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ふたつの鼓動  作者: 入山 瑠衣
第二章 神王国との同盟
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間話『妙な違和感』

 気がついたら、相変わらず豪勢な柄のソファーに座らされていた。

 誰の仕業かはわかっている。私にこんなことができるのは他の誰でもない、ソフィだけだ。


 案の定、向かい側に位置する、こちらもまた豪華なベッドに腕組みをしてちょこんと座っていた。どうやら私が目を覚ますのを待っていたらしい。


 かわいいなおい、とか思ったのは言うまでもない。


 それならば私の意識を失わせなければいいものを、と思ったが、口に出したら何か予想外なものが返ってきそうなので飲み込むことにしよう。


「まったく、油断したぜ……」


 ため息をつくが、ほんとに言葉の通りだ。

 こう言う行動に出る時は基本、3パターンの理由が考えられる。


 一つ、私が他の女性と話していたから嫉妬した。

 二つ、何か意図することがあって(おこな)った。

 三つ、気分。


 今回はいったいどれだ?

 正直、他国の騎士団を相手にするより難しいんじゃないかと毎度の如く思わざるを得ない。乙女心は何となくはわかるような気がしないでもないが、やはり(いま)だに完全には理解しきれない。

 だって私は男だもの、なんてことは女性陣を敵に回す、か。


 さて、どうしたものか……。


「それで、今回はどのようなご用件であらせられるのですかな?」


 座り直して正面から見つめ合う形にする。


 やはりこういう時は聞くのが一番でしょ。考えても仕方ないからな。相手の意見を聞いた上で、交渉に持ってくのが私のやり方さ。

 まぁ、こう言っておきながら時と場合、あとは相手によって変えるんだが……それこそが私のやり方だな。

 だから今のソフィに対しては聞く。


「言いたいことはたくさんあるけど、聞きたいことは一つよ」


「ああ、全部聞くさぁ」


 ……こりゃあ、今日寝れないかも。


「まず聞かせてほしいのは、あなたは今回のファーレント王国の動きに違和感を感じなかった?」


 首を傾げながら訊いてきた。


「んー、違和感ねぇ」


 同盟についてじゃなくて、そっちの違和感ね。さすがは我がお姫様だ。ちゃんと見るべきところは見てるんだよなぁ。

 で、一番気になってるのは――


「まぁ、あの少年には違和感しか無かったがな」


「それは彼の存在(・・)について、それとも彼の周り(・・)について?」


 今度は逆の方に首を傾げる。


 ミカヅキ・ハヤミと言う者の存在が変なのか、ミカヅキ・ハヤミを取り巻く周りの者たちが変なのか、失礼ながらこう言わせてもらおう。


「――どちらも、だな」


「やっぱりね」


 うんうんと納得したように何度か頷いた。

 あら、意外とあっさりしてるな。もっと問いただされるかと思っていたんだが……ま、これはこれはよしか。

 それから私は自分の考えを、今回の一件をまとめながら話した。


 まず、他国の情報は少なからず入ってくる。王族の周りならば念入りに調べるのが常。

 先日、ファーレント王国の国王が亡くなったことは知っている。暗殺やらなんやらと言われているが、詳しい原因までは不明。

 そもそもどうやってあんな男を殺したのかが気になる。


 直後、入れ代わるように突如現れた謎の少年。ミカヅキ・ハヤミ。空から光に包まれた物体が城に落下し、その中にいた、と。


 そして、何故かミーシャ姫は得体の知れないミカヅキを気に入った。父親が亡くなって、気がおかしくなったのかと思ったがそう言うわけでは無いらしい。実際に接したからこそ断言できる。

 これでも他人の内面は読み取れる方でね。


 その後、当然不審者扱いされたミカヅキはミーシャ姫のお側付きであるミルダ・カルネイドに決闘を申し込んだ。

 傷だらけになりながらも戦う姿勢を示すことで、彼女が覚悟を認める形で勝利する。


 後にファーレント王国騎士団長、レイ・グランディールにも気に入られ、つられるようにミーシャ姫の周りの者たちもミカヅキを認めていった。


 そして、王国会議にて同盟を行うことが決まる。その同盟に向かう王国代表者並びに護衛と共に、ここファーレンブルク神王国へと向かう。

 無事に同盟を結ぶことを終え、今は、このファーレンブルク神王国の城にて休息中である。夜だから就寝中と言うべきかな。


 まぁ、普通に考えておかしいわな。

 ミカヅキについて調べたが、あやつを確認した数日前以前の情報が全く無い。まるで急にポンと現れたように。

 原因はあの時計(・・)から察したが、まぁ、後で説明するとして……今注目すべき問題はそこじゃない。


 違和感は――ファーレント王国の者たちのミカヅキへの警戒心の無さ、受け入れるまでの早さが常識的ではない。王族含め、直近の者たちでさえ、既に味方として認識しているように見えた。と言うより、実際そうなんだろう。


