カナとプリン 4
カナ達はルーランタンの魔術によって、人が経営している養鶏場に移動した。
「さあ、まずプリン作りの大事なもの“たまご”を盗み出……いえ、もらいに行きましょう」
慌てて言い直したルーランタンは、カナ、サネ、そしてカナにしか見えていない“少年の姿をした堕天使長”ルシファアの方に向き直る。
『プリンって言えば、まずたまごだもんね』
そう言ったルシファアをカナは無視するので、実質堕天使長が独りで呟いたように見える。
『ねえカナ。君が私を無視していたら、とっても寂しいんだけど』
「ふんっ。るーちふぁ!黙ってないと本当にこのままあなたと話すことはないわ」
『こんな〈選出〉者、他にいたっけ…?』
困ったように首をかしげるルシファアはサネを見て呟いた。
『君はずいぶんとおとなしい子だったよねえ…。あの〈魔王〉とも兄弟のように仲良くしていたね…』
三十年ぐらい前の話を、もうルシファアの聲が聞こえるはずのないサネにする。
カナはもはやこちらを見ていないので、サネに話しかけても邪魔するのは誰もいない。
「さあ、養鶏場の方へ入りましょう」
ルーランタンが一人でずかずかと、人の所有地に入りこむ。
「カナ、行くよ」
サネがカナの手を引っ張ってその後に続く。
その最後を、大きなため息をこぼした堕天使の長がふわふわ浮きながらついていった。
ルーランタンは、養鶏場の玄関らしきところを突っ切っていき、養鶏場を経営する人を探す。
「あれあれ。いつもは此処にいるのになあ」
ルーランタンはゆっくり呟き、仕方ないとばかりに魔術を唱えた。
「デ・デデスルノーン・リフリア・マスター」
ぼっはん、という音といつもの光と共に、一人の女性が姿を現した。
女性はとても驚いた様子で、震える声で話した。
「ル、ルーランタン様!わがルハルナ養鶏場にな、何の用でしょう…?」
「ああ、“ルハルナ”だった。間違えて悪かった。そうそう、“ルハルナ”養鶏場の管理人か何かをよんでもらえるか」
女性は頭を垂れて「かしこまりました」言うとともに、部屋を飛び出ていった。
『リフリア…ってたしか、ルーランタンの昔の愛人の名じゃなかったかな?』
ルシファアは呟き、カナは吹き出しかけた口を押さえた。
とっさにカナはルシファアを睨んだが、ルーシェルは知らぬ顔。カナのルシファアへの怒りがさらに大きくなったようだ。
しばらくルーランタン達が待っていると、養鶏場の管理人か何かであろう男性が現れた。
「これは、ルーランタン様と現〈選出〉者並びに前〈選出〉者様。わがルハルナ養鶏場に何を」
ルーランタンが何か聲を発する前に、サネが割り込む。
「あなたがルハルナ養鶏場の管理人、責任者であるならば、一つ尋ねたいことがある」
あまり口を開かなかったサネが口を開いたので、ルーランタンをはじめとする一同の注目がサネに集まった。
「先ほど、現れた女性。その方の先祖に、〈選出〉者はおられませんか?」
十分な時間をかけて、男性は口を開いた。
「恐れながら申し上げます。私は、そのような事実を存じていません」
「そうですか」
ルーランタンは二人の会話が終わったのを見計らって、話し始めた。
「では本題に入ります。たまごが欲しく、ここに……」
ルーランタンと男性が話す。
その間、ずーっとルシファアが呟いていたのをカナは聞き漏らさなかった。
『サネ、よくもまああんな昔に私が話した話しを覚えていたよねえ…。まあ、カナが動かないと、サネがどこまで解っても意味はないから……。まあ楽どうなるのかはそのうち解るだろう…』




