百十六回目『あの時から』
ミカヅキの『龍聖棍イングリアス』と、ヴァスティの『雷明槍・イル・ライトニング・レイ』の衝突は凄まじいものとなった。
彼の二つの武器の衝突によって発生した衝撃波は、中心部が見えないほどの高密度で周囲の全てを呑み込んだ。
ミカヅキが薄れいく意識をギリギリで保っている中、容赦なく衝撃は彼のもとにも届く。が、間一髪、ミーシャが魔力で障壁を作ることで事なきを得た。
「ごめん……ミーシャ」
「大丈夫よ。今、回復する、か――ら……へ?」
障壁の中だから安心して回復できると思ったのが間違いだった。そこに絶対的な隙が生じてしまっていたのだ。
「だから甘ぇんだよ」
少女の胸を、心臓を貫くは一振りの白く美しい剣。刀身から赤い血が滴り、その光景さえも美しいと思えてしまいそうな、狂気染みたものを感じた。
ミカヅキは立っているのも厳しい状態で棍棒で支えてやっとだった。
そんな重傷のためか、何が起きたのかすぐにはわからなかった。当の本人、つまりミーシャも同じ様子で、自分の胸を貫いたそれを見下ろして、疑問符を浮かべた。
「さよならだ、姫さんよ」
言葉を言うが先か音もなく剣が抜かれる。
そこでようやく理解した。ミーシャをヴァスティが『ソハヤノツルギ』で貫いたのだと。
力が入らなくなった彼女の小さな身体は、剣を抜かれた反動で倒れる――直前にミカヅキが身を乗り出して抱き止めた。
皮肉なことに意識が覚醒する。ミーシャの身体を支える手に暖かい何かが広がっていく。
「ミーシャ!!」
「これはお前が招いた結果だ」
「なんでっ、どうしてミーシャを――」
「敵だからだ。勘違いしてんのか知らねぇが、ここは戦場だ。敵を殺すのは当たり前ぇだろうが」
それがこの世界の摂理なのだと、戦場に赴くとはこうなる可能性があるのだと、ヴァスティは現実を突きつける。
怒りと悲しみと後悔に呑み込まれそうになる少年は、やはり頑固にも受け入れようとしない。
「そんなの間違ってる。敵だから殺すなんて間違ってる」
涙を流しながら、怒りを込めた眼差しでヴァスティを睨み付ける。
「そうやっていつまでも現実から目を背けていやがれ。死んだ後でもな」
そんなミカヅキを冷たい眼差しで見下ろし、吐き捨てるように言う。
――ヴァスティとて、少年のような平和な幻想を、夢を、抱かなかったわけではない。
彼は『剣聖』だ。彼は自分の存在がそうであると認知していたが、初めから剣聖と名乗っていた訳ではなかった。
悪く言えば周りが勝手に祭り上げたのだ。
最初は善意だったのかもしれない。ヴァスティの母親へのせめてもの手向けとして、赤子である彼を立派に育てるのだと。
しかし人とは時が経つにつれて変わってしまう生き物である。故に、彼への善意や愛情はやがて別のものへと変化するのも必然なのだろう。
それでもヴァスティ・ドレイユは『剣聖』として振る舞い、『剣聖』として戦い、『剣聖』として民を守るため、救うために敵を殺した。殺し続けてきた。――それが『剣聖』に与えられた役割だと信じて躊躇うことなど無かった。
そのはずなのに、彼の中には例えようのない黒い靄が心の奥底に溜まっていくのを感じていた。きっかけはある人物と戦い、殺した時だった。
その者の名は――ガルシア・グランディール。
今は亡き、ガルシア騎士団の前団長であり、現団長レイ・グランディールの父親である。
彼の者の死は、当時八歳だったヴァスティ・ドレイユの中に根強く残ったのだ。いや、“残ったしまった”と言うべきだろう。
ガルシアの死に影響を受けたのはなにもヴァスティだけではない。その場にいながら、無力に加勢すら叶わなかったオヤジこと、ダイアン・ヴァランティンもこれがきっかけで騎士団から退いている。
強いて言うなら、ガルシア騎士団員の全員になるのだが、その中でも極めつけ強く影響を受けたのが二人なのだ。
ヴァスティの頭の中から、ガルシアの最期の言葉が離れることは無かった。
――君のような子どもが、戦場に立たない世の中になってほしいものだ。そう、思わないか?
