カナとプリン 6
私達が卵を貰ってきたとほぼ同時に、魔王叶偉が絶極城を出ていった。
魔王か〈選出〉者、どちらか一方が絶極城出ていった場合、もう一方は留まっていなければならない。そのことを何度も思い出しながら、私は温水を撫でる。
別にそんなことはどうでもいいのだ。
何ら、問題ではない。
問題は、私の師匠サネが話した物語。
それは、いつまでたっても私の脳内から出て行こうとしなかった。
魔王ミサキ、〈選出〉者リフリア。
そして、〈闇に隠れし悪魔〉ルーランタン。
私が知るはずのない彼らの物語は、何かの呪いなのかと思うほど、簡単に忘れることのできるものではなかった。
頭の中があの物語でどうしようもなかったので、私は今自室のお風呂で体を温めるとサネに言って独りきりの時間を作ったのだ。
ーー独りになれば、少しぐらい。と、解決を期待していたものの、一向にその物語が私の頭から離れようとしなかった。
「ひゅーーわ」
気付くと、私の口からは長く重たい息がこぼれ落ちていた。
前に暮らしていた家のバスルームより比べものにならない大きさの、今の私のお風呂。
今ごろ、父と兄、妹はどうしているのだろうか。私が〈選出〉者になって家には大金が入ったはずだ。そう思っても、未だに罪悪感が残る。ゆえに、私がこのお風呂に入るときは、ちょっとした緊張感を共にしていた。
しかし今回、今日は。
緊張感どころではない。
あの、物語が………。
『ふっへっへー。悩める乙女よ。何を物思いに耽っているのかね?』
突然の少年の聲。
「わってまっと!」
口で意味不明の言葉が暴れ出す。
……ルシファアだ。
「ルシファア!出ていけ!わっ私は今、裸なの!ただでさえ!私の部屋に入ってほしくないのに!」
手足をバタバタさせてもなにもないので、つい師匠サネから教えてもらった魔術の知識が爆発した。
「デ・デデスルノーン・クロダ=バル・ウオーター!!」
お風呂のお湯が宙に浮き、盛大な音と共に飛び散る。位置魔術と破壊魔術の掛け技だ。
『きっきみの裸は見ないから。だっ大丈夫だから』
ルシファアの慌てる聲が聞こえて、私は今自分がなにをしたのか見えてきた。




