ルシファアのボケ
ルーランタン達を待ち続けて八時間が経った。五時間で帰って来ると言った約束はどこへやら、魔王である俺は深くため息をついた。
「かーい、もう帰ってこないよ」
「事故にでも遭ったんじゃない?」
「あの人たち、良い人たちだったのにねぇ…」
「ただいまより、追悼式を…」
なぜか盛り上がるこあくま四人を横目に見やる。今や笑顔で追悼式を始めた。
「お前らなぁ…」
そう言いかけたものの、俺は言葉を飲み込む。なぜなら、こあくまたちの力を思い知った後だったからだ。
「続きまして…」
「追悼の一句を…」
「第十五代目魔王の…」
「かいにゃん、オセロがこの中で一番弱いかいにゃんにお願いしまぁす」
俺は黙ってこあくまたちを睨む。こあくま四人は笑顔で返す。目が笑っていないのにとても楽しそうだ。これぞこあくまの笑み。
「わ、わかったよ…。…では、追悼の一句…」
仕方なく、小さく言う。…でも追悼の一句ってどんな風に言うんだ?知らねえよ…。
「え、えとぉ、そのぉ…」
こあくま四人の輝く瞳、うろたえる俺。さあ、どうしよう。
「夕暮れの……」
こあくまたちの目が点になる。俺も自分で何を言っているのかわからない。
そのとき、俺にとって救いが現れた。
『なにやってんの、魔王叶偉よぉ……』
むむぅっ!この聲は!
「ルシファア……?」
振り向いたところに、少年の姿をした堕天使がふわりと舞い降りた。着ている白い服がなびく。
「かい……ついにおかしくなっちゃった……?」
「げんかく……か……」
「ルシファアがここにいるわけない……」
「かいにゃんくるったぁ……」
やっぱり四人目がキツい。そんなことを後方に思いながら、確かにいるルシファアに話しかける。
「なぁ、ルシファア。やっぱりみんな事故で……」
ゆっくりと言いかけた俺を見て、ルシファアは急に真顔になる。
『……実はそうなんだ……。カナもサネもルーランタンも、とある人間に……』
急な出来事に、思わず絶句する。そんな俺をみて何を察したのか、ルシファアの聲が聞こえないはずのこあくまたちも真剣な表情になって黙る。
「で……ルシファアだけが帰ってきたと……」
『うん』
俺の肩がふと震える。なんともいえない感情が俺の脳内がうごめく。
「なに一人で帰ってきてんだよ」
『え』
ルシファアもこあくま四人も静止している。
「なに一人で帰ってきてんだよ!なにかしら努力はしたんだよな?カナ達を守るために!」
ルシファアの両肩を大きく揺さぶった俺の声は甲高い。
揺れるルシファアの顔は完全なる無表情。
『…………えと、叶偉。………非常に言いにくいんだけど……』
は?言い訳だろうか。仕方なく慈悲深い俺は聞いてやることにした。
『全部嘘』
「ぬわ?」
『全部嘘』
沈黙。静寂。意味が全くわからないこあくま四人。
こういうボケ、やめて欲しいなぁと思った俺なのであった。