今から殺されると言うのに、彼は行ったのは懺悔でも謝罪でも命乞いでもない。
微笑みながら敵であるヴァスティに問い掛けたのだ。
理想の世界を――。
かつて彼自身も抱いた希望を最期の言葉にしたのだ。
肌の焼き印のように決して離れることのない最期の言葉、そして最期の表情が……。
それはヴァスティの動きを、思考を、殺しを妨げる障害となった。だから必死に頭の隅に追いやって、思い出さないようにしてきた。
だが、ガルシアの死から丁度二十年の月日が流れ、とある出来事が起きてしまった。
皇帝の命令により、一人の少年を殺せとのことだった。帝国にとって危険分子となり得る者として、今まで通り迷わず殺す――はずだった。
そこで彼は出会ってしまったのだ。かつて記憶の隅に追いやり、忘れかけていた人物と同じ、光の魔法を使う者と。
忌々しい記憶が甦り、自分に似つかわしくないと理解しながらも半ば八つ当たりでレイを倒した。殺すことは邪魔が入ったせいで叶わなかったが、抑え込んでいたものが沸き上がるには充分だった。
おかげで二度目の敵を殺し損ねる事態に至った。
帰還する途中で彼は耐えきれず、胃に溜まり消化途中の食物を吐き出した。
こんなことは初めてだった。意味がわからなかった。
ただ一つだけわかるとすれば、原因はあの出来事だと言うこと。
あの時から全てが狂い始めたのかもしれない。
そして、ヴァスティ・ドレイユは改めて邂逅を果たす。そう――ミカヅキ・ハヤミと。
結果は三度目の殺しの失敗。
もう少しと言うところで再び邪魔が入った上に、ミカヅキの謎の暴走によって追い詰められる羽目になった。
一年の猶予の後、相対したミカヅキは驚くべきほど成長していた。自分の考えをしっかりと持ち、気持ちを正面からぶつけられるように……。
――羨ましいんだ。諦めずに突き進むことのできる心の強さを持つこいつのことが。
まだ清く白いミカヅキの手と違って、彼の手は既に血で染まっていた。
しかし、“弱者”には夢を叶えることも、希望を掴み取ることも許されないのだ。それがヴァスティの導き出した答えだった。
だから彼は迷わない。振り下ろす剣は空気以外に抵抗するものはない。
ーーーーーーー
もう身体がまともに動かない。気を抜いたらミーシャを抱き抱える手から力が穴の空いた風船の空気みたいに無くなってしまう。
歯を食い縛って、怒りに身を任せることでなんとか持ちこたえている。これもそう長くは保たない。
もっと僕が強かったら、もっと速く動けたら、もっと、もっと……。守るって誓ったはずなのに、逆に守られてどうすんだよ。
何をしてるんだ、早く治療しないと。
もう魔力が無い。魔法は使えない。
無理だ。
助けられない。守れない。
僕なんかじゃ、守ることなんて出来ないんだよ。
――バカもの。お前は諦めの悪いところが取り柄だろうが。儂の弟子は、そんな大バカものじゃったか?
