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魔王生活っ!  作者: 山路みかん
1章 第15代目魔王 起床
20/26

カナとプリン 5

 ルーランタンの聲が、カナの耳に入っては出ていく。

「………と、いうことで、今晩はルハルナ養鶏場で泊まることになりました」

 今はもう陽が落ちて、灯が灯されてきた頃。カナは早起きな分、夜は早いのだ。

 くわーあ、と大きなあくびがカナの口から漏れ出す。横にいるサネが睨んで、カナを注意する。

「カナ、ルーランタンの話聴いてた?」

「うん。聞いてた聞いてた。ここで一晩過ごすんでしょ」

「なんでここで過ごすのかは?」

「……………?」

「こら!」

 眠たいんだから仕方ないじゃん、とカナは唇を尖らせるが、サネは睨む顔を止めない。

「じゃあ、一人一部屋割り振ったから、よくきいてー」

 修学旅行のようなトーンで、ルーランタンはみんなに言った。

「二階に上がって、右から私、サネ、カナの順番」

 じゃあまた明日!とテンション高めでルーランタンは二階へ向かう階段にダッシュした。

『それにしてもルーランタン、テンション高いよねぇ。あれかな?泊まりはテンション高くなる系男子』

 カナが無視するのをルシファアは見届けて、

『おやすみ』

 と言って消え去った。

 普段ルシファアが消えているときは、いったいどこにいるんだろうと、カナも思ったことはあるが、今考えるのは止めておく。

 サネもおやすみと言って部屋に行くのだろうと思っていたら、サネはこんなことを言い出した。

「カナ、ちょっと話があるんだけど…」

「えー」

 もう寝てしまいたい、とカナはサネに抗議する。その抗議のおかげか、

「分かった。明日するから早く起きてね」

 とサネはすぐ折れた。

「うん。早く起きる」

 そう言ってカナは、もう限界だと言わんばかりの足取りで階段に向かう。

「おやすみ」

 サネはカナの背中にそう呟いて、置いてあったアームチェアーに座る。

 サネにしばらくそこで考え事をしていたが、やがて

「ルシファア、そこにいるなら聞いてくれ」

 とルシファアを喚んだ。

『やあやあ。サネ。君が私を喚ぶのはいつぶりかな』

 そのルシファアの聲は、サネには聞こえないのだけれど、サネはその聲を聞いたかのように続ける。

「久し振りにルシファアとは話すね。もっとも、僕には君の聲がもう聞こえないのだけれど」

 寂しそうに呟くサネにルシファアは応える。

『私には君の声が聞こえるよ』

 サネは悲しそうな顔をしたまま、続ける。

「ルシファアに聞こえてさえいたらいいんだ」

 ルシファアは笑顔で頷き、「話があるんだろう?」とサネに聞いた。

 もちろんサネは、その問いに答えなかったけれど、話し始めた。

「話があるんだ。ルシファア。君も察しているかもしれないけれど、…ルーランタンと、その恋人だった人の話だ」

『……………』

「……………」

 沈黙が訪れる。

「ルシファアが、昔僕に話したお話を僕はまだ覚えていたんだ」

『リフリアと、ルーランタン…』

「ありえるはずのない、恋の話」

 ルシファアとサネは、現在二人しか知らない話を、恋の話を、今一度思い出した。

『君の、一つ前の〈選出〉者、リフリア』

「僕の、一つ前の〈選出〉者、リフリア」

 ルシファアとサネがそう言ったのは、ほとんど同時だった。

「でも、僕は14代目」

『そう。君は、14代目」

 ルシファアは、うつむくサネの背中をさする。

「この話を、カナにしてもいいのでしょうか?」

 ルシファアは、サネの背中をさすったまま、答える。

『君一人で抱えるのは、ややきついかもしれない。けれど、このことは誰にも話すなと私は前にも言ったよね?』

 サネにはその応答は聞こえていない。

 ルシファアにできるのは、願うことだけ。

 サネは一晩中、そのアームチェアーに座って考えていた。






 次の日の朝のことである。


 カナはいつものように朝早く起きて、顔を洗った。特に今日はサネから呼ばれている。はやく一階に降りなきゃ、と急いでルーランタンが用意してくれたパジャマを脱いで、着替えた。

 部屋を出て、階段を下りる。

 その先には、サネが木製のアームチェアーに座っていて、カナの姿を見ると「おはよう」と声をかけた。

 サネの座る椅子の、反対側に置いてある椅子にカナは座って、サネが話し始めるのを待った。

 少し経ってから、サネは口を開いた。

「これは、ある悪魔と人間の、ありえるはずのない恋の話………」

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