 過去に知り合っていたか、それか別の力でも働いているのかとも思える程にだ。だが、私の予想が正しければ、あの日まで(・・・・・)はこの世界には存在しな(・・・・)かった(・・・)はずなのだ。


「――彼も(・・)、そうなのね」


「そう考えるのが打倒だろうな」


 ミカヅキはこの世界とは別世界の住人。つまり、“異世界人”だろう。

 初めからそうなるよう設定(・・)されている(・・・・・)のか真実はわからない上に数も少ないが、異世界人はこの世界で受け入れられやすい。この世界に転移してきたりと、何か原因が在在るんだろう。まぁ、私ですら全くわからないんだから、簡単に知れるものではないことは確かだ。

 逆に予測しやすいのだがな。数にすれば三つぐらいか。さて、どれなのやら……。どれであろうと面倒なことに変わりないはずだ。


 ……はた面倒な。


 目を閉じてゆっくりと深呼吸をする。ため息をすると怒られるから、避けるための代わりにと言うわけだ。ちなみに、ため息は幸せをこぼすとか言われてるが、副交感神経が刺激されて良い作用があるんだからな……なんて、この世界にはそんな医学的(・・・)なことは知られていない。魔法が発達しているからこそだろう。


 なんでミカヅキが異世界人なのかと言うと、あの腕にしていた時計が何よりも証拠だ。あれはこの世界には存在せず、認識されないもの。だから私以外には見えてなかったはず。

 タイミングを見て、本人に確認してみるかな。


「何らかの力が働いてるとしか思えんな。アイバルテイクは気づいていたから、少なくとも私の近場は大丈夫だろうが……」


「団員や城に仕えている人たちは、情報を与えても気づかないかもしれないのね?」


 確かめるように私の様子を伺うソフィ。ほっぺをつついても良いかな……。


「つまりそう言うこった。私がお守りを渡した者以外から試してみよう。少し時間はかかるが、仕方ないだろう」


 あと気になる点がもう一つある。

 そんな不安定な存在のミカヅキのことを、なぜアインガルドス帝国が狙ったのかと言うところだ。話によると、殺すつもりではなく連れ去ろうとしたらしいし。


 最悪、奴らもミカヅキが異世界人だってのに気づいてるのかもしれん。……あー、もしや帝王(あやつ)か? また何か余計なものを見たのか。ヴァスティが動いたってことは可能性は高いな。


 顔を動かしながら予想してみる。どう考えても辿り着く結論は似たようなものだった。


「王国の者たちにも気に入られて、挙げ句、他国にも狙われるとは……人気者だねぇ」


「その人気者がいる国と同盟を結んだのだから、こっちも油断できないわ」


 ソフィが真剣な面持ちに変えて言った。私もつられて表情を変える。


「ああ、そうだな。だぁー、また面倒事が増えたぜー。そう言う星の下に生まれた記憶は無いんだがなー」


 軽くあくびをしながら返した。


 私が知る限りではこれで二人。しかも、三大勢力の二国に綺麗に分かれている。

 もし三人目がいるのだとしたら、もう来ているのだとしたら……ここまで来たらそう考えた方が良いな。外れてたらそれで良いが、当たっていたら面倒だ。


 まぁでも、周期がかなり時間差がある。だから次がいつ来るのか、それとも来るのかすらも想像がつかない。

 未来が見えたら……いや、それはそれで面白くないな。


「こりゃあ、そろそろ動き出すな。こっちもさっさと、ふわぁ~、準備を終わらせなきゃならんな……」


 目を閉じれば数秒で眠れる状態で頭を働かせる。もう瞼を眉毛と一緒に上げている状態だ。端から見たらさぞ滑稽だろうな。

 眠いのだから仕方ない。

 ヤバイ。なんだ、頭の半分以上が寝てる。


「眠いの?」


 優しく尋ねてくる。


「そりゃそうだろ。小国のいざこざを処理した帰りに人は拾うわ、なんか同盟とか言うわ、訳のわからん奴はおるわで、もう疲れた……おやすみー」


 展開が楽しみですな。


 ソファに横になって眠るべく目を閉じる。

 しかし視線を感じてすぐに目を開ける。じっとこちらを見つめるソフィの綺麗な眼差し。

 動きたいのは山々だが、寝転んだことによって体は睡眠モードに移行して、首から上だけが稼働している状態。


 悪いが、もう限界なんだ。すまん。


 と心の中で謝って再びを目を閉じて眠りについた。視線を感じながら。


 ――結局この後、視線が気になって目を覚まし、移動したら抱き枕にされたおかげで寝不足になるのは言うまでもない。

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