お前は儂の最後の弟子だ。そして、一番見込みのある弟子なんじゃよ。自信を持って、自分が決めた道を突き進むのだ。
ミカヅキ。お前なら――やれる。
オヤジ……ありがとう。僕は本当に幸せ者だよ。
気のせいかもしれない。だってあり得ないじゃないか。オヤジはもう死んでるんだから。
でもさ、聞こえたんだ。言われた気がした。叱咤されたんだよ。
だから僕にはそれで――充分だ。
息を吐き出し、体の力を抜いて自然に入ってくる空気を迎え入れる。
どれくらいの時間だろうか。僕に残される時間はあるのだろうか。……なんて、言ってる時じゃない。
怒りに呑まれなくて良かった。レイディアにさんざん「冷静さを忘れるな」って言われたおかげだ。
今度こそ守って見せるからね、ミーシャ。
辛うじて小さく呼吸するミーシャに微笑みかける。――ごめんね。
「呼応せよ、僕の全て――流転・鼓動」
酸素が送り込まれて全身の血流が活動し熱を持つ。魔力が流れ込んできているのがわかる。
「彼の者の一振り」
ミーシャの傷がみるみる回復していく。ミルダさんの時とは比べ物にならないくらいの早さだ。
当たり前だ。そうじゃなくちゃ困る。今の僕は全力以上の力を出しているんだもの。
まずはミーシャを安全な場所へ……いや、移動の隙はない。なら――
「創造せよ」
ミーシャを下ろして龍聖棍イングリアスを造り出して、ヴァスティの攻撃を防ぐ。
僕が、僕とヴァスティが離れれば良いだけのこと。
「魔力はとっくの昔に尽きたはず……。お前、取り込んでやがるな。下手すりゃバラバラになるだろうに、そこまで俺を倒してぇか。前みてぇに怒りで我を忘れることを期待したってのに、つまんねぇじゃねぇか」
「倒したいっ……けど、倒したくない。理由はわからないけど、僕はあなたと戦いたくない。こうしている今でも凄く辛い。だからこれであなたと戦うのは最後にする。そのためには倒して、勝つしかない。そうだ、僕は、迷う必要がないんだ。絶対に勝つ!!」
話してる最中に然り気無くミーシャを結界で囲む。これで被害は及ばないはずだ。
待っててね、今度こそ僕が守るから。
もう充分だろう。手が、足が、体が、頭が……全身が痛い。
これは代償だ。限界以上の力を無理やり引き出した反動だ。でももう慣れてきた……ううん違うな、麻痺してきたんだ。
だとしても、ようやく対応できる。
ヴァスティの目を真っ直ぐに見て宣言する。
「全力全開であなたを倒して、僕は勝つ。だから、あなたも全力で来てほしい。じゃなきゃ嫌だ」
「……ガキかよ。だが悪くない提案だ。せいぜい楽しませてくれよ、全力を出した甲斐があったと思えるくらいにな!」
笑われた。そりゃあ僕自身でも子どもみたいだと思うし。
不公平だからって言いたかったけど、たぶん気になるんだ。今のこの状態の僕が通用するのかどうか。
「天を翔けろ、地を抉れ、我が雷は空を貫く光、其は――雷光の剣聖」
小さな雷がヴァスティの身体中を走り、そこに痕を残してそれは何かの模様のようだ。雷は役目を終えるとバチっと音を立てて消えた。
直後に光に包まれて、収まる頃には服装が先ほどまでとは別のものへと変化していた。
あれは完全に着物や和装と呼ばれる服装。どちらかと言うと洋風なこの世界には似つかわしくない格好、なのにヴァスティは持ち前のビジュアルのおかげが違和感が無い。
白く美しい刀身の剣を携えるその姿は、まるで歴史の教科書に出てくる武士のようで、凛とした佇まいが格好良さを引き立てる。
雰囲気すら今までの荒々しいものから、森の木々のような静かなものになっている。
