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魔王生活っ!  作者: 山路みかん
1章 第15代目魔王 起床
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魔王叶偉と、こあくま4人

「ずいぶん前にもありましたよね。こんなこと」

「ああ。なんでも、人間は130デシベルを超える音には対応しにくいらしいわ。つまり対面式がうるさすぎたのよ」

「でしべるってなんにゃの?」

「なんだっていいじゃないの。要は、人間は弱いってことです」

「ああ……、そうだった……。ところで、今回の〈選出〉は……?」



 ん………ん?なんだ?

 ゆっくり目を開ける。

 どうやら、俺は……意識を失って、今覚めたようだ。

 此処は、魔王の部屋。

 倒れている俺を囲んで、何人かがなにやら話している。

 頭のそばで、何かを話されるのは…気持ちが悪いものだ。

 それにしても……誰が話しているのだろう。

 ゆっくり身体を持ち上げると、

「ひゃっ!」

「わぁっ!」

「なぁっ!」

「にゃっ!」

 悲鳴。

 そこには4つ子のような、顔のそっくりな4人の少女がいた。

 右から背の順で、綺麗に並んでいる。透明のような髪の毛が、光を反射させて虹色に光っていた。喪服のような黒いドレスに、赤いラインが何本か入っている。それがどこか不気味で、七分丈程度の袖から細い腕が見えていた。服装も顔もそっくりだというのに、表情だけが、バラバラだった。冷静そうに笑う子、少し不機嫌そうに目を釣り上げている子、やる気のないように細めの子、眠たそうな子。

 そんな悲鳴を上げられたら、まるで死んだ人がいま動き出したみたいじゃないか。

 俺は、生きている。

 俺の気持ちを害しているのを知ってか知らずか、4人の少女は話す。

「い……いきてるぅっ!」

「動いてるぅっ!」

「なんで?ねぇ、なんで?」

「にゃあ、びっくり」

 何なんだよ、こいつら。どこかふざけているようで腹がたってくる。

 そんなに俺が生きてるのが嫌か。

 魔王だぞっ。俺は。もしかして、舐められてる?

「いつもそうよね。召喚される魔王は、自分は魔王なんだぞって……いつも偉そうに……」

「言っとくけど、私達〈少女〉じゃないよっ!人間じゃないもん。こあくまって呼ばれてるの」

「なんで話が勝手に進んでるんだ? って思ってるでしょ? 私達こあくまは、人間の心を読めるんだよー」

「にゃぁぁ。私の言うことは……もうないかなぁ」

 驚いた。4人(匹?)がそっくりなのも驚くけれど、それよりも驚くのは4人の〈存在〉そのものだった。摩訶不思議なことばっかりを話している。あと、人間ではないなら、なんと数えるべきか……?

