか。