そして、何よりも際立っているのは、瞳に浮かぶ星と丸を合わせた紋様。綺麗とも思えるそれに、僕の心とは別の部分、強いて言うなら本能の部分が危険だと非常ベルを鳴らす。
「……」
思わず息を呑む。
隙が全くないし、理由はわからないけど未来が知れない。正確には知ってはいる、が全然確定しない。
『先を知る眼』は確かにいくつかの未来を知れるのは理解していた。だけど、時が近付けば近付くほど未来は絞られる。……はずなのにだ、今知れるだけでも僕は二十回以上死ぬことになる。
対処のための動きをほんの少し、ミリ単位でも次の未来が出現する。――動けない。動いた瞬間僕は死ぬ。
冷や汗が背中を伝う。身体を強制的に強化した影響とは別、打つ手がないことに対して、勝手に反応してしまったみたいだ。
「そうだとしても、諦める理由にはならない!」
このまま緊張していても何も始まらない。時間の経過は僕の負けの可能性を高めてしまう。
龍聖棍を握りしめて、一呼吸。終えると同時に距離を詰めて棍棒による突きは弾かれ、反撃の一撃を受けかける。しかし棍棒の良さの一つ、何処の部分も持てることを活かして一撃を防いだ。
そのまま仕掛けては防がれ、仕掛けられて防いでの攻防を繰り返す。
お互いの動きは音の速度に到達し、その影響で発生する衝撃波は僕たちの身体を鎌鼬の如く斬りつけて傷を増やした。
僕に至っては剣に纏わされた雷の余波も含まれて痛みはかなりのものだ。
不思議な感覚だった。“未来”を知っているはずなのに、“今”と大差がない。僕の処理能力が低いのか、それとも僕たちの動きが能力を上回ったのか……。どちらにせよ実際に目で見て対応するしか無いみたいだ。
若干相手の動きを予想しながらだけど。
普段なら耳障りな、けたたましい金属同士の接触音すら気にならないほど僕は集中していた。
恐怖や怒りは次第に薄れていく。
ヴァスティの凪ぎ払いを躱わすため後ろに飛び退く。すぐさま雷槍が生成され僕へと放たれる。
同じ数の棍棒を造り出して何度目かの正面衝突。小さな爆発と衝撃を周囲に伝えて対消滅する。背後から迫る分には上から大きな盾を落として踏み潰した。
背後に意識を向けている隙をついて、ヴァスティが剣を横凪ぎに振り払う。その軌道から全てを両断する勢いの雷が扇状に広がる。
地面を踏みしめる足に力を入れ、次の瞬間に上空へと飛び上がった。さすがに予想していたらしく、ヴァスティが真っ直ぐ斬りかかってきた。
「駆けろ――雷鳴斬」
雷を纏う剣を棍棒で受け止める。雷の余波が少しだけ僕の手や腕を痺れさせた。
「うっ、まだまだ!」
「ハハハハッ、甘いな」
痺れたせいで力を出しきれずに剣が振り払われ、反動で僕の身体も吹き飛ばされた。
空中で一回転して勢いを抑えてなんとか無事に地面に着地する。
土を振り払う暇なんてない。すぐにヴァスティは距離を詰めてくる。
棍棒を構えようとした時、足がふらついた。思うように力が入らなくなってきた。息を大きく吸い、もう一度。
「流転・鼓動」
心臓が一際大きく脈打ち、血が勢い良く全身を巡って、筋肉が躍動して喜んでいる。だけど、これ以上は限界だと教えてくれた。
――もう少しだけ、もう少しだけ保ってほしい。せめて、あの人に勝つまで……。
瞬きをして、向かってくるヴァスティを見据える。
「展開――龍聖棍八陣」
周りに言葉の通り八本の棍棒が造り出されて漂う。
上空だけじゃない。分身か何かだろう、僕を中心に四人の人型の雷が迫ってきていた。
「――龍聖天輪!」
「――紫電雷光閃!」
四人の人型に一本ずつ棍棒を放って動きを止めて、残りの四本の内の三本をヴァスティに向けて放つ。
その瞬間、ヴァスティがバチバチッと乾いた音を立てながら霧散した。――偽物!?