「4“人”でいいよ」

「“人”がいい」

「驚いてる驚いてる。ふふっ」

「みゃぁ」

 4人が同時に喋る。けれど、情報量が少ないので全て理解することができた。

 ……というか、気を失ってしまっていた俺は、どうすればいいのだろう……

「大丈夫、あと1時間もすれば、ルーランタンがやってくる」

「このあとのことはルーランタンが話してくれる」

「詳しくはルーランタンへっ!」

「そうにゃの」

 4人目はさっきから何を言っているのだろうか。セリフの度にする猫のポーズが愛らしい。

 にゃ……猫?……まさか。しかしリアルな可愛さがある……。

 おっと……“読まれ”たら面倒だ。

 思考を止める。

 話を変える。

 質問をしてみる。

「えーっと……君たちは、この城でどんな仕事をしているの?」

 なんでもないが、気になっていたことを訊いてみる。

「私は、なんでもやさん」

「雑用、かなぁ」

「コンシェルジュ!」

「…メイド?」

 なるほど。そんなところね。みんな違うことを言ったが、具体例が多々挙がって、かえってわかりやすかった。

 それでは次の質問だ。

「じゃあ……〈魔王〉の仕事ってなんなの?」

 これこそが核心だ。俺が知りたいこと。というか、まだ知らされてないことが多すぎる。

「ルーランタンに訊いて」

「ルーランタン、かなぁ」

「詳しくはルーランタン」

「私達は、教えにゃーい」

 あーあ。まぁ、わかりきった答えではあったけれど。

 そう言われてしまえば仕方ない。

 また、話を変える。

「4人には…名前とか、ないの?」

 4人は、少し黙ってから答えた。

「シュン」

「カァ」

「シュウ」

「トォ」

 んんん? まじか。

 4人は続けた。

「アサ」

「ヒル」

「バン」

「…意地悪…えーん」

 はぁ? またもやふざけているようだった。それにこの流れは、どこかのカッパが歌っていたような気もする。。

「トォ」

「ドォ」

「フゥ」

「ケン」

 トォが被ってるぞ、おいおい。というか、こいつら都道府県。知っているのか? それともなにか、別の存在があるんだろうか。

 次、続けたらしつこくないかと言おうとしたのだが、それを言う間もなかった。

「シン」

「ラ」

「バン」

「SHOW!」

 ……ヤバい、カオスだ。もうさすがにしんどい。

「ストップ!! わかったから!!」

 腕をぶんぶん降って、俺は4人を制止する。このままだといつまでもふざけられかねない。

「トォと、バンが被っていた」

「正解っ!」

「よくわかりましたね!」

「まるっ!」

「にゃぁん」

 ふふ、この程度、まかせておきなさい。

 って違う! 違う違う違う違う違う違う!

 俺が言いたかったのはそれではない!

「……お前ら4人に、名前はないんだな」

 そう。これだ。

 そう言われた4人は、うつむいて黙る。けれど、彼女らからは寂しそうな何かはあまり感じ取れなかった。

「うん。ないの」

「あっても、意味ないでしょう?」

「なくても、いいじゃん」

「にゃい…」

 〈あっても、意味ない〉

 つまりは、そういうことなのだろう。そういう世界観、なんだろう。

 もしかして俺も、この世界では「魔王」としか呼ばれないのだろうか。

 そんな俺の心を読んだのか、

「君には名前、あったんでしょう……?」

「〈前の世界〉の……」

「教えてよ、あるんでしょ? きっといい名前が」

「にゃん」

 俺の名前、かぁ。

 こういうのって、自分の名前を言うのって。

 なんかこっ恥ずかしいんだよな。何故か。昔からそうだった。

「かい………叶偉かいって名前だったよ」

 この世界には、漢字はないような気がする。

 けれど俺は、自分の名前に漢字をのせたような気持ちで、その名前をいった。4人が真剣な顔できくものだから、恥ずかしさはどこかへいってしまった。

 4人は静かに俺の名前をきいて、

「かい」

「かい、かぁ」

「かーい」

「にゃーい」

 そう4人は別々に呟いてから、初めて口をそろえた。

「「「「面白い名前だねぇ」」」」

 〈面白い名前〉。

 良い名前、ではないのかい。

 そう言う、4人が、一番面白かった。

「初めてだよ。そんなこと言われたの」

 えへへ

 ひひ

 ふふ

 にゃぁぁ

 四人四色、別々に笑った。

「かい君」

「かいさん」

「かいちゃん」

「かいにゃん」

 4人はそう言って、かしこまる。

 少し間をあけて、口をそろえた。

「「「「魔王叶偉様、これからもどうぞ私達こあくま4人をよろしくお願いします」」」」

 ふざけていた姿はどこへやら、いつの間にか4人は同じ神妙な顔をして、恭しくそういった。

 つまり、こちらもそれに答えるべきで。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 そういうと、4人は口許を綻ばせて、やがて堪えきれないといった様子で、笑った。

 それにつられた俺も含めた5人で、ひとしきり笑った。

 その後こあくま4人は、それでは、と言って部屋のドアに近づいて言った。

「もうすぐ、ルーランタンが来ると思いますので」

「あと少しで、来ると思います」

「私達は、失礼します」

「にゃあ、またこんどね」

 そう言って、魔王の部屋から静かに出て行った。

 ……………………

 一人になって。

 しばらくして、俺は思う。

 あんな子達に、“前の世界”でも会えていたら、きっと。

 なんてことを。

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