1/2
第1章
「絵心ってなんですか」
夕日の差すアトリエ。電気も通ってないような山奥にあるアトリエ。
僕はひたすら訊いた。
「師匠...って...その」
次の言葉がなかなかでない。
「英史、お前は旅した事はあるか?」
「え、ない...です」
旅なんて費用がかかるので出た事はなかった。
「桜庭英史、だな?野宿するための道具を一式貸す。というかワシにゃもういらん。やるから旅にでてこい。水彩画の一式やるから。ほれ、いったいった」
ろくに成績を出せない僕が厄介払いされてもおかしくなかった。
そもそも野宿だ?今こんなことをしたら何があるかわからない。かなり迷ったが、やっぱり行くしかなさそうだ。
『はぁ?旅だ?おまえにそんなことできるのかい。出来るってなら行ってもいいけどよ』
一応母親にも連絡をした。僕は母子家庭だった。はやくに父親を無くしてしまったのだ。
「行ってきます」
『気をつけてな』
そうして支度を終えた。




