魔王叶偉と〈選出〉者
赤々とした魔王の部屋には、大きなシャンデリアが存在する。そのシャンデリアから発せられる燦々たる光を浴びて、ルシファアという名を持つ堕天使長は、第15代目魔王と喋っていた。
『きまったねぇー………。多分歴代で一番早いんじゃない?』
そう言うのはもちろん、先程の〈選出〉についてである。
「いいじゃん、こっちの方が。いっそのこと、俺が死んでもずーっとこれでいかない?」
『駄目ですっ!ビンゴで決めるっていうのはお決まりなんですっ!この伝統破りの新米魔王めっ!』
「ルーランタンでも乗り移ったんじゃないのか、お前。なんかそんな感じがするぞ」
そう俺が言うと、一緒に笑う。
だいぶ、俺がこの世界に馴染んできた証拠だろう。
『ルーランタンと言えば、あの〈選出〉者が魔王の側使いってことだよね』
「そういうことだな……。あの少女が…」
『ちょっと!なにか変なこと考えてちゃ駄目だからねっ!』
「そそっそんなこと…考えてなんかか…」
『ちょっと……。本当に不安になってきた……』
し、失礼な堕天使長だだ…。
偉大なる魔王に向かって…。
いや、これは俺が歴代の魔王に失礼なのか。
そんなことを思っていたら、どこからか無愛想な聲が聞こえてきた。
「魔王様、〈選出〉者が面会を所望です」
「………………」
タイミング、おい。
『通せ、って言いな。早く!』
どこか笑顔でルシファアは俺に囁く。
「と…通せ…」
裏返った俺の声を聞いて、魔王の部屋の扉が開いた。
その開いた扉の奥に。
少女ながらに凛々しい瞳が映った。
少女といっても、俺より背丈は高く年上に見える〈選出〉者は、一切揺れることのない瞳孔で魔王である俺を直視していた。
礼もせず、笑いもせず、その〈選出〉者は1人魔王の目先すぐまで歩いた。
そして、口を開ける。
「私は先程選ばれました、第15代目〈選出〉者です。あなたが、代15代目魔王でよろしいですか」
怖い。
「よ…よろしいです…」
「そして、その後ろにいる少年の姿をした堕天使が、ルシファア様でありますか」
『そうだよー』
ルシファアは可笑しくてたまらないという風に笑っている。
『ねぇ、きみ。いくらなんでもサネか誰かから教えられたセリフ2つ言うのに緊張し過ぎじゃないのかな』
さすがは、なるほど。怖く見えるのはそのせいか。
「る…るしふぁぁさま、なぜわかったのですか」
完全な棒読みで問う〈選出〉者は、先程の凛々しい瞳はいずこへ、もう泣き出しそうな涙目がよく見える。
『きみみたいな〈選出〉者はよくいるんだよ。特にそういうプレッシャーは、魔王とかにも伝染するから、分かりやすいんだ』
ほほぉ。
…っておい。おいおい。
この〈選出〉者。
「…見えるの…?ルシファアが…?」
間抜けな俺の声がルシファアに向かう。
『あれ。言って無かったっけ。言ったと思うんだけど…』
あ…?
『〈選出〉者には、僕が解るんだよ』
「………聞いてないよ。ルシファア?」
『そっか。じゃあ今言ったよ!』
なんでまたそう笑顔なんだ。ルシファアは。
まあ、それは仕方ないとして。
「じゃあ今、正式に代15代目〈選出〉者の君を俺の側使いに任命する!」
そう言った俺の言葉を。
なぜか〈選出〉者とルシファアが可哀想なものでも見るかのような目つきで眺めていた。
「………じゃあ、よろしくね‥?」
沈黙を破った俺の言葉を〈選出〉者は
「…うん」
というなんともいえない答えで返した。
『大丈夫かなぁ』
というルーシェルのため息混じりの聲を俺の耳が捉えた。
多分、そこから俺の本当の【魔王生活】が始まったのだと思う。




