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絵の具の混じった涙  作者: 犬飼あずき
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第1章

「絵心ってなんですか」

夕日の差すアトリエ。電気も通ってないような山奥にあるアトリエ。

僕はひたすら訊いた。

「師匠...って...その」

次の言葉がなかなかでない。

「英史、お前は旅した事はあるか?」

「え、ない...です」

旅なんて費用がかかるので出た事はなかった。

「桜庭英史、だな?野宿するための道具を一式貸す。というかワシにゃもういらん。やるから旅にでてこい。水彩画の一式やるから。ほれ、いったいった」

ろくに成績を出せない僕が厄介払いされてもおかしくなかった。

そもそも野宿だ?今こんなことをしたら何があるかわからない。かなり迷ったが、やっぱり行くしかなさそうだ。


『はぁ?旅だ?おまえにそんなことできるのかい。出来るってなら行ってもいいけどよ』

一応母親にも連絡をした。僕は母子家庭だった。はやくに父親を無くしてしまったのだ。

「行ってきます」

『気をつけてな』

そうして支度を終えた。

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