カナとプリン 1
カナのプリン愛が伝わってくるお話です。
『君がさっき食べないって言ったからでしょう?』
「うるさーい!堕ちた天使、るーちふぁ!」
二人の叫びが響く。
「な、なあカナ、いくらなんでもるーちふぁっていうのは…」
「大魔王を自称するかいは黙ってて!」
いや、でもるーちぇりゅっていうのは変で……。
と出かけたが、慌てて俺は黙る。
怒っている女子には近づくな。
君子危うきに近寄らず、である。
只今、ルシファアとカナが喧嘩をしていて、その中にわざわざ俺が入る必要はないと判断した俺は黙って見守る。
本当は見守りたくもないけれど、喧嘩の舞台が魔王の部屋なので仕方なく観戦することにする。
「私がわざわざ持って来たプリン!それをなんで生きてるかも分からないあなたが食べるのよ!」
『いや、私だってご飯は食べるし、プディングの誘惑にだって負ける!』
どこか偉そうに宣言した少年の姿をした堕天使長は、カナに向き直る。
『そもそも君が、自分のプディングを魔王の机の上に置きっぱなしにしているのが悪いんじゃないの?』
ルシファアの口撃は続く。
『君のプディングへの扱いから、そんなに大切に取っていたわけではないように思う。それなのに、プディングを取って食べただけの私に怒るのは間違いだ!』
「うるさいわね!プディングプディングって!その言い方をまず止めなさい!」
『いいじゃないか。こっちの発音が正しいんだぞ。いいか。よく聞いてよ』
白熱した言い争いを、暖かい目で見守る。
『pudding_』
「格好付けなくてもいいわよ!」
おお。だんだん笑える争いになってきた。
吹き出しそうになった口を塞ぐ。
「ルーランタン!」
そう言ったカナに反応して、どこからともなくルーランタンが現れる。
「カナ。どうした?」
「ルーランタンさん、プリンってある?」
ルーランタンはしばらく考える仕草をして、言い切った。
「そういえば、一週間ほど前に全部消えた」
るーちぇりゅのせいだ………!
吹き出される笑いをなんとか押さえて、俺はカナの方に目をやる。
「あ、ありがとうございます……。ルーランタンさん……」
明らかに絶望しているカナを見て、ルーランタンは呟いた。
「作るのは可能ですよ…?」
「…………………☆!」
カナの目が星マークに輝く。
「作ります!作り方を!教えてください!」
とても大きな声でお願いしたカナを、半分引いたような形で、ルーランタンは呟く。
「じゃあ、みんなで作りますか。手製のプリン」
……。いいですねえ。手作り。
いいですねえ。みんなで作るの。
「かい、るーちふぁ、作るわよ!」
『よーし!』
そう意気込むルシファアに反して。
「……へ?」
俺は間抜けな声を出すしかなかったのだった。