本物は――正面か!
上空から視線を落として自分の正面に顔を向けると、そこには剣を鞘に収めて居合いの構えのヴァスティがいた。
次で決まるな。
わかっている。あれを防ぐか躱わすかして、全力の一撃をぶつける。それだけなんだ。僕がやることは簡単なんだ。
わかっているのにな……手足の感覚が、もう――無い。棍棒を掴んでいられるのが不思議に思えるくらいだし、立っているのもやっとだし、意識だっていつ消えることか……。
『先を知る眼』もいつの間にか解除されてるみたいだし、ここまでみたいだ。絶体絶命のピンチだなぁ。
――ねぇ、僕の身体。一回。あと一回で良いから。僕のわがままを聞いてほしい。
「僕は、もう……負けな、いんだ……。たとえ、この身体がどうにかなったとしても……ミーシャを、守るって……誓ったんだ。だから、だから、どうか僕の身体よ……動いて……動け!」
「今、楽にしてやる――」
「させないわ!」
ヴァスティ目掛けて小さな刺のようなものがいくつか飛んできて、彼はそれを躱わすべく後ろへと下がる。成り行きだが、ミカヅキと離れることなった。
ミカヅキを守ると言わんばかりに、今にも倒れそうな彼の前に立つは――
「お待たせ、ミカヅキ。遅くなってごめんね」
自分より小さな背中が、こんなにも頼もしいと思えることなんてあるのだろうか。
「ううん……大丈夫だよ」
血が滲んだ跡が残る服を目にして、弱気になるのは許されないと思った。意地でも何でも良いから、胸を張らなくちゃと思えたんだ。
馬鹿だとか単純だとか言われてもいい。実際僕もそうだと思うし。
だって、ミーシャの姿を見れた。ミーシャの声を聞けた。ミーシャとまた話せる。それだけで僕はまだ動ける、戦えるんだ。
最初は辛い思いをさせないように、もう泣いてほしくなくて守ろうと誓った。
でも、僕はね、ミーシャ。たぶんあの時、君と初めて会った時から僕は――。
伝えるって約束した。破るわけにはいかないじゃないか。
いいや、違うな。絶対に僕が伝えたいんだ。それまでは、絶対に死なないし、絶対に死なせない。
僕はミーシャのために、ミーシャだけじゃない。僕自身も守るんだ。
もう終わりだと諦めかけていた身体に自然と力が湧いてくる。
ミーシャの隣に足を進めて、ちらりと顔を覗く。
「怪我は大丈夫?」
「ミカヅキのおかげでね。もう大丈夫……って言いたいけど、応急処置だけだから長くは戦えない」
「……実は僕もなんだ。じゃあ、一緒に戦ってくれる?」
「もちろんよ。雷光の剣聖――ヴァスティ・ドレイユ。あなたには敬意を表するわ。でもね、ミカヅキをこんなにしたこととは別なんだから。その分の落とし前はつけてもらうわ」
胸を張って自分に向かって宣言する小さな姫様を見て「フッ」と笑みが溢れてしまう。
もしかしたら、自分があちら側になっていたかもしれないと思うと、思わず笑ってしまったのだ。
今となってはあり得ない可能性に焦がれているのだろうか。それは彼自身にもわからない。
ミカヅキは笑っているはずのヴァスティの表情が、何故か悲しく感じているように見えた。
深呼吸をして、拳を握りしめて、構える。
そして誓う。
――この決闘が終わったら話をしよう。話し合ってお互いの考えを交換しよう。そうすれば僕たちは分かり合えるって思うんだ。
あの笑顔が似ているから。祖母が見せた、微笑みに。――辛いのに僕に心配かけまいと無理して笑っていた、あの笑顔にあまりにも。
「行くよ、ミーシャ」
「ええ!」
心の中でミーシャに感謝しつつ、僕はヴァスティへと視線を移